♀の状態が先行判断材料
♀の方が早熟傾向ですので、先行的に成長している♀幼虫の成長状態を見て♂の最大サイズの予測がある程度できるとわたしは思っています。♀の発育が良いと、♂のその後に期待ができるということが言えるのですが、これは個体の血筋や生体的な状態のことではなくて、菌糸瓶が共通スペックのものを使用の場合の、餌材ベースのことです。
♂は鈍感なのに耐性が低い
要するに、餌材の良し悪しでの結果反映評価ですね。食餌の状態であったり、ボトル内での落ち着きであったり、そういった環境ストレスの影響に関して、傾向として♀の方が感受性が敏感らしく、♂の方はその点に関して鈍感な気がするのです。
よく、♀の食餌の仕方は落ち着きがないだとか、培地を掻き回し易いと言われることが多いと思うのですが、それはその餌材——菌糸瓶の環境状態がよろしくない場合のリアクション(表れ)だとわたしは思うのです。ですので、愚鈍な♂の挙動観察をしているとむしろ先行きを見誤るので、わたしは♀幼虫の挙動の方をいつも注視しています。確かに、♀幼虫の方が培地を荒らす傾向が高いのですが、その♀が落ち着いて食餌しているということは、即ち良い餌環境であるとわたしは見ています。
また、♀は特にC/N比に敏感に反応するとわたしは感じていますので、♀がボトル内を無闇に動き回る場合、炭素が足りないということか、水分量が多過ぎるということか、何らかの培地に対する問題を示しているので、そのようなときは培地の状態を確かめてクロスチェック判断ができるかと思います。しかし、ある程度劣悪な餌環境でも♀は耐性が高く、逆に鈍感な♂の方が耐性が低いので、その点では注意が必要かと思います。
幼虫の挙動判断基準
とは言え、「幼虫の良い状態って、一体、どこを見て判断?」と言われるかもしれませんよね。やや抽象的かもしれませんが、それは、挙動的には「よく食餌し、よく動いているが、無駄に動き回らない」というところでしょうか。これに併せて、体躯の肌艶、発育の度合い、などですね。未だ乳白色になる前、半透明の部分が多く、ヘモシアニンの視覚作用で青白く見える3令の初期から中期の状態をよく観察すること。この時期の見極め次第で餌である菌糸瓶の状態と交換時期をミスってしまい兼ねないとわたしは思っています。できれば、もっと深い見極めポイントを見いだせれば良いのですが、今のところ、以上のようなところをわたしはよく観察して判断するようにしています。
♂・♀の違いで言いますと、♀はよく動き回りながら食餌する傾向が高く、♂は同じ場所に滞留しながらじっくりと食餌する。オスの方が効率的で餌材の無駄が生じ難いのですよね。ですので、♀が落ち着いてよく食餌しているというのは、良い兆候(餌材環境が良い)と見て取れると思いますね。
それと、3令中期までは♀の方が食事量が圧倒的に多く、体重の乗りも良いのですが、或る時期から♂の方♀を追い越して上回るようになるんですよね。このクロス時期が♀の事実上の臨界サイズ決定期なのではないかとわたしは怪しんでいます。これは、見た目の最大サイズということではありません。それはもっと後のことなのです。つまり、見た目上の最大ピークには達してはいないのでまだ大きくはなります。しかし、それに先んじて成長ストッパーはもう効き始めたということです。
だとするならば、♀に遅れること、どれくらいで♂がそうなるのか、ということなのですが、どうも、それがオスの場合は冬眠開始時期くらいと重なるのではないのかと考えています。なので、観察からは判断がし難いのです。
新発見は観察から
臨界サイズ決定期には何らかの挙動変化が体躯表面上に表れるのではないかと、今現在も観察を続けてはいるのですが、明らかにそうと受け止められる変化は発見できてはいません。最近、わたしが注目しているのは幼虫の蛇腹——クチクラ層——の変化です。過去マガジン——『臨界サイズ受容期を探る』の黄色化トピック中で詳しく述べましたが、どうも、このクチクラ層の変化に表れるのではないかと考えて目下、注視しているところです。もしも、何か決定的な変化を発見できれば、それが目安になるとの考えからです。
生体の観察は大事で、洋室の傾斜の角度の法則であるとか、羽化後の♀成虫のマイカンギアを蛹室に擦り付ける行動であるとか、実際に観察から得られた確証がこれまでにありました。ボトル交換時以外はブリード・ルームには入らないというブリーダーも多いそうですが、そのような方々とわたしとでは飼育の目的や姿勢自体が違うのだと思います。わたしはにとっては観察は基本中の基本であり、新発見は常に観察からと思っています。