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トランペットと我が人生

1900年代前半
俺はアメリカで生まれた
うちの家系は貧しかった
何をしても貧乏な両親に
子供ながらに荒んでいた

たまたまそこに楽器屋があったんだ
意識したわけではないのだけど
ショーウィンドウ越しにキラキラしている
楽器が眩しかったので魅入っていた

その程度の感覚
欲しいとかそういうことでもなく
なんとなく食い入るように見ていたら

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お店の店主が出て来た
「てめぇこのクソガキ!盗みにきたかぁ」

滅茶苦茶怒られた
ただ眺めていただけだ
それに俺は楽器は弾く事はできないし
別に憧れがあるわけでもない

本当にただ見ていただけなのに
なんて言われようだ

そこに同じ黒人の紳士が現れた

「店主さん、店主さんには夢って
 なかったかい?」
身なりがいい男性をみて
店主は人を見た眼で判断するのだろう

「旦那、まさかこの悪ガキが?
 ないない。今のうちからしつけてやらないと」

「それは違いますよ、店主さん
 子供っての夢を見るもんだ。なぁ少年」

まいったなぁ俺の方を見て話しかけてくる
別に俺は夢を見てたわけじゃない
トランペットの奏者になりたいわけでもない
ただキラキラしてるから

「店主さん、そのトランペットをこの子に」

えええええええ?????
えええええええええ???

買ってくれた

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だけど俺、欲しいわけじゃないからな
しかし、人に親切にしてもらったら
お礼はいいなさいって親にはよく言われている

「ありがとうございます」
「いいんだよ。少年、君がやがて
 トランペットで世界を魅了する奏者に
 なったら私をいつかフェスに
 招待してくれよ。ふふふ」

そういうと身なりの良い紳士は去って行った
買って貰ってなんだけど笑い方は不気味だった

思わぬ形で新品のトランペットが
手に入ったけども
別に吹けもしないし
そもそもどの音がドの音色?
ドはドーナツのド?の音階は
音階で言えば「ミ」だぜ

ドーはドーナツーのミーだ

ややこし!
んもーややこしぃー!

「坊主良かったな」
そういう店主を無視して俺は家に帰った
親には泥棒をしたのかと散々疑われたが
俺の音楽センスの無さは親が一番知っている
何より興味ないことも知っている

それなのにいきなり
トランペットは盗むわけないでしょうと
至極真っ当な理由からあらぬ嫌疑は晴れた

でも、高いものだし
なんとなく持ち歩くようになった
吹いてみたけど音は全然でない

トランペットって難しいのね
海沿いで一人夕暮れに黄昏ながら
トランペットを吹いていた

正確には音が出ていないので
咥えていたというべきか
葉巻にしてはでかいし何よりまだ子供だ

しかし体躯は悪くないので
絵ずらとしては様になっていたのかな
また変な紳士が話しかけて来た

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