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ガンプラ世代には垂涎の、ミッシングリンクへの挑戦

「知らない」という世代があっても、もう不思議はない。
40年以上も前の、大むかしのストーリーだ。
が、いまも枝葉が伸び、ときに掘り起こされて新作が生み出される。
オリジナルから14年後を舞台とする新作も封切られたところだ。

ガンダムにまつわる物語はサイドストーリーも多くあるが、とくに巧妙かつ大胆な解釈でミッシングリンクに挑戦するストーリーを紹介したい。
「機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還」だ。

野心に溢れたストーリーテリングで、なかなか読ませる。

タイトルにあるジョニー・ライデンは、エースパイロットだ。
が、オリジナルのTV放映には登場しない。
この外伝のために生み出されたキャラクターでもない。

いまもプラモデル界で一代派閥を保っている通称「ガンプラ」には、本来のストーリーに登場しない裏設定を公式自ら生み出した特異なケースがある。

商業的事情からオリジナルのTV放映終了の半年後に発売となった「ガンプラ」が売れに売れ、商品化の終わりが見える前にとバンダイの打った奇策が
「if」を公式なバリエーションとして売り出す手法だ。
これが後に常套手段として受け継がれるほど大当たりとなった。

主役級に触れない節操があったのか、当時は生みだされるバリエーションの多くが敵側のそれだった。とくに本編で「〇〇専用」と称して次々に機体を乗り継いだライバルの印象もあってか、乗り手をエースパイロットに横展開するテンプレートは抵抗なく受け入れられた。

ジョニー・ライデンも、そんな商業的背景で生まれたひとりだ。
「〇〇専用」と冠されるに過ぎなかったはずの彼は、しかし横展開の中でも安直なカラーバリエーションにおいて真紅を与えられることで、本編の登場人物に並び称されて人気を博した。

しかし生まれた時点で、すでに終わっている物語の「if」である。
後ろを揃えておく座りの良さがあったのだろう。

本編における最終決戦で、作戦行動中行方不明。
それが公式におけるジョニー・ライデンの最後だった。

しかし頸木は解かれ、いまや枝葉も伸び、ときに掘り起こして続けられる。
「if」から再構築してジョニー・ライデンを帰還させる。
このストーリーは、そんな大胆なチャレンジを骨子にしている。

驚くことに開始から10年を経て、まだジョニー・ライデンが登場しない。
それらしい人物に状況証拠が揃いながらも確証なく物語は進む。

主人公である「レッド・ウェイライン」の過去は、定かではない。

ガンダムの側で軍属していた彼は、本編の最終決戦で負傷。収容されていた病院船が被弾し、辛うじて無事だったものの救助された時点で個人を特定できるものはなかったという。が、オハイオの出身で母親も存命。
記録では、彼の小隊は壊滅寸前まで追い込まれながらも敵勢力の機動兵器を鹵獲したということになっている。
その戦闘で負傷し、病院船に収容されていたことになっている。

ウェイライン隊が鹵獲したとされる機動兵器は型式番号YMS-14Bという。
作戦行動中行方不明となっているジョニー・ライデンの乗機である。

もしかすると彼は..という証拠を揃えるようにストーリーは進む。

そこへ「if」をつなぐエッセンスが続々と加わる。
好きな方であれば、ヤザン・ゲーブルの登場などは唸るところだろう。
とんでもない大風呂敷に驚かされるところもあるが、読めばなるほど、そのくらいしておかないとオチない気もする。
本作のタイトルが英雄譚の構造を示唆するなら、旅立ち、通過儀礼を経て、帰還となるはずだ。どのように英雄として帰還するかに期待したい。

あと何年続くのか。
待ちきれなくなり放り出す方がいても不思議はない。

ただ、ガンプラに一家言ある世代であれば、つまらないということはない。
仮に途中で放り投げてしまうにしても、だ。
それだけは請け合う。

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タイトル画像は「おかのくら」様のものをお借りしました。
お仕事柄なのか、アングルが決まっている。
ありがとうございましたm(__)m

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