健康・医療心理学Ⅱ第2課題S評価レポート
『サイコロジカル・ファーストエイド活動の要点をまとめなさい。』
サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)とは、アメリカ国立PTSDセンターとアメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワーク(NCTSN)によって作成された、災害や事故の被災者および被害者に対して行うことのできる人道的、支持的、実際的な支援を、救援者が必要な部分だけ取り出して使えるように構成されたものである。PFAの目的は、トラウマ的出来事による初期の苦痛を軽減することと、短期・長期的な適応機能と対処行動を促進することである。サイコロジカルという言葉が使われているが、人々のつながりや、個人または集団としての自助力を促進することを目指しているため、心理的支援だけでなく社会的支援の側面も含まれている。その原理および手法は、研究と事例によって効果が報告されているもので、様々な現場や状況、年齢、発達段階に適用可能かつ、多様な文化や障害がある人に対しても柔軟に用いることができる。
PFAの提供者には、精神保健担当者または様々な災害援助組織に所属する人々が想定されているが、特別な心理社会的な知識や経験が必要というわけではない。そのため、自分の手に負えない場合や、さらに専門的な支援を必要とする被災者に対しては、援助要請と被災者の負担を最小限にするための行動が必要となる。
『PFA実施の手引き』(2009)には、多様な年齢や背景を持つ被災者への声かけや配慮の個別具体的なやり方が付録として添付されており、「すべきこと」と「してはならないこと」を意識しつつ、被災者のニーズや不安に思っていること等に素早く応えるのに役立つ。また、役立つ情報を載せたハンドアウトを被災者が回復するまで、手元において使ってもらうことも可能である。
PFAを行うには計画と準備が重要である。対象となる人々がどんな年齢や性別、障害、文化的な背景を持っていたとしても柔軟に対応できるように、それらの多様性についてよく理解し、配慮すべきことを知っておく必要がある。また、救援者は、自分の専門領域や役割の範囲を守り、適切な紹介と引き継ぎを行うことや、対象者の尊厳、権利を尊重し、秘密の保持については厳守しなければならない。その他、介入の優先度やタイミング、目的などPFA提供の方針、救援者自身のセルフケア、起こった出来事の性質、現場の指揮命令系統・組織・安全性・資源などに関する情報についてあらかじめ知っておくために、現場に入ったらまず周囲をよく「見て」情報を収集することなどが大切である。ただし、災害の規模が大きいほど、どのようなサービスがどこで提供されるのかを正確に把握することが難しくなるし、混乱した被災者が殺到する可能性も考えられる。救援者には常に冷静な態度が求められ、不確かで曖昧な情報を伝えることは避けなくてはならない。
PFAの活動内容は主に8つに分類される。「被災者への接触・活動開始」、「安全と安心感」を与える、場の「安定化」を図る、状況把握のための「周辺情報の収集」、「現実的な問題の解決」の支援、周囲の「人々の関わりを促進」させる、自助力を高めるための「対処に役立つ情報」の提供、現在あるいは将来必要となるであろうサービスへとつなぐ「紹介と引き継ぎ」、これらの活動を被災直後から数週間以内の早期に提供することがPFAの基本目的となるため、柔軟さをもって各作業にかける時間を調節する必要がある。
最後に、トラウマ的出来事によるストレス反応が一定期間生じることは、人間の正常な反応である。人々がつながりを持つことは、安心感や希望、行動力、自己効力感などを生じさせ、辛いときに家族や友人など信頼できる他者がそばにいることは、そこから回復するための助けとなる。特に注意が必要な被災者は一人にしないように注意し、救援者においても単独行動は避け、協力体制を維持することが重要である。
参考文献
アメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワーク,アメリカ国立PTSDセンター 「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き第2版」兵庫県こころのケアセンター訳,2009年3月.
世界保健機関、戦争トラウマ財団、ワールド・ビジョン・インターナショナル. 心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)フィールド・ガイド.(2011)世界保健機関:ジュネーブ.(訳:(独)国立精神・神経医療研究センター、ケア・宮城、公益財団法人プラン・ジャパン,2012).