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非常識人 第三十七話 ムショ7


非常識人は皆が皆自我が強い。
度が過ぎる。

機嫌はいい時はいい。
悪い時は悪い。

話しかけられただけで「絡まれた」と言って殴る時もあれば、知らない酔っぱらいからバーや居酒屋で3発ほど軽く殴られても笑って謝って流す時もある。

生き様が気分だ。

ライフスタイル。

気分を害された事に対して更に怒るからキリがない。

楽しむ事が大切。
周りからすれば楽しませる必要が生じるからいい迷惑だ。

閑話休題。

正月を迎えた。

まずこれは言いたい。
刑務所の中で
「誰かのことを考えていた」
「反省していた」
「性欲が溜まった」
は中々あり得ない。

少なくとも俺はそうだった。
頭の中は一つ。
メシだ。
あとはどうでも良い。
興味を持つ余裕もない。
そんな環境。

刑務所の正月は豪華という都市伝説がある。

信じていた。

裏切られた気分だ。

無名メーカーの年越しそば。カップ麺。

冷凍食品のミニおせち。初めて見た。

鮮度の低い魚

白いだけの古米。それでも嬉しい。

おかずは不味い

特食。プルボンのプチ。
これだけは美味しかった。
キャベツ太郎はハズレだ。

ただ紅白歌合戦は最後まで見ることができる。

椎名林檎のパフォーマンスに感動した。

紅組の優勝を確信した。

「有吉緊張してたね。」

正月3日日を過ぎ、休憩時間にその話題が少し流行った。

大谷翔平の活躍。

相撲での尊富士の劇的な優勝。

「僕だったらこうします」の話題から入る警察24時の各々の意見

全てが暇つぶしになった。

知識としての娑婆の情報源は豊富だ。

新聞も閲覧できる。

ニュースは昼食後に流れる。

ただ話題は限られる。

性欲も湧かないのにFANZAを買う。
話題作りのために近い。
そういう人も多いと感じた。


自由のない暇つぶし
我慢を覚える期間

矯正協会のカレンダーを睨む。

2月。
何ピン仮釈がつくのか。

そのようなことを考える頃には寒さもだいぶ落ち着いてきていた。

メリヤスを脱ぎ過ごせる程度。
着替えが楽になる。

少しずつだがここでの暮らしに慣れていた。

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