そもそも万博って何?歴史をひもといて見えてきた「意義」とは
2025年大阪・関西万博の「迷走」ぶりを分析し、歴史的意義を考えた「大阪万博、500日前にこの状態で本当に開催できるのか?」。後編の担当は大阪社会部の伊藤怜奈です。
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【前編】
【後編】
この記事の前編を振り返った、同時公開のnote前編はこちらから。
「万博って何なん?」
取材のきっかけは素朴な疑問でした。「万博」「万博」と何度も記事に書いたけれど、私自身、万博について何も知らなかったんです。東京で生まれ育ったZ世代。もちろん過去の万博は行ったことがないし、大阪の人たちのように過去の万博のレガシー(遺産)の恩恵を受けたこともない(と思い込んでいました。実際は1970年大阪万博をきっかけに、私たちの生活に普及していった先進技術は多くあります)。
担当記者が今さら「万博を知らない」なんて言えない…。そんな極めて個人的な理由で、取材に取りかかりました。
熱狂よ、もう一度
まず手をつけたのは、1970年大阪万博を知ることからでした。当時の専門紙「SUNDAY EXPO」が大阪市の府立中之島図書館にあると知って取り寄せ、記者2人で2時間ほどかけて読破しました。そこで1970年大阪万博での「人々の熱狂」をまざまざと感じたのです。来場者数は当時最多の約6421万人。アメリカ館に展示された、宇宙船アポロが月探査から持ち帰った「月の石」は大きな注目を集め、長蛇の列ができました。
翻って、2025年大阪・関西万博はどうでしょうか。万博の取材をしていると、地元・大阪の関係者からは「1970年大阪万博を再び」と、あの「熱狂」の再現に焦がれる人の声をよく耳にします。ただ、世間を賑わせているのは前編で木村記者が指摘したような「悪い」ニュースばかりです。
こだわりを解き明かす
なぜ今、万博なんだろう。なぜここまでして、大阪、そして日本は万博にこだわるのだろう。その手がかりを得るには、1970年大阪万博だけではなく、世界で最初に万博が開かれた19世紀半ばにタイムスリップしてみるべきだと思うようになりました。
そして、1970年と2025年、55年の年月が経過した大阪で再び万博を開く意義について取材し、これまでの万博史において今回の万博がどのような意味を持つのかを解き明かしたいと思ったのです。そこで、2人の専門家に話を聞きに行きました。
万博は「儲かる」のか?
1人目は京都大の佐野真由子教授。「万博学研究会」を立ち上げて、代表を務めています。佐野教授は万博の歴史についてマンツーマンで講義をしてくれました。その上で、今、万博を開催する意義をこう話してくれました。
ただ、今回の万博の準備については苦言も。
では、実際に企画している側はどうでしょう。2人目は25年万博の会場運営プロデューサー・石川勝さん。石川さんは「多様性の時代」に合うよう、万博のあり方を「アップデート」すると語りました。
万博をここまで開催したいわけ
これまでさまざまな世界情勢の移り変わりがあっても脈々と続けられてきた万博。取材を通して、日本が世界のホストとして堂々と各国を迎える姿を見てみたいと思うようになりました。一方で、「経済効果2兆円」という「恩恵」ばかりが強調され、万博自体の意義や理念が全く伝わってこない2025年大阪・関西万博の運営体制にさらなる違和感を持ちました。
京都市で取材を終えた後、佐野教授に聞いてみたことがあります。
世界の人たちはなぜ、ここまでして万博を開催したいんですかね?
すると、さっきまで真剣な面持ちで受け答えをしてくれていた佐野教授がニコッと笑いました。
そんなイベントが2025年4月、大阪にやってきます。大阪で記者をしているならば、本気で万博について考えたい。せっかく開くならいい万博に。そんな思いを抱きながら、これからも取材を尽くし、読者の皆さんの「判断材料」となるニュースを提供していきます。