ヒッチハイク
U-NEXT でホラー映画「ヒッチハイク」を観ました。
監督:山田雅史
出演:大倉空人 他
原作は、ネット掲示板の 2ch に投稿された怪談みたいです。
わりと面白かったです。
低予算ホラー映画に耐性のある人、好んで低予算映画を観る趣味のある人なら、まあ1度は観ても良いと思います。
もちろん過度な期待は禁物です。
普通に良い映画を観たい人は、普通の映画を選びましょう。
以下、余談です。
余談:ホラーの舞台
アメリカのホラー映画では、しばしば「外界と隔離された土地」が舞台に選ばれます。
それに類似する舞台設定は日本でも可能か? という点に関して僕は時々考えます。
フィクションは、受け手(小説の読者、映画の観客)の「自ら騙される能力」に依存した芸術形態です。
受け手は、それが嘘だと分かった上で、小説を読み、映画を観ます。
彼らは、小説や映画の作者に対して、
「どうせ嘘を吐くなら、上手に吐いてくれよ」
と、いつも思っています。
とくにホラーに関しては、他のジャンルよりその傾向が強いような気がします。
例えば、ホラー小説・ホラー映画の一大勢力に「実話怪談」があります。
実話怪談は、
「これはノン・フィクションです。実話です。ドキュメンタリーです」
という体裁で語られます。
やっぱり、
「絵空事です、作り物です。ファンタジーです」
ってハッキリ分かる語り口より、
「友達の友達が実際に体験した話なんだけど……」
って言われた方が、怖さが増すんですね。
怖がりたい、ゾッとしたいと思って読んだり観たりするのがホラーですから、怖ければ怖いほど評価が高くなります。
作り物の異世界より、現実に僕らが生活している町と地続きの方が、怖い。
「99・99パーセント作り話なんだけど……ひょっとしたら0・01パーセントの確率で、本当にあった出来事かも……」
と読者なり観客が思えるような作りにするのが、ホラーとしては理想という事になります。
さて、アメリカのホラー映画に出てくる「外界と隔離された土地」です。
「悪魔のいけにえ」「サランドラ」「クライモリ」など、殺人鬼一家ものジャンルで1番大事なのは、言うまでもなく劇中に登場する殺人鬼一家そのものです。
と同時に、彼らが暮らしている「場所」も重要だと僕は考えます。
殺人鬼一家が殺人鬼一家であり続けるためには、現代の法治国家の網を逃れ、思う存分に「狩」を楽しめるだけの広さを持った縄張りが必要です。
アメリカのように、広大な土地に国民が分散して住んでいるような国なら、例えば、
ニューヨークからロサンゼルスまで自動車で長距離移動していた。
その途中で道に迷った。
殺人鬼一家のテリトリーに足を踏み入れてしまった。
という話にも、ある程度のリアルさを感じられます。
ひるがえって、我が日本は、どうでしょう?
ある町の市街地から隣町の市街地へ行くのに掛かる時間は、だいたい自動車で数十分、長くてもせいぜい1時間といった所ではないでしょうか?
隣町からさらにその隣町に行くのも自動車で数十分。
隣町の隣町から、さらに向こうの町に行くのも数十分。
町と町との距離が、あまりにも短い。
そして、これが重要なのですが、町と町の間には隙間なく家々、田んぼ、畑、工場、公共建造物が並んでいる。
つまり我が国には、殺人鬼一家が住めそうな外界と隔離された土地(いわゆるノーマンズ・ランド)が無いという事です。
日本国内で、
「この話、ひょっとしたら0・01パーセントの確率で有りえるかも……」
と思える舞台とは、いったいどんな場所でしょうか?
そんな事を考えながら、この「ヒッチハイク」を観ました。