パルプ培地菌糸最強説再び
しばらく更新が滞っておりましのは、それは特に変化という変化がなかったからですが、KYOGOKU 2024 Linageたちの3令への加齢がほぼ終わったというところです。
2024 Lineage その後
さあ、わたしの仮説では、オオクワガタの幼虫を大きな成虫に育てるにはこの晩夏から秋が勝負のしどころということなのですが、♀に関しては、この3令加齢したてくらいの時期の餌環境次第で成虫の大きさはほぼ決まってしまうものと考えています。ですので、♀についてだけは正に今、「富栄養環境である」と幼虫の受容体に判定してもらわないといけないわけです。そこで、これまではその「富栄養」の定義といいますか、それは我々人にとっての定義づけではなくてですね、あくまで幼虫にとっての、なんです。これが考え方として実にややこしいのですが——幼虫にとって「もっと大きくなれる環境である」という判定ができる餌環境とはどういうものか? ——ということが大事なんです。それをわたしは自分なりにこれまで探り続けてきたわけなのですが、これまでブリーダー間で定説化されている、餌材のいわゆる「高タンパク」は幼虫自身のその判定基準に直接的には好影響しないのではないか、という結果がこれまでの実験で出ていました。従って、わたしの解釈では「高タンパク=高栄養」ではないということで、添加剤を極限まで無くし、むしろ培地を高C/N比化した新たなオリジナル菌糸瓶で実験飼育しているところです。また、同時に、空気穴無し蓋ボトルを採用していますが、酸欠死などには至らずに問題なく発育は進んでおります。
で、3令加齢直後からデカイのが現れてきているのですが(画像)、こいつ、初令時の投入後からボトルの上部のパルプ培地ばっかり食べていたやつなんです。他の個体も同様の傾向で、ブリーダー間では通説の、底から食い上がっていくのとは真逆に、おもしろいことに当家の今年の傾向では上から食い降りる状態なわけですが、それは、ボトル上部の隙間を無くすためにパルプ培地で充填してあるからなのです。
観察していますと、明らかに幼虫は木質チップよりも紙が好きな傾向が高いんです。そしてその方が大きくなり易い。前にも言いましたが、パルプは木材から人工的にリグニンを除去したホロセルロース。つまり、腐朽菌の分解し易い良質な炭素源であり、タンニンやフェノール質などの天然木の持つ毒素(虫たちにとって)がほぼ無くなっているので成長阻害成分が除去されており、幼虫にとってはむしろ健全で美味しい筈なんですよね。なので、当然と言えば当然の、ブリード界ではわたしが始めるまでは完全に盲点だったわけですが、まあ、それは以前の実験結果から既に解ってはいたことであるとはいえ、かくいうわたし自身もまだ旧態然とした飼育方法の考え方に固執しがちということはありまして、この結果には中々納得しがたいところもあったのです。がしかし、パルプ培地の優位性は間違いなく、もうこうなったら、2本目以降は100%パルプ培地菌糸に切り替えようかと考えたりもしているところですが、既に仕込んであるアスペン培地ボトルはどうするんだ的な都合もあり。
今のところ、高C/N比培地菌糸瓶、空気穴無しボトル、共に好結果として表れておりまして、更に明らかにアスペン・チップよりもパルプに幼虫の嗜好性大という結果です。これからの飼育計画をまたじっくり練り直そうかと思います。