バタバタママ
1970年の後半に
俺はディレクターに昇進した。
テレビ番組のディレクターだ
といってもゴールデンタイムを飾る
そんなディレクターではなくて
朝の子供向け番組のディレクターだ
他にもディレクターは何人かいるが
子供向けの番組は、子供たちが楽しめる
そんな歌をつくったりもする。
伝説で言えばおよげ!たいやきくんは
伝説と言えるだろうな。
ディレクターとしての初めての仕事
それが2分程度の子供が喜ぶ
歌をつくることだった。
この時代は景気も前向きだから
予算も結構組んで貰えたのだが
1から10を作るのとは違い
0から1を生み出すのはやはり大変だ
ADを集めて会議をした
『どんな歌がいいかな?遠慮せず言ってくれ』
あまり堅苦しくない雰囲気を出すのも
優秀なディレクターには必要だ
だが俺はディレクターになったとたん
偉そうになった
出世頭の富雄はその態度が問題で左遷された。
まぁ大して面白くもなかったからな
「たとえですけど、ケーキの歌はどうですか?」
『ユーそれは既にあるよ!
もっとナウなもの!』
「仏様の歌どうですか?モラルを教えるような」
『暗い!それにミーは無神論者だ!」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
あんまり会議は盛り上がらない
むしろ最近嫌われている気がするな
もしかしたら、ディレクターになったとたん
ユーとかミーとか言い出したからなのか?
いやそんな事ないか
『ユーたちは何か言いたいことはないのか?』
「いいですか?」
『ユーどうした?』
「ユーとかミーとか辞めてもらえます?
ムカつきます」
そこだったっ!!
反省して心を入れ替えた時に1つの案がでた
「バタバタママってどうですか?」
その言葉の響きに
なぜか戦慄を覚えた。身震いしたんだ。
これはイケるんじゃないか?
『構想はどんな感じだ?』
話を聞くと、朝6時からはじまり1時間単位で
忙しいママの生活を軽快なリズムに乗せて
唄うものだった。
それは素晴らしい!!
しかし提案してきた者は外しておいた。
俺が考案したことにしたんだ。
最初に出来たのは歌のイントロだ
バタバタママ~バタバタママ~バタ~バタ~♪
いいじゃないか。
歌詞をつけていくか
「こんなんどうでしょうか?」
6時~ホテル飛び出し帰宅する~
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