技術者に聞くJR西「はなあかり」こだわりポイント!
JR西日本の新しい観光列車「はなあかり」が10月5日、敦賀(福井県敦賀市)―城崎温泉(兵庫県豊岡市)間でデビューします。特急用ディーゼル車を改造し、同社のローカル線を含めたほとんどの路線を走れるのが特徴です。携わった技術者らに各々のこだわりポイントを聞きました。(大阪社会部=小林知史)
*冒頭の写真はJR西日本提供
■ 通勤電車の技術いかした豪華な帯(JR西日本テクノス車両事業部技術部車両設計室、関岡樹さん=JR西日本から出向)
「檳榔子染」と呼ばれる赤みがかった焦げ茶色の外装にこだわりを込めました。改造元の車両(キハ189)から重量をほとんど増やしてはいけないという制限があり、塗装では無く、シールによるラッピングで外装を仕上げる方法を選択しました。
グループ会社に時刻表用のステッカーなどを作成している全国有数のシール技術を持つ「関西工機整備」(兵庫県尼崎市)があり、そこで働いている普段は通勤電車の外装を担っている職人と何度も案を練りました。金色帯であしらわれた鮮やかな草花のラッピングは、角度を変えると異なる色合いになるようにしています。
■ グリーン席の絶妙な座り心地のイスに注目(JR西日本車両部車両設計室、鍛治佳幸さん)
座席は個室席「スーペリアグリーン」と、グリーン車がある。高岡銅器(富山県)や出雲たたら製鉄(島根県)の一輪挿しと造花を座席近くに置き、華やかさを演出しました。
スーペリアグリーン以上のこだわりが詰めたのがグリーン車の椅子です。ある時は車窓からの景色を、ある時は乗客同士の会話を楽しめるようスムーズに回転する機能を残しつつ、とっさにつかまれる安全な椅子にしたい―。回転部分はオフィスチェアで試作し、滑らかに向きを変えられながら、ぐらつきにくい絶妙な回し心地を実現させました。非常に頭を悩ませたポイントです。
■ 数センチの床の高さ調整(後藤工業車両部計画課、長谷川慎司さん)
鳥取県米子市にあるJR西日本の「後藤総合車両所」で改造工事の施工をしました。
国鉄時代に製造されたキハ40,キハ47を含めた100両近い車両をリニューアルしてきました。同じ型式の車両でも車両ごとに誤差があって、設計図通りにはいかないことがあります。製造段階での調整作業や運行によって乗客の重みが乗ることがあるからです。
今回も図面に比べて数センチ床の高さが合わないことがあり、調整した上で花柄のカーペットを敷いて上品に仕上げました。
■ 地域にあかりともす列車に(株式会社イチバンセン、川西康之さん)
華やかさを意識し、内外装に花のモチーフを取り入れたデザインを考えました。
「はなあかり」は地域に明かりをともす列車です。列車が走るエリアは人口減少問題などの課題を多く抱えています。グリーン席の座席は、近すぎず離れすぎず、見知らぬ人との会話が弾むような距離感を心がけました。
はなあかりは地域を実際に走ることで初めて完成する、というのが私の考えです。ディーゼル車のため非電化のローカル線も走れます。列車が地域ににぎわいをもたらせれば、と考えています。