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にゃんこのいない生活

ルルちゃんがぼくたちの世界から去ってひと月が経った。
うちにルルちゃんが居ないなんて、ぜんぜん慣れない。
あれからずっと、長生きさせてあげられなかった敗北感のような感情に苛まれている。そして、事あるごとにルルちゃんの不在を嘆いてしまう。

2年ほど前に陽当たりの悪いアパートから引っ越して、春から夏の間だけは少し西日が入るようになった。長毛種のルルちゃんは暑いのは苦手だろうと思っていたら、気持ちよさそうに日向ぼっこするようになった。
「なんだ、陽にあたるの好きだったんだね、じゃあ前のアパートではかわいそうだったなぁ…」
今でも西日が差し込むと(ほら、日向ぼっこできるよ)って思う。

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それに前より広くなって歩く距離が増えたからか、肥っていたルルちゃんが引っ越し以来少しスリムになったんだよね。
ルルちゃんが歩くと爪がフローリングに当たるテチテチ音がかすかに聞こえる。
(前のアパートではルルちゃんが歩くと重みで床がギシギシ鳴った)
その音がもうぜんぜん聞こえてこない。また聞きたい。
家の中の何処を見ても、ルルちゃんが欠けていることを寂しく感じてしまう。

そう、ほんとお客様が来ると必ずご挨拶に出てくるんだよね。猫の挨拶っていうのはつまり匂いをかぐ、っていうことなんだけど。
ほら、知らない人が来ると隠れちゃう猫もいるでしょう? そういうことが一切なかった。
ルルちゃんは最初の飼い主に厄介払いされちゃったネコだけど、でも人からいじめられたりしたことは全くなかったんだろうな、って思う。人を怖がるような素振りがないから。
ただ迎えに来てもらえなくて、そうこうするうちにぼくたち夫婦に拉致、もとい、引き取られたんだろうね。

思うに、子供のいない夫婦と猫の組み合わせは絶妙のバランスで。
例えば夫婦に子供が生まれてお母さんの最優先が赤ちゃんに変化したとき、そのことに不満を募らせるようなオトナになりきれない馬鹿夫もいるかもしれないけど、猫だとそういうことになりにくい気がする。
とにかくそのベストバランスが崩れてしまって、ぽっかり空いた穴を埋めるのが難しい。

それで落ち込んでしまい、いっとき深い呼吸がしにくくなって、ちょっとヤバいかもという自覚が。そんな中、家族や友人たちのおかげでとても励まされた。帰国の度にルルちゃんの面倒を見てくれていた友人が親子で泣いたと話してくれたり。
友人たちが外出禁止中なのに花を贈ってくれて、本当に有り難かった。ルルちゃんが亡くなったとき花屋さんはやってなくて花でいっぱいにしてあげることができなかったから、なおさら。

そうそう、フランスでペットが亡くなった場合どうしたらいいのかについて友人に訊かれたので簡単に書いておきます。
犬や猫など小型の動物が亡くなった場合は、動物病院か動物専門の火葬業者に連絡します。
コロナ騒動で外出規制の最中だったので、いつもの獣医さんに電話して託しました。どのようにして連れて行ったらいいかはあまり気にしなくていいようで、何かに入れてもいいし、タオルか何かでくるんで抱いていくのでもいいそうです。妻がルルちゃんのお気に入りだった箱を工作して棺にしました。
料金は動物病院の場合だと、動物のサイズに応じて20〜120ユーロくらい。ルルちゃんの場合は62ユーロでした。
高いけどお金を出せばペット用のお墓もあるようです。
詳しくは検索していただくとして、ちなみにペットの遺骸をゴミや下水に棄てたり、自然環境やその他の場所に投棄、つまり勝手に埋葬すると罰金3750ユーロだそうです。ヤバい。

愛猫を亡くして以来、大好きなのに猫を飼わなくなって久しい友人がいて。
忘れられないよね…。
その人、本当に猫好きだから去年久しぶりに会ったときにまた猫と一緒に暮らすことを勧めて「フリーランスのネコを助けてあげて」なんて言ってしまったんだけど、てんでわかってなかったなって反省。
今は気持ちがよくわかるようになりました。
猫ならにゃんでもいいってわけじゃなくて、ルルちゃんに逢いたいから。
いつでも撫でさせてくれるいいコだったなぁ…。
いつまでも引きずっちゃって猫ポエムおじさんみたくならないようにしないとね。



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