【随想録#33】きゃりあぱすぽーと/5 billion people
子どもたちと共に1学期を振り返った。4月の初めに目標を決めた。そこからもう3か月も経ったのかー目標は達成できたか。もっと頑張れたことは何か。子どもたちは思いを巡らせている。
子どもたちが書いているものは「キャリアパスポート」と呼ばれていて、小学校のときからの持ち上がりのものである。目標を立てて、振り返ってーーということを繰り返している。今の中学2年が小学校5年生のときに始まったシステムである。当時の自分、過去の自分と対話できるのは楽しそうだ。
しかし、気味が悪いのはこれを小学1年生からさせているところだ。そもそもキャリアパスポートを書かせる目的は何か。学習指導要領では次のように規定されているようである。
私は声を大にして言いたい。子どもが「今」を楽しんだり大切にできなくなるくらいなら、勉強など無いほうがよい。夢中になって取り組めることが勉強以外にもたくさんあって、徐々に勉強の中にも夢中になれるものが1つでも見つけられれば良いのではないだろうか。
将来のことを考えて、勉強を頑張ろうなんて、最低の考え方である。それは今を楽しませることができない教師の、大人の怠慢である。勉強させたければ、勉強を楽しませればよいだけではないか。
これを小学生、小学1年生には「きゃりあぱすぽーと」とわざわざひらがなにして説明して、書かせているのだから、恐怖以外の何物でもない。小学生がキャリア形成のために、PCDAサイクルを回す訓練をしていると聞いて背筋が寒くならないのなら、もう身も心も資本主義に包摂されているに違いない。
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というような話を中学2年生に敢えてしてみる。首を傾げる子もいるが、多くの子は深く頷いていた。中学2年生は面白い。ちょうど、学校の理不尽に気づき、社会の不条理に気づき始める年頃だからである。
キャリアパスポート。思慮分別のある君たちに告ぐ。薬にするか、毒にするかは君たち次第。何事もうまく使え。何者にも使われるなよ。