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No.2 - 外資系事件簿「ダブルチーズバーガー事件」
とうとう、この話をする時が来たか。
これは、私がある外資系メーカーの日本法人で働いていた時代の話だ。
その会社の本社は、アメリカ西海岸・サンディエゴにあった。
陽気な街さ。
アメリカでの会社の歴史はそこそこあったが、日本法人は、数年前に立ち上げたばかり。私は17人目の社員で、まだまだ日本国内のビジネスは軌道に乗っておらず、「立ち上げフェーズ」を脱していなかった。
サンディエゴの本社からも、たびたび出張者が訪れ、私はその度に「日本語通訳」として現場に駆り出された。当時20代の私からすれば、本社のベテラン社員と一緒に、日本の大手取引先企業の社長や役員クラスとの打ち合わせの場に呼ばれ、「通訳」として議論に参加できるってだけでも、なかなかに光栄なことではあった。
その日、私は、本社から出張で来ていたマイケルとジムと共に、銀座での取引先との打ち合わせを、ちょうど終えたところだったんだ。
「ハンバーガーが食べたい」
昼過ぎからの打ち合わせは大いに盛り上がり、気が付けば、時計の針は16時過ぎを回っていた。
「ちょっと長引いちゃったね。どうする? これから、会社戻る?」
そう、私は何の気なしにアメリカ人の同僚2人に尋ねたんだ。
「ハンバーガーが食べたい」
そう言ったのは、マイケルの方だった。
マイケルは、絵に描いたような「日本人が持つアメリカ人のイメージ」で、白人のドデカい大男。身長は190cmくらいはあるだろうか? 体重は、どう考えても100kgは超えている。主食はハンバーガーとステーキ。
野菜は一切食べないと聞いていたので「ハンバーガー」という要望にも、別に驚きはしない。
一方、ジムは、小食でガリガリ、スキンヘッドのアメリカ人で、あまり「食」に興味がないらしい。ただ、「酒」は死ぬほど飲むので、同僚たちからは「he eats beer. (彼はビールを食って生きている)」と皮肉を言われるほどだ。
ああ、ハンバーガーね。
と、私は思った。
中途半端な時間ではあったが、これだけの体格の大男だ。腹も減るだろう。
以前いた会社の頃から、海外のメンバーとは散々仕事をしてきた。突然腹が減ったと言い出すなんて想定内だし、ベジタリアンで肉も魚も食べれないとか、日本食は全部口に合わないとか、何かと食事の制約が多い外国人たちの中では、ハンバーガーくらいはお安い御用だ。
適当にどこか、ハンバーガー屋に連れて行けばいいだけなんだから。
その考えが、明らかに甘かったことに、その時の私は気が付いていなかった。
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