再発菌せず腐敗もしない培地
……というのが時々あるんですよね。
この菌糸瓶は、2023年10月仕込みの、元々は沸騰煮出しアスペン・チップ培地にウスヒラタケを植菌し、DAISOパン・ケースで培養した菌床なのですが、容器の内壁面に不明カビ菌が繁殖した事例のものです。それを半年熟成させた後にバラして、更にボトル詰めしたものを実験検証用に保管していました。
ケースの内壁面にビッシリと発生したカビと思われる菌は既に死滅しており(好気性のため)、実はこの側壁面と上面の一部とだけに薄っすらと張り付いていただけで内部は無事でした。この死滅残渣は取り除くのは困難なので、培地に混ぜ込んでしまいました。
2024 LineageのB個体軍を投入していた1年もの熟成菌糸瓶の状態が劣化したので、急遽それらを移動させたのですが、その内の1頭をこのボトルに移し替えました。で、様子を見ておりましたが、このようにちゃんと2令から3令に加齢し、元気に培地のチップ材を食んでいるのですよね。しかし、見てください。あの白い菌糸体の膜はボトル内に見られませんよね。微かにそれらしき白いモヤモヤは散見されるのですが、それが本当に腐朽菌の菌糸体なのか、はたまた別の菌のコンタミなのか、判断し兼ねる状態。
正当な順序=カビ→バクテリア→腐敗
そうなんです、この培地、元のパン・ケースからバラして既に3ヶ月以上は経過しているのですが、ボトルに再充填後も再発菌しなかったのです。がしかし、お気づきかと思いますが、他方、チップの色が綺麗な木肌色ですよね。おかしいと思われませんか? 腐朽菌が死滅すれば、コンタミしてきたバクテリアによる分解が急速に進行するので、本来ならばチップ材は一気に褐色化する筈なのです。
もしも、バクテリア分解が起こらなくとも、カビのコンタミがある筈なのです。そう、しかも、一度はカビのコンタミが見られた培地なのです。というか、本来の順序としてはカビが入ってから次にバクテリアとなると考えられます。そして、褐色化して腐敗という、もう後戻りは不可能な順序です。しかし、そのどちらの発生も無かったのです。ということは、考えられるとすれば、腐朽菌は生きている。そうでなくてはこの木肌色は維持できない筈……ということになるのですが、何故か菌糸の再発菌が見られないというレアな事例です。
それで、未解明ながら、この培地の状態の良・否というだけの観点で判断をしますと、わたしは良と判断しました。何故ならば、そもそもウスヒラタケを植菌したものであるという事実と、培地のチップ材の色が木肌色を維持しているという点、それと、匂いが甘いグルコース臭だったという三点からです。
あとは幼虫に判断をお任せ
ということで、半ばギャンブル的に幼虫を投入してみたわけですが、やはり、読みどおり、幼虫には問題無いのですよね。ただ、これからの発育を見て最終判断はしないといけませんが。
と、このように不作為の実験ネタは臨機に発生するのです。しかし、そういう経緯から新らたな発見がありますからね。