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自己資本経営スタートアップを調べてみた

dotDは(ほぼ)自己資本のみで経営する、創業4年のスタートアップです。
『事業創造ファーム』を標榜し、自社事業と大企業との共創事業の両輪で、世の中に価値ある新規事業をたくさん生み出していきたいと思っています。

僕はそんな会社でCSO(Chief Strategy Officer)として、全社の戦略策定や組織・人事の仕組みづくりをやっています。

元々新規事業領域を得意とする戦略コンサルタントだったので、経営や新規事業開発に関する知識はそこそこありますし、日常的にスタートアップ界隈の情報収集もしています。これまではそれらの知識・経験をベースにCSO業務をやっていたのですが、最近はどうしてもそれらの知見ではうまく答えを出せない問題があるなぁと感じることが増えてきました。

色々考えた末に思い至ったのは、外部(主にVC)から資金調達するスタートアップを対象に構築された理論を、自己資本で経営するdotDが鵜呑みにしちゃダメなんじゃない?ということです(自己資本経営以外にも色々ユニークなところがある会社なのですが)。

そこでdotDへの示唆を求めて、自己資本経営で『事業創造ファーム』っぽいことをやっている先輩企業が、どのような変遷を辿って今に至ったかを調べてみました。

調べてみてわかったのですが、自己資本経営企業はとても面白い経営をしている一方で、外部から資金調達をする同規模のスタートアップに比べて情報が限定的です(面白い=少なくとも今回の調査対象はdotDには非常に示唆深かった)。恐らく、資金調達をしない分、対外的なブランディングの必要性が薄く露出が少ないのだと思います。あるいは資金調達という分かりやすいシグナルがないので、メディアが食いつかないのかもしれません。

そこで、この記事では僕が個人的に調査した内容をみなさんにシェアしたいと思います。

⚠️注意:この調査は僕がdotDの業務の一環で、もうちょっと言うと半ば私的に実施したものです。外部公開を目的として実施したものではありません。なので、レポートとしてのクオリティは高くありません。対象選定に網羅性はありませんし、事実誤認も含まれるかもしれません。ということで、寛大な心でご覧ください。「『自己資本経営スタートアップ』って矛盾した表現だよね」みたいなツッコミも受け付けておりませんw

調査結果

今回は5つの企業について調査してみました。

それぞれ平均所要時間1~2時間程度のクイックな調査結果で、情報の羅列・サマリーに留まります。調査対象に興味をもった方はソースにあたってもらえると、より一層面白く感じてもらえると思います(実際僕個人は、有名成功企業の分析記事やインタビューよりもよっぽど興奮しました)。厳密な意味で自己資本経営でない企業も含まれます。

では、どうぞ👇


①株式会社ZIZAI(とその派生企業)

2015年設立。創業期にエンジェルからの貸付を早々に溶かしてしまった後、自分達が勝てるパチンコメディアに狙いを定めて泥臭く事業を立ち上げ、最初の成功を手にします。
そこで得た資金を投資してライブストーリミング系の新規事業IRIAMを2018年に立ち上げ、2021年にDeNAに120億円で売却。2022年3月には祖業のパチンコメディアをDMMアミューズメント事業に譲渡(金額非公表)するなど、ダイナミックな経営をされています。

株式会社ZIZAI
【事業概要】
・パチンコメディア
・映像制作、動画配信支援
【沿革】
・2015年9月設立
・2022年3月DMMアミューズメント事業にパチンコメディア事業を譲渡(金額非公開)
・映像制作、動画配信支援事業を株式会社MEDIXとして存続

株式会社IRIAM
【事業概要】
・キャラライブアプリ/ライブストリーミング
【沿革】
・2018年10月に株式会社ZIZAI内で事業開始
・2020年5月にZIZAI子会社として、株式会社IRIAMを設立
・2021年7月にDeNAに売却(120億円)

👇の創業者インタビュー、めちゃくちゃワイルドで面白いので必見です。

👇にインタビュー記事の中から特に面白いと思った創業期のストーリーをサマっておきます。

  • 学生時代に趣味でビジネス(転売等)、パチンコで生計

  • 進学・就職できなくて起業、個人貸付で1000万円を調達(他にもどこかから300万円借入)

    • 名古屋で開催されていたIT飲み会(IT系社長が集まる場)を見つけて、30秒でピッチ

    • そこから紹介紹介で、株式会社プロトコーポレーションの代表に到達

    • 2回のミーティングを経て、面白がって1000万円無利子・株式なしで貸付

  • 半年間で1240万円で溶かす

  • 0円でパチンコ系Youtubeチャネルを買収

    • 個人運営、月商100万円程度

    • 月商1億円を目指せるスキームを提案

    • 3ヶ月間ほどかけてあらゆるSNSアカウントからアタック

    • 返信があってから毎日5~6時間×半月電話で会話→愛媛に会いにいく

    • 初期0円で増収分を支払い

    • 実は同時期にそこそこ大手からも同チャネルに買取オファーがあったらしい

  • 自分達が勝てるドメイン(パチンコ)を選択
    「大学1年の頃からやっていたので知見はある。そして、若手プレイヤーがほとんどいなかったのでITをうまく使えばなんとかビジネスになるだろうと思いました。今思うと奇跡的な選択だなって思います。」


②株式会社DONUTS

ジョブカンの開発・運営企業(https://www.donuts.ne.jp/#front-services)。
創業初期に受託開発で得た資金で立ち上げたジョブカン。リリース当初は全く売れなかったそうですが、その後アルバイトを中心に低コスト(初期開発費500万円)で開発したゲームが当たり(売上累計100億円)、そこで得たキャッシュやノウハウを広告宣伝に投資することでジョブカンを成長させたそうです。
その後は事業を多角化し、今のユニークな姿に至ります。

事業概要や沿革は以下のリンク先によくまとまっています。ZIZAIに負けず劣らずとてもユニークで面白いです👇

大雑把な沿革だけサマリーして掲載しておきます👇

  • 2007年2月、DeNA出身者2名で創業会社設立、受託開発開始(2人とも2004年=新卒第1期入社のエンジニア)

  • 2009年12月ハウコレ、2010年5月ジョブカン勤怠管理リリース

  • ジョブカンは当初全く売れず
    「今であれば、競合企業がどのくらいいるのか、市場規模はどれくらいか。いろいろ調べた上でサービスの開発に取り組みますが、その頃は何も考えずに『とりあえずやってみよう』という感じで始めてしまったんです。売り始めた後に競合が100社ほどいることに気づき、『さすがにまずい』となりました。実際、年間で1〜2件の契約しか獲得できませんでした」(西村氏)

  • 2011年1月からはゲーム開発に着手

    • 初期のゲーム開発はアルバイト(開発費500万円)

    • アルバイトが開発したゲームが売れたっぽい(累計100億円以上)

    • 軍資金はおそらく受託開発

  • 2016年2月から1年半でジョブカンシリーズを続々リリース

    • ガチャ規制でゲーム一本足に危機感

    • ゲームで得たキャッシュで広告を月2000~3000万円ペースで投下(当時としては異例の規模)

  • その後は色んな事業に多角化(ライブ配信、医療、他)

    • ジョブカンで経験のをもとに、別事業で得たキャッシュで大量に広告費を投入してグロースさせるのが同社の勝ちパターンに

売上高の推移と沿革を照らし合わせてみると味わい深い

③株式会社レアゾン・ホールディングス

フードデリバリーの一角であるmenu株式会社や「ドラゴンエッグ」などを展開するゲーム開発会社等を傘下に持つ持株会社です(https://reazon.jp/)。
創業メンバーの土地勘のある広告領域で最初の事業を立ち上げ、ゲームのヒットを経て、現在はそれらで獲得した資金をmenuやSNSの事業立ち上げに投資しているようです。

意識的に露出を抑えているようで、今回の調査対象の中でもとりわけ情報量が少ないですが、以下のインタビュー記事からある程度の沿革や雰囲気を感じ取ることができます👇

上記の記事や関係者の話を総合するに、概ね以下のような変遷を辿っているように思われます👇

  • 光通信出身者をコアメンバーとして2010年に創業

  • 前職での土地勘や営業力を駆使して広告事業(恐らく今の株式会社アドレア)を立ち上げ

  • 広告事業で得た資金でゲームを開発し、更に大きな資金を獲得(有名タイトル=ドラゴンエッグ)

  • 2018年にmenuを立ち上げ

  • 2021年にKDDIからmenu株式会社への50億円を含め、グループ全体で100億円の資金調達

  • menuの他にはSNS事業が現在の投資領域


④株式会社クラシコム

北欧、暮らしの道具店(https://hokuohkurashi.com/)の運営企業です。
上記3社とは違って単一事業でスケールし、2022年8月に上場も果たした企業ですが、その成長過程は参考になります。

Newspicksの特集をご覧になった方は多いかもしれませんね。面白いので、未読の方はぜひ👇

  • 2006年9月起業

    • 当初は不動産C2C事業に着手もほぼ売上立たず

    • その間はせどりで食い繋ぎ

  • 2007年北欧暮らしの道具店を開始

    • 残りの資本金150万円で罪滅ぼしのために共同創業者の妹と海外旅行に(プレゼント的な感じっぽい)

    • そこで本物の北欧に触れる(当時かもめ食堂やkunelブームで北欧好きだった)

    • ビンテージ食器を買い込んで帰国し、日本での販売を試みた

    • それが北欧暮らしの道具店の始まり

  • いまや売上50億円弱、営業利益率20%弱、ROE40%弱、コンテンツのUU=2000万の超優良D2C

  • 2022年8月に上場、現在の時価総額は100億円弱


⑤Unistyle株式会社

ESシェアを中心とした就活支援の企業です(https://unistyleinc.com/)。
同僚から教えてもらうまで僕も知らなかったのですが、創業者の樋口幸太郎さんはその後シリアルアントレプレナーとして活動されているようで、そうした点でも面白い会社でした。

  • 起業を視野に入れつつも200x年に伊藤忠商事に入社

  • 当初は金融部門に配属、2011年の生活資材部門への異動を機にアフィリエイトビジネスを開始

    • テーマ①:FX・株式投資

    • テーマ②:就職活動

  • 両方やった結果、就職活動が長続きしたこと、月10万円程度の売り上げがあったこと、リアルイベントで100名以上の集客ができたことをきっかけに起業を決意

  • ただし、起業後も順風満帆だったわけではなく、月給10万円の時代もあったっぽい

  • 2016年10月株式会社ネオキャリアに事業売却

なお、その後の創業者樋口さんの動きはこんな感じのようです👇

  • 株式会社オープンアンドナチュアル(ブランド名=PAIRMANON)にCOOとして経営参画→売却

    • 元々エンジェル投資先

    • どうやら伊藤忠時代の後輩の会社

    • 2022年にアダストリアグループのBUZZWITに事業売却

  • 2022年に株式会社bizgemを設立


雑な考察(個人の感想です)

一部想像や私見も含みますし、僕/dotDのフィルターをだいぶ通しちゃってますが、概ねの共通項として以下のようなことが言えそうです。

  1. 創業初期に修羅場を突破している
    自己資本経営だからこその修羅場なのか、修羅場を越えたからこそ自己資本で経営し続けられたのかはわかりませんが、みんなどこかで大きなお金の苦労をしているのが印象的です。VCから調達している企業もブランディングのために言わないだけで本当は同様の経験をしているのかもしれませんが、大きくbetするための最初の資金を自ら稼ぎ出すのが如何に困難なことなのか、改めて考えさせられます。

  2. 最初の事業は創業者の得意領域×投資額=小・回収期間=短
    これもまとまった資金がないので当たり前かもしれませんが。
    もう少し具体的に言うと、今回の調査対象外の企業も含めて、以下のような初期の事業領域の選定をすることが多いように感じます。
    ・ニッチ領域のメディア(ECや広告を含む)
    ・受託開発
    ・人材紹介
    いずれにしても共通するのは、創業者の得意領域であること、投資額=小・回収期間=短なビジネスであることでしょうか。

  3. ゲームを当てて更に増やす→多角化する
    今回の調査対象の①~③がゲームないしはそれに近い事業で大きく儲けることに成功し、その頃に多角化し始めた点もまた印象的でした。思えばDeNAやGREE、あるいは自己資本経営の大御所サイバーエージェントも似たような軌跡を辿っているような。調査対象の偏りかもしれませんし、2010年代という時代の特徴かもしれませんが。

dotDも負けず劣らず面白いですよ

雑文で恐縮だったのですが、少しでも参考になっていれば幸いです。

ここまで他社の話ばかりしてきましたが、dotDも(ほぼ)自己資本経営で新規事業をたくさん作ろうと頑張っています。今回の調査対象のどことも違うユニークな会社なので、もし興味を持っていただけた方は一度お話ししましょう!

あるいは、この件で僕と議論したいという物好きな方がいたら、何らかの形でお声がけください。大してアクティブではないですが、一応twitterを晒しておきます。


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