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ストレングス・ファインダー「活発性」を本当の強みに――躊躇しないリーダーシップでチャンスを掴む
近年、ビジネスやキャリアの世界では「強みを活かす」という考え方が注目を集めています。もちろん弱点を克服することも大切ですが、それ以上に自分の“強み”を理解し、そこをさらに伸ばすほうが大きな成果と満足感を得られやすいという研究結果が数多く報告されています。
そんな中で、才能と強みを可視化するツールとして広く知られているのが「ストレングス・ファインダー(CliftonStrengths)」です。ストレングス・ファインダーは、あなたの潜在的な才能を34の資質に分類し、「自分が何を得意としているか」を発見するためのヒントを提供してくれます。ただし、見出された資質は“原石”のようなもので、それをどのように磨き、行動に移すかで、真の「強み」に進化するかどうかが決まってきます。
この記事では、その34の資質のうち「活発性(Activator)」に焦点を当てていきます。活発性は「とにかくすぐ行動したくなる」「動き出すスピードが速い」という特徴を備えていますが、意外と誤解されることも多い資質です。今回は、活発性が持つ本当の魅力と、その才能を真の強みに高めるアプローチをご紹介します。
1.「活発性」とは
1-1. 「すぐ動きたくなる」資質の本質
ストレングス・ファインダーにおける「活発性」は、“考えるよりも先に行動したくなる”と形容されることが多い資質です。たとえば新しいアイデアを思いついた瞬間、「これは面白そうだ。まずはやってみよう!」と行動に移してしまう。そんな行動力とスピード感こそが活発性の特徴です。周囲からは「行動力がある人」「決断が早い人」として映ることが多く、一気に周囲を巻き込んで次のステップに進める原動力にもなります。
ところが、この「とにかく早く動く」という性質は、ときに周囲から「せっかち」「慎重さに欠ける」といったネガティブなイメージで捉えられることもあります。本人もまた「なぜ皆そんなに考え込むの?」「まずやってみたらいいのに」と思いがちで、衝動性や短絡的な行動に見られないよう気を配らなければなりません。しかし、活発性が持つ“行動を呼び起こすエネルギー”は、ビジネスシーンにおいて大きな価値を持ち得ます。
なぜなら、ビジネスの成果を生む過程では「試行錯誤を短時間で繰り返し、早めに改善サイクルに入る」ことが不可欠だからです。いわゆる“アジャイル”な働き方やイノベーション推進には、この活発性がまさに強みとして機能します。
1-2. 活発性がビジネスにもたらすメリット
活発性を強みとして最大化できた人は、新しいプロジェクトをスピーディーに立ち上げ、メンバーを鼓舞しながら前進を促す推進力があります。また、失敗を恐れるよりも「とりあえず動いてから考える」マインドセットを持っているため、未知の分野でも結果的にチャンスを掴みやすいのです。こうした姿勢は、特に変化やスピードが求められるビジネス環境で大きく役立ちます。
一方で、活発性の持ち主が見落としがちなのは「周囲の準備状態や心理的なハードル」です。本人は勢いよく行動を始められますが、他の人は時間をかけて検討したり、根回しをしたり、といったプロセスを重視する場合があります。ここを意識せずに猪突猛進すると、気付かないうちに足を引っ張られる状況を生む可能性もあるでしょう。
つまり、活発性の才能を“強み”として活かすには「スピード感」と「周囲の巻き込み力」のバランスが鍵となります。うまくそれをかみ合わせることで、行動ファーストなスタイルがチームや組織にポジティブなインパクトを与えるのです。
2:「活発性」を真の強みに進化させるためのアプローチ
2-1. 意識的に「考える時間」を作る
活発性がある人は、思いついたら即行動へ移す傾向があります。しかし、すべてを勢いだけで進めると、ムダな労力や周囲との齟齬を生むリスクも上がります。そこで「よし、行こう!」と思った瞬間に、ほんの少しの時間を取り、「今の思いつきをどう活かすか」「成功イメージはどのようなものか」をざっと整理する習慣を付けましょう。
たとえば1分程度でもいいので“メモを取る”ことをルーティン化したり。頭の中のアイデアを走り書きしながら、「どのステークホルダーに声をかけるのか」「どれくらいのリソースが必要か」といった最低限のポイントだけは押さえると、周囲にも納得感を与えながらスピードを落とさずに行動に移せます。
2-2. 周囲の理解と協力を得るためのコミュニケーション
活発性の人にとって、周囲を巻き込む際にもっとも大切なのは「スピード感だけではなく、背景説明や目的を明確にする」コミュニケーションです。あなたが即断即決で物事を動かそうとしても、周囲は「何のためにこれをするのか?」「なぜ今やらなければいけないのか?」と疑問を抱くことがあります。そこを端的かつ熱意をもって伝えることで、スピードについていけない人にも理解を得やすくなるのです。
「このアイデアは○○に役立ちそう。しかも××という理由があるから、早めに動いたほうが効果的なんだ」といった形で、目的の“なぜ”を示すだけでも大きく変わります。特に活発性が高い人は、後から説明するより先に動いてしまうクセがあるため、意識して「説明や共有」をセットにする癖をつけるとよいでしょう。
2-3. 相互補完できる相手を見つける
活発性を一層磨くうえでおすすめなのが、「慎重さ」や「分析思考」「規律性」など、やや対極にある資質を持つ人との協働です。たとえば自分が思いついたアイデアを、普段から信頼関係のある慎重派の同僚やパートナーにいったんぶつけてみる。すると「この点にリスクがあるかもしれない」「もう少し段取りを考えよう」という建設的なフィードバックが返ってきます。
こうしたやり取りができる相手がいるだけで、活発性の持ち主は暴走を防ぎつつ、より賢明な形でアイデアを実行に移せるようになります。これを嫌がってしまうと、自分一人で突っ走ることになり、結果的に周囲とのギャップが広がるばかりか、失敗しやすい環境を自ら招いてしまいます。資質の異なる仲間と組むことで、活発性のエネルギーがより建設的に活かされるのです。
2-4. 「継続」や「完遂」への意識を高める
活発性の人は「スタートダッシュ」は得意ですが、場合によっては「継続」や「粘り強さ」が苦手になりがちです。すぐに別の新しいアイデアやプロジェクトに心が移ってしまい、結果として途中で投げ出してしまうことも少なくありません。これを克服するためには、自分が動き始めたテーマやプロジェクトについては「次に動き出す前にどんな“完了条件”を満たすか」を明確にしておくのが効果的です。
たとえば「一度ローンチして最低1カ月は数値を追いかける」「最低限○○人にヒアリングを実施して、改善策をまとめる」など、明確な区切りを事前に設定します。そうすることで、走り出しているプロジェクトを勝手に“ゴール”とみなして次へ移ることを防ぎ、最終的な成果を高められるでしょう。
3:もっと深く自分の強みを理解しよう
3-1. ストレングスファインダーの34の資質は“入り口”にすぎない
ストレングス・ファインダーで明らかになる34の資質は、あくまでもあなたが持つ“才能の方向性”を示すものです。結果に出た資質を眺めているだけでは、どんな行動をとりやすいのか、どんな思考パターンを持ちやすいのか、総合的には見えてこない部分も多々あります。たとえば、活発性の得意分野がチームビルディングに活かされることもあれば、新規事業やクリエイティブな企画立案で開花することもあるでしょう。そうした多面的な可能性を見つけるためには、「自分の資質がどんな組み合わせで発揮されるのか」を知る必要があります。
さらに、ストレングス・ファインダーは“資質の名称”を見ただけでは、本質を誤解しやすい場合もあります。たとえば「内省」という資質は“考えることが好き”という傾向を示しますが、同じ「内省」を持つAさんとBさんが全く異なる行動や成果を生むことは珍しくありません。活発性でも、単純に「いつも落ち着きがない人」ではなく、情熱的なリーダーシップを発揮する人の場合もあれば、周囲を鼓舞してどんどん巻き込むタイプもいます。大切なのは、資質の名前や一般的な説明にとらわれず、自分固有の資質の現れ方を観察し、自分にしかない強みを掘り下げていくことです。
3-2. あなただけの資質の組み合わせから見えてくる“本当の強み”
「活発性」に関連する資質に「競争性」が組み合わさると、ライバルと勝負したい気持ちが先に立ち、常に「勝ちに行くための即行動」をとるスタイルになるかもしれません。一方、「着想」や「戦略性」が合わさると、アイデアを瞬発的に形にしようと駆け出す力が強みになります。こうした組み合わせの違いによって、同じ“行動力”でもその出方や強みの活かし方が変わってくるのです。
つまり、ストレングス・ファインダーで自分のトップ資質を見た際に、「どの資質とどの資質がかけ合わさった時、どんな行動パターンになりやすいか」を知ることが、“あなただけの強み”を深く理解するカギとなります。自分を取り巻く環境や役割も含めて総合的に考察すると、意外なシーンで自分の強みが発揮できることに気づくかもしれません。
ストレングス・ファインダーの結果を自分一人で分析・活用するのは、思いのほか難しいものです。なぜなら、人は自分の思考や行動のクセに慣れすぎていて、「なぜ自分がそう考えてしまうのか」「どこに本当の強みがあるのか」を客観的に見るのが苦手だからです。また、「活発性」のように見えやすい資質の場合でも、その奥に潜む別の資質の影響を見落としがちです。
そこでおすすめしたいのが、「Gallup認定ストレングスコーチ」によるコーチングを受けることです。
コーチングでは、あなたが普段の行動や思考プロセスでどのように資質を使っているのかを、客観的に整理していきます。そのうえで、「本来の強みを活かすためにどんなアクションをとれるか」「実際にどんな行動プランを立てると良いか」を具体的に導き出していきます。ぜひ一度お試しください。