【今日のsora】彼女たちの未来 わたしの今
バイト先のレストランで、わたしの教育係をしてくれているKさん。まだ30代前半だというのに、落ち着きと風格を備え、感情の揺れが少なく、いつも穏やかな笑みを絶やさない女性。
年甲斐もなく、落ち着きも風格もないわたしを、温かく見守ってくれている。わたしは彼女より随分年上だけど、彼女のことを「母」と思って慕っている。
もうすぐ彼女の誕生日がやってくる。その日、彼女はオフ。シフト管理しているチーフにむかって、「なんで仕事を入れてくれないんですか!」と笑いながら詰めよっていた。彼氏のいない誕生日。誰にもお祝いされず、家に一人でいるなんて地獄!働かせてよ!ということらしい。
時間に不規則な飲食畑を長く歩いてきた彼女。男性と出逢うチャンスがないのだろう。そんなこんなをさも楽しげに、自虐的に話す彼女に、どうか幸あれと願う。
もう一人の社員、Yさんは20代半ば。まだ幼さの残る彼女だけど、わたしの動きをよく見ていて、不恰好な所作などを見つけては、厳しく指摘してくれる。Kさんの誕生日のちょうど1週間後、Yさんの誕生日がやってくる。
先日、Yさんから思わぬ告白をされた。
「わたし、○月でここを辞めるんです」
「えええーー!なんでですかー」
「わたし、夢があって。30歳になるまでに店を持ちたいんですよ。そのための修行だと思って、ここにいるんですけど、ここは広すぎる。もっとこじんまりとしたお店で働きたいなって」
感動のあまり胸が熱くなる。
「すごいですね。応援します。がんばって」
「ありがとうございます」
「てっきりご結婚されるのかと笑」
「してますよ」
へ?
「3年ほど前に。あまり言ってないですけど笑」
そ、そーなんだー。純真無垢で、あどけない笑顔の彼女。実はまさかの、人妻だった。。。衝撃
ご主人も同業者で、ご夫婦でお店をやりたいと考えているのだとか。若いのにしっかりしているなぁ。
わたし、20代は何してたっけ。あぁ、仕事に明け暮れていたんだった。夢?あったっけ。
わたしは今、その夢を叶えられているのだろうか。
「夢があるんです」
一点の曇りなく、前を向いて言える。わたしにも、そんな時代があった。
今はもう、言ってはいけない?
いい年して、何、青臭いことを、と笑われるのだろうか。
わたしの中の青い火。赤よりも熱い青。
彼女たちといると、その青が鮮明に浮かび上がる。
わたしはまだ終わってなんかいない。
いくつになっても
夢を見たって、いいじゃないか。
(1000字)
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