あのすごかったH君は今どうしているのだろうか
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今回は高校でのおはなし。
高校1年の春、出席番号順で並べられた机。私の隣はH君という、もはっとした長い髪で、うつむきがちな、優しい少年だった。
彼がなんだかすごい人間だということは、授業、特に数学と物理の授業を一緒に受けていればすぐにわかった。彼は、私にはよくわからない本で、圧倒的に先の進度の内容を勝手に自習をしていた。のちのち、彼を気にかけていた数学の先生に話を聞くと、高校1年の時点で大学学部レベルの物理、数学の勉強に取り組んでいる、というような恐ろしいレベルであったそうだ。
その後も、彼は、物理オリンピックでメダルを取ったり、数学の研究雑誌を何人かの数学同好会のメンバーとで発行したり(私ももらった気がする、今どこに埋もれているだろうか)、私の10倍くらいの密度で、物理、数学の道を楽しみ学んでいた。
そんな彼を私は尊敬していた。彼を変な人だと思っていた人は多くいたと思われるが、物理学徒を目指していた自分にとっては、彼は最高に魅力的な存在であった。彼を近くで見ていた、高校1年の春のあの数ヶ月は、今思えばかけがえのない時間だった。到底届かない存在ではあったが、彼の見ているレベルでいつかこの世界を見れるように、私もマイペースに頑張っていこうという思いが、私の勉強のエネルギー源の1つになっていた。
高校3年になった頃だったろうか、彼を学校で見かけないなと思っていたら、飛び級で大学に入り、高校はすでにやめているということを耳にした。彼について、それ以降の、それ以上のことはなにもわからない。連絡先も知らない。
今彼は、どこでなにをしているのだろう?大学院生として研究しているのかな、それとも別の道を選んだのかな。高校1年の時の彼の自己紹介用紙に書いてあった将来の夢は大学教員だったけど、今も目指しているのかな。
またもう一度会って話したい。彼は私に特に興味はなかったと思うが、私は彼がとても気になる。今どうしているのか。これまでどう生きてきたか。高校1年の頃物理のどの分野の勉強していたのか、今ならわかる。聞きたいことがたくさんある。
私は今、少しずつ研究というものを味わいつつあって、その魅力がだんだん見えてきています。今のところは博士号の取得を目標にして日々を過ごしています。その先のことはまだ考えていません。君も研究を楽しんでいるんでしょうか?
いつかどこかで出会えることを祈って。