熟成菌糸はオオクワガタには不向き
決定的な実験結果が出ました。KYOGOKU 2024 Linageの個体群を2令に加齢後に菌糸瓶投入していた分で、その菌糸瓶を昨年仕込みの1年もの熟成ウスヒラタケ菌クヌギ・オガ菌糸瓶と今夏仕込みのウスヒラタケ・アスペン菌糸瓶との2群に分けて管理していたのですが、どうも熟成ボトルの方の様子がおかしいので、中を確認しましたところ、粘菌が発生し、培地の一部に劣化が見られました。また、押し並べて幼虫の食痕が褐色化しており、中には未だ3令に加齢していない個体も見られ、明らかに発育状態が悪かったので、急遽ボトルを移し替えました。まさかの事態だったのでわたしの発見が遅れて、内、2頭は既に★に。
腐朽菌は活性しており、培地の状態は悪くは見えず、オガの質は適度でした。うーむ、これではっきりしたと思います。これは、腐朽菌による培地の分解が進んだというよりも腐朽菌の菌体に栄養が凝縮して溜め込まれた状態。早い話が、高栄養価状態なのですが、その方が幼虫の発育は悪く、最悪、拒食して死ぬということです。これはオガ対菌体率で言えば菌体の方が増殖した状態とでも言いますか。高窒素化。つまり、低C/N比化状態です。これから考察されるのは、腐朽深度は浅い高炭素含有率培地の方が明らかに適応しており良く育つ。やはりオオクワガタには高C/N比培地が向いているんですね。
従って、予め添加剤入りで仕込まれた市販菌床ブロック、菌糸瓶は、このように熟成されて高栄養化する前の浅い腐朽段階で使用するのがベストだと考えられます。菌糸の熟成使用はオオクワガタには逆効果で不向きということです。これは巷の高タンパク菌糸瓶が最良という考え方とは真逆の結果で、むしろ、生オガに極めて近いような、一見、貧栄養と考えられる餌材の方がオオクワガタは有意に育ち、成虫も大きくなるということを示しています。
それで、同じ1年もの菌糸瓶移し替えた2年化している2023 Lineageの1頭が居たので様子を確認してみました。ボトルには一切食痕が現れていません。……嫌な予感がしたので掘り返してみますと、案の定、★でした。こちらの培地も良い状態で問題は無さげなのですが、食痕は褐色化していました。2023 Lineage中の一番大きな♂で密かに期待していましたからこれには大いに落胆させられました。もう1頭の2年化♂は比較対象として同じ時期にウスヒラタケ菌アスペン+パルプ培地のボトルに投入していたのですが、こちらは問題の無い食痕と体の一部が外から確認できており問題無しでした。これで、高・低C/N比培地の対比としての差での結果が極端に現れたかたちです。
結論
オオクワガタの代謝のメカニズムについては未解明ではありますが、低C/N比餌材の不適合さだけについてはもうわたし的にははっきりしましたので、これが結論であり、市販菌糸の腐朽深度比較実験についてはこれで完結です。
タンパク質添加は意味がない(むしろ害悪)
培地を必要以上に富栄養化させてはいけない(高窒素化)
食痕がバロメーター(褐色化は危険域突入サイン)
高C/N比培地を維持すること(培地の炭素源維持)
……というところで、言い換えは幾らでもできるので簡潔にしましたが、とにかく培地を富栄養化し過ぎないことが肝心です。それと、何と言っても食痕の色です。これがバロメーターであり、健全な餌と健康な幼虫の食痕(糞)の色味は木肌色の薄い色調を保っているということに尽きます。食痕が褐色化すると直ぐに死ぬということでは決してありませんが、言わば、理想的ではない閾値を超えている状態と読み取るのが賢明かと思います。
数々の実験培地を試されてウチの幼虫たちには悪いことしていまいましたが、これでわたしとしては納得して迷うことなくオリジナル菌糸の開発の方向性を見極められました。それは悉く専門家やブリーダーの通説・定説とは真逆なものとなりました。高タンパク餌材はオオクワガタ幼虫を死に至らせます。