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疲労と情熱のあいだ。4歳児とフィレンツェのドゥオモ、463段を登るまで。

フィレンツェと言えば、『冷静と情熱のあいだ』ですよね。そんなことない?
主人公たちがドゥオモでまた会おうと約束をするんですよ。いつ読んだのかも、正直なところストーリーも曖昧なのに、私の記憶に居座り続けるフィレンツェのドゥオモというもの。

漠然とした憧れだけが残り続け、結局何なのかはわかっていないドゥオモ。改めて調べたら、正式名称は「サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂」とのこと。なるほど教会なのね。てっぺんのクーポラに登ることができ、フィレンツェの街並みが一望できるとか。

イタリア4都市を巡る9泊10日の旅、2都市目がフィレンツェ。これは登りたい!ということで調べたら、登る手段が階段しかない。その数、463段。しかも螺旋状だったり、急勾配だったり、一筋縄ではいかなそう。登る階段と降りる階段が別れていて、途中でやっぱやめ!もできないみたい。

4歳の娘、登れるのか…?

「4歳 ドゥオモ 登れる」でググってみるけど、そんなに情報はない。当たり前か。ひとつふたつ、娘と年齢の近い子が登ったブログがヒットしたけど、「この子は登れたのね…」ということでしかない。こんなこと言うなら探すなって感じですよね、すみません…。

体調や本人のやる気を鑑みて挑戦するか決めたかったのだけれど、クーポラへ登るチケットはコロナの影響なのか日時指定の完全予約制。

しかも単体のチケットはなくて、他の施設の入場券とセットになったやつしか売ってない。セットは3種類あって、3施設分、4施設分、5施設分なんだけど、ドゥオモは5施設分のやつにしか含まれてないからそれを選ばざるを得ない。もちろん1番高い。くーーー観光客の足元みるよねーーー。やっぱり人気なのね。

ローマからフィレンツェへ移動した初日が一番体力があると踏んで、フィレンツェ到着日のチケットを購入。昼過ぎにはフィレンツェへ着く予定だけど、余裕を持って15:45の回にした。

さて当日。フィレンツェ行きの電車のチケットは購入済。
ローマのテルミニ駅を10:30発の予定だ。

で、目が覚めたら10時だった。

???????

ままままさかの、寝坊!!!!

超特急でチェックアウト。ローマで宿泊したホテルの朝食、すっごく好きだったのに。最終日に食べ損ねるなんて…。

Uber呼んだのになかなか来ないとか、夫がアプリで設定した目的地が間違っていたとかのトラブルはありつつ、なんとかテルミニ駅へ到着。人がすごく多くてガヤガヤしてる。

電光掲示板に表示された時刻表を見ると、何やら赤い文字が大量に表示されている。

どうやら、フィレンツェ周辺で事故?があり電車が大幅に遅延しているらしい

私たちが乗る予定だった電車も遅延していてまだ乗れる!みたいな奇跡ないかな?と思ったけど、なかった。その電車はかろうじて影響を受けることなくテルミニ駅を出発したらしい。

予約していたチケットが紙屑になったので、新たにチケットを買わねばならない。新幹線みたいにとりあえず自由席で買っておいて、来た電車に飛び乗る!みたいなことができたらいいんだけど、指定席しかなさそう。さらには鉄道会社が二つあるのでややこしい!初心者殺しでしょこれ…

窓口で聞くしかない、と思ったらもちろん長蛇の列。ようやく私達の番が来たので聞いてみるも「待つしかないよ」と首をすくめられる。いやーーーまあそうだろうけどさーーー。

仕方がないので二階のフードコートへ移動し、朝食を食べながら待機。二階にも電光掲示板があり、増え続ける遅延時間をひたすら眺める。周りには同じ状況に陥っている人たちがたくさん。どうしようね、私たち。

様子を見てくる、と改札へ向かった夫から「20分後に電車が出るって!!乗る?!」と連絡が。荷物を慌ててまとめて娘と共に階下へ向かう。自動券売機でめちゃくちゃ焦りながらチケットを購入!早割でものすごくお得にチケットを買っていたのに、当日に買うと二倍以上の値段になってつらい…。でもこれで、フィレンツェに行けるはず!!!!

ドキドキしながら改札に入って電車を待つ。何番線にやってくるのか、ギリギリまで表示されない。

出た!こっちだ!と周りの人も大移動。なんとか電車に乗ることができた。

ふー。乗ってしまえばこっちのもん。財布は痛いけど良かった良かった。
何時に到着予定かな?とようやく落ち着いた気持ちでスマホを見て気がついた。
今日、ドゥオモのクーポラに登る予約してるじゃん…!!!
このとき13時半過ぎ、ローマからフィレンツェへの所要時間は約1.5時間、クーポラの予約時間は15:45。え、これ、いけるの…?

15時過ぎにフィレンツェへ到着。Google Mapに導かれ、なんとかホテルがあるべき場所に到着したけれど、どこにもそれらしき入口がない。重厚な木の扉は開かないし、奥にある階段を登ってみてもオフィスぽい表札が掲げてあるだけ。

右往左往していたら、夫が扉の横にタッチパネルを発見!これがインターフォンか??でも数字が並ぶだけで呼び鈴はない。ホテルに連絡したいけど、購入していたイタリアのeSIMはネットには繋がるが電話はできない。詰んでる。

こうしている間にもクーポラの予約時間が迫ってるし、駅から急いで来たから疲れてるし、隣で娘はわーわー言うし、ただただ高まっていく焦りとイライラのゲージ。

なぜか、本当になぜか突然カチャッと鍵が開いた。監視カメラか何かで見ていたのだろうか。

急いで中に入りフロントへ。ホテルというより民泊っぽい雰囲気。どうやらビルのワンフロアだけをホテルとして運営しているようだ。チェックインを済ませてホテルを出たときには、既に予約時間の15:45を過ぎていた。ホテルからドゥオモはかなり近いとは言え、やばい。

真ん中の赤いドームがドゥオモ

ドゥオモがどこかは一目瞭然だが、肝心のどこがクーポラへ登る受付は一体どこにあるんだろう。キョロキョロと探しながら早足で歩く。

それと思しき場所を発見!傍には長蛇の列が。もう次の予約時間の人たちが並び始めてるっぽい。

16:00、到着。予約時間は過ぎているけれど、次の予約時間にはなっていないからいけるか?!と入口へ近づくとガードマンに止められた。「予約は?」と聞かれたのでチケットの画面を見せると「もう過ぎてるからダメだ」と言われた。

ガーーーーーーーーーーーーン

ま、まじ…?

呆然とした私を見て同情してくれたのかどうなのか、「次の予約時間の列に並べ」的なことを言ってくれた。よかったああああああああああ。ありがとう!!!

待つ間に、階段を登るモチベーションになればとチョコを6つ調達。「チョコレートを買ったよ!登ったら食べようか」と娘に告げると、夫が横から「1番早く登った人がチョコ3つね!お父さん3つ食べよーっと」と言い出した。

この発言が娘のハートに火をつけた。

「むすめちゃんが3つたべる!!!」
娘は高らかに宣言し、いざ入場が始まると意気揚々と登り始めた。

と言っても大人でも普通に疲れるので、4歳児にはかなりハードである。娘が「疲れた」という度に狭い階段の隅に身を寄せて、後ろに続く人たちに追い抜かしてもらう。

ただ困ったことが起きた。先ほどの夫の「1番の人がチョコ3つ」発言が娘に刺さり過ぎていて、立ち止まるときですら娘が頑なに先頭を譲らない。
少しでも広いところへ立たせようと「こっちにおいで」と言っても聞きやしない。
「今だけだから」「危ないよ」なんて言葉ももちろん効果ナシ。抱き抱えるスペースもないので、落ちたりぶつかったりしないよう後ろから支えたりして、何とかやり過ごした。チョコへの情熱、恐るべし。

このくらい狭い。螺旋階段はさらに狭くなる。

ある程度登ったところでパッと視界が開け、クーポラの内側に出た。天井画が間近に見られるゾーン。それでも遠くはあるけれど、地上に比べたらずっと良い。ただこの通路もすこぶる狭い。幅が一人分しかないため、立ち止まってゆっくり鑑賞するのは難しい。つらすぎ…!

クーポラの壁沿いに通路が設置されている

約500年前に描かれた絵が目の前に。美術館で作品を見るのも良いけど、制作当時と同じ場所で体験できるなんて、ものすごく幸運だなと思う。当時の人々はどんな気持ちで眺めていたんだろう。この絵から何かを感じ取ったり、祈りを捧げたりしていたのだろうか。


さて階段も終盤。ここまで来ると途中で立ち止まって休む人も増えてくる。何だか同志のような気持ちになり、互いに声を掛け合って、抜かし抜かされしながら進む。娘の健闘ぶりは予想以上だった。もはや後半は娘のためというより私のために休憩していた気がする。娘を見た人たちが「すごいね!」と声をかけてくれることも、彼女のモチベーションになったようだ。

終盤はこんな急勾配!

最後の最後はもはや、階段ではなく梯子だった。そこを登って、ようやく辿り着いた!てっぺん!

どこまでも続く赤い屋根

フィレンツェの街並みが一望できる。右下に見えるのはジョットの鐘楼。クーポラと並ぶフィレンツェの絶景スポットの一つ。大聖堂もだけれど、ゴシック様式が本当に美しい。物語の中から出てきたみたい。

さて、お待ちかね、チョコレートの時間です。花より団子とはこのこと。ベンチに腰掛け、にっこりとチョコレートを貪る娘。よく頑張ってくれた、本当にありがとう!白いセーターについた茶色い染みも良い思い出だよ。

足がクタクタになった母にも、チョコレートは沁みた。
実はこのクーポラ登頂に備えて、私は旅行前からウォーキングを始めた。というのも夫から「娘が疲れてぐずるのは仕方ないけど、かやこは疲れただの帰りたいだの言うなよ」と釘を刺されていたのだ。ひょえー。言いそう。帰りたいは言わないと思うけど、「疲れた」は息を吐くように言いそう。

そこで友達を誘い、毎週ジムでウォーキングをした。
たかだか週に1,2回のウォーキングにどれほどの効果があるのかはわからない。ただそれまで私が運動に費やす時間はゼロだったわけで、これは人類にとっては小さな一歩だが、私にとってはとてつもなく大きな一歩だった。

その甲斐あってか、クタクタにはなったものの無事に登り切ることができた!運動ってすごい。その後も続いたかって?もちろん一度も歩いておりません!


さて、この日のことはすっかり娘の武勇伝になった。私が何度も娘の勇姿を褒め称えたからで、本人の記憶にどこまで残っているのかは定かではないけれど。

ということで、4歳児、クーポラに登れました。本人に合った報酬が鍵と思われます。誰の参考にもならないと思いますが、登った幼児の事例をお探しの方がいれば。






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かやこ|アメリカ暮らし
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