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【旅行】ヴェトナム紀行 1 サイゴンバイク事情
以下は2013年12月末よりヴェトナムのサイゴンに旅行に行った際の記事で、mixiに掲載したものに加筆を行った。
サイゴンに到着した翌日の朝、轟々たる音で私は目を覚ました。
ちょうど台風のような大風が吹いたときのような音で、天気予報では特に雨が降る話は聞いていなかったが、まさか台風かと思い、表通りに出て驚いた
ひっきりなしに流れるバイクの洪水という表現では陳腐に過ぎる。
ちょうどマラソン大会で出走直後のように道という道をバイクが埋めている
車2割に残りはほぼ全てバイク、時折何かの間違いのように自転車がいるという具合だ。
宿は交差点の角地近くにあるのだが、左から轟々たるバイクの集団が右折して私の目の前を流れている間、右から直行してくるバイクは交差点で一時停止しているのだが、これが完全にマラソン大会の出走直前といった風情、サイゴンはかなりの部分の道路が一方通行なので、びっしりとバイクで道が埋め尽くされており、信号が変わるや否やこれが一気に走り出す様はなかなか目の覚める思いがする。
初めは、これがサイゴンの出勤時間帯なのだろうと思っていたらとんでもない、朝から昼に変わり、夜になるまでずっとこういう調子であるからものすごいものだ。
ベトナム人はその人生をバイクの上で送っているのではないかと思うほどだ
。
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さて、バイクはたいていの場合50ccのスクーターだ。
これにアオザイの女の子が乗っていたりするのはずいぶん絵になるものだが、家族全員がスクーターで移動する風景は空気のように当たり前の光景で、3人乗りどころか最高では5人乗りというのも珍しくない。
これでは危ないに違いないと思うのは外国人の浅はかさ、私が見た限りサイゴンは交通マナーがよく、ワイルドな中にも秩序があるので女の子でも安心して道を走れるに違いない。
なお排気ガスがかなりすごいので、バイクに乗る人は大型のマスクおよびサングラスで月光仮面みたいになっている人が多く、若い女性の場合は大半が顔が見えないくらいだ。
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バイクはスクーター型のものが多いが、ホンダのカブも人気で、以前プラモで1/35のベトナム情景模型としてカブがリリースされているのを知って、おお、と思ったが、まさにその通りであった。
なお、大都市であるサイゴンに限った話なのかもしれないが、街を行くバイクはそのほとんどがピカピカに磨かれており、大事に手入れされていることがよく分かる。
中国のようにあちこち部品が欠損していたりどこかブッ壊れていたりしているバイクにムチ打って乗るというようなことはないようで、こういうあたりからもベトナム人の民族性がよく分かる。
民族性といえば、交通法規をしっかり守るということもベトナム人の特徴だろう。
サイゴンの市内はかなりの道路が一方通行だが、これを逆走する奴などいない。
当然信号もきっちり守る。
もうひとつ感心したのが、方向指示器がない車両の場合、ウィンカー代わりに手を挙げて方向指示を出す点で、これはオートバイが牽引するリアカーや、シクロ(クラシックな自転車タクシー)に至るまで徹底されている。
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また、もうひとつ感心したのが、追い越し車線で遅い車が前にいた場合、右車線(ベトナムは右側通行)から追い越すことはせず、かならずクラクションで前の車に注意を喚起し、前の車が右車線に移ってから追い越すのと、追い越した後にお礼代わりに短いクラクションを一発鳴らすことである。
ベトナムを語る場合こういう民度の高さも特筆すべきであろう。
とはいえオートバイの洪水は外国人にとってはかなりインパクトのあるもので、どうやって車道を渡ればよいのか途方にくれる人も少なくなかろう。
そういう場合は、ともかくも意を決して根性で渡るのが正解だ。
歩行者が横断している場合はバイクがよけて走るのがこちらのマナーらしい
その場合歩行者が等速直線運動で横断している場合バイクはこれを避けやすく、逆にびびって途中で立ち止まったりした場合はバイクも予測ができないのでかえって危ないのだそうだ。
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このように、見かけは大量の暴走族のように見えなくもないが、サイゴンの交通はそういう秩序が保たれているのである。
もし次回訪れることがあれば、私もバイクを借りて乗ってみたいものだ。