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利得最大の原理と公平性原理

【人間関係論】

第2課題第1設題レポート評価S

第10章課題名:自分の日常生活の中でどんな場面で利得最大の原理を強く感じ、公平性原理を強く感じるか、そして二つの欲求を自分の中でどのようにバランスをとっているのか考察せよ。

利得最大の原理

利得最大の原理とは、自分にとっての「得」や「利益」を最大にしようと努力する人間の性質である。これにより人は、金銭的な利益を目的としたり、他者から良く見られることを目的とするなど、自分の得になることを優先し、損になるようなことは避ける、といった行動を動機付けられる。

私自身、日常生活において常に自分の利得に基づいて行動しているが、対人関係において例を挙げると、他者に尽くすことで感謝され信用を得ようとしたり、困った時に他者を頼って自分の労力を減らすなどの行動をとることがある。これらの行動は、交換理論で説明されるとおり、時間や労力、金銭、気苦労などのコストを支払って、相手からの感謝や好意などの報償を得ることや、相手の価値を認めたり賞賛を送ることで、相手が持つ資源との交換を行っているといえる。あえて自ら損をするような行動をとる場合は、そうすることによって他者や社会から認められたいという欲求が、損よりも得として勝っている状況であることが考えられる。

公平性原理

公平性原理は、1対1あるいはコミュニティでの関わりにおいて、社会的規範に従い、全員の利益が公平になるように分配することで、コミュニティ全体が得る報酬を最大にすることができるという考え方である。人々が社会を繁栄させ集団の中でうまく生きていくために必要な行動原理であると考えられる。

私が公平性原理を感じる場面は、食事会などでの会計の割り勘、挨拶されたら挨拶を返す、何か恩を受けたらお返しをするなど、社会的な他者との関係性を意識している状況が挙げられる。先述した交換理論によれば、相手に何らかの報償を与える代わりに、相手からも様々な報償を得ているという、報償のやり取りが行われていると考えられる。

矛盾する利得と公平のバランス

利得最大の原理と公平性原理は、一見、矛盾した意味を含んでおり、短期的には対立するものであるが、長期的にみれば、利得を公平に与え合うことが、全体の利得に貢献するものであると考えられる。井上(1985)の研究によれば、恋愛関係において利得最大の原理と公平性原理が合成された結果、自分が少し得をする関係の時に満足度が高く、利得または損失が極端な過剰状態になると、互いの満足度は低下するということが示されている。

井上の研究では、「相手に対してどの程度尽くしているか、相手からどの程度尽くされているか」の認知による分析であった。一方で山岡(2005)によると、自分と交際相手の美点の認知と、自分と相手の欠点の許容度に焦点を置いた研究において、「恋愛関係の成立のしやすさには公平性を求め、満足度に関しては利得最大の原理に従う」と述べている。

まとめと考察

あらゆる人間関係の中でも、恋愛関係は最も自由であり親密となる可能性が高い関係といえる。これらの研究は恋愛関係に焦点を置いたものであるが、自然な友人関係の成立に関しても、多少の違いはあるかも知れないが同様なことがいえるのではないか。そして、関係の成立と維持に関しては、公平性原理に従った行動や認知が選択され、関係の維持が可能な状態では、利得最大の原理に従う行動が促進されると考えられる。この2つの原理が、自分だけではなく、相手にとってもバランスのとれた状態である場合に、良好な人間関係が築かれていくということが考えられる。

何をもって利得とするか、あるいは美点と欠点の価値観に関しても、その基準は人それぞれである。私たちは、人間関係を築き深めていくにあたり、その価値基準が合う相手を感覚的に見定めて関係を構築・維持し、生きていく中で、自らの利得を獲得していけるような関係性を求めているのだと考えられる。

参考文献

恋愛関係におけるEquity理論の検証 ja (jst.go.jp)
人間関係論 山岡重行 聖徳大学通信教育部
サイコ・ナビ心理学案内 山岡重行 黒潮社

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