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【2022年の五悦七味三会を振り返る13】

前回の記事から随分と時間が空いてしまった。
文章を書いていなかったわけではない。
日記は毎日書いているし、とても公開はできない日々の「心の動き」をPCのメモにまとめてもいる。
ただ「noteという媒体に書く」という習慣を少し失っただけである。
今日からまた戻していけばいい。
…ま、完全に言い訳である。

さて、今回はそんな習慣の話をしようかなと思う。
習慣の力というのは強大である。

七味その⑦:久しぶりに食べた母のキッシュ

世の中にはたくさんの習慣がある。
毎朝早くに起きる習慣、何時までには寝る習慣、毎日ジムにいく習慣、ついついコンビニでスイーツを買ってしまう習慣…。

「思考はいつか言葉になり、言葉はいつか行動になり、行動はいつか習慣になり、習慣はいつか性格になり、性格はいつか運命になる。」
これはマザー・テレサの有名な言葉であるが、まさに、30を前にして習慣というものの力の強大さを思い知っている。

それは例えば「毎朝6時に起きてランニングする習慣をつけるぞ!」とか「寝る前にはアロマをたいてヨガをする習慣をつけるぞ!」とか、自分の生活に足していく習慣、意識して変化させる習慣のようなプラス方向の習慣だけではない。

「その習慣が身についていることにすら気づいていない習慣」こそが、自分の運命を作る習慣のように感じる。
それはプラスの習慣ではなく、自分のゼロ地点までを構成する習慣である。
それは幼い頃から家庭内で受け継がれ、それが不自然だと思うこともなく「当たり前に」そうしてきた行動。
それはもはや「文化」と言い換えてもいいのかもしれない。

各家庭における「食文化」は、とてもわかりやすいものであろう。

僕が育った家の食習慣は、多分かなり変である。

というのも、僕は国際交流が盛んで料理が好きな母の元で育ったので、
昔から焼き魚とお米とお味噌汁みたいな日本食と並んで、
当たり前のようにボルシチが朝食に出て、昼食はキーマカレーとナン、そしてキョフテが夕食に出ていた。
刺身と日本酒ももちろんだが、カプレーゼとパテと生ハムに炭酸水で乾杯する日も多いし、僕の好物は母の手作りキッシュだった。
あげればキリがない。
世界中の珍しい料理が千葉県の普通の家の食卓に並ぶのだ。
今ならわかる。どんな食習慣やねん。

小さい頃からこうなので、これが日本人の標準的な食生活だと思っていた。
これが「どうやらちょっと変らしい」と気づいたのは中学生になってからだった。

僕の「母の味」の一つに「キッシュ」がある。
これが信じられないくらい美味しいんだけど、「母の味は?」に「キッシュ」と答えると毎回「ボケた」みたいな空気になるのは不本意である。
「里芋とイカの煮物」も同じくらい好きなので、相手によってはそう答えるようにしている。
「へー」で終わる。

あまり他の家庭の食生活に首を突っ込んだり、体験したりする機会はない。
友達に家にお泊まりに行ったとして、毎日の「いつもの食事」が体験できるわけではない。
食事は相当に強力な習慣だと思う。
気がつかないのだ。

友達と一緒にご飯を作ることがたまにある。
味噌汁が甘かったり、卵焼きが甘かったり、炒め物が甘かったり、僕からすれば信じられない味付けをする人がいる。
そしてそれをうまいうまいと言って食べるのだ。
(こう思うと我が家は割としょっぱい味付け系なんだろうな)
そういう人に会うと毎回かなり驚くが、でもこれがその人の家庭の味なんだろうな、と思っている(料理が下手なわけじゃないことを願いながら)。
まあ実際に話を聞くと九州の人だったり、名古屋出身だったりと、なんか納得することが多い。

当たり前だけど念を押しておくと、「どれがいい」なんてものは存在しない。
「どれがどれのよりも上位」とか「〇〇が出る家はすごい」「うちは〇〇だからだめだ」とかそんなことは絶対にない。
(あ、栄養バランスがいいかどうか、という尺度だけはあり得るかもしれない。)
どの家庭も、お母さんお父さんおばあちゃんおじいちゃんや兄弟、自分で昔から作っている人だっているだろう。
どの家庭のご飯も、誰かが誰かのために心を込めて作ったご飯なのだ。
「キッシュが母の味なんておしゃれ」なんて言わないでくれ。
「うちは手抜きばっかだ」なんて言わないでくれよ。
「父ちゃんの料理はまずい」も言わないでやってくれよ。

みなさんは母の味、父の味、おじいちゃんおばあちゃんの味、最近いつ味わったかい?
いつまでも味わえると思ったら、きっといかんよな。
ちゃんと、うまいこと秘伝のレシピを聞いておくことだよな。

あなたにお子さんがいるならば、心を込めてご飯を作ったかい?
それがいつか「母(父、etc)の味」になるんだもんな。

誰かが言ってたよ。
「死ぬ前に思い出すのは母の味だ」って。
わかる気がするな。

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