【模型】戦車といったらこのかたち ~トランぺッター 1/72 61式戦車~
模型の大きさがどのくらいあるかというのは割と重要なことだ。
飛行機模型だと1/48、戦車模型だと1/35がレギュラーサイズということになると思うのだけれど、このサイズで模型を作っていたらおそろしいスピードで周囲の空間を食いつくしてしまう。
そういえば最近になって強く考えるようになったのだが、「住む」ということについて様々な要素があるのだけれども、一番重要なものはカネではなくてスペースではないだろうか。
カネは稼げば再び補充することができるが、スペースは一度埋めてしまうと何かを処分しなければ二度と元には戻らない。
またワーキングスペースとストックスペースの区別をちゃんとつけないままモノをため込んだら汚屋敷へ一直線なので、住みやすい部屋を維持することは「空の空間をいかにマネジメントするか」ということに直結する問題なのだ。
それで私の場合は小さな模型ばかり作る傾向があり、戦車なら1/72、飛行機も1/72というスケールがわが家のスタンダードになっている。
このサイズに合わせておけば隣り合わせで並べても違和感がない上に、統一フォーマットのようで見ていて気持ちがよく、何より場所を食わないのでずらりと並べていても見栄えが良い。
また1/72のキットは値段も安く入手しやすいのだが、パーツ点数も少ないかといわれると実はそうでもなく、よく見たら1/35のキットをそのまま半分のサイズにしたようなものまであるので、手先を鍛えるにはなかなかいい。
ある意味作りごたえがあって、払った金額以上に楽しめるといったところだろうか。
そんなわけで、プラモに出戻ったばかりの中国時代も腕を取り戻すまではミニスケールばかり作っていた気がする。
今回はそんなリハビリで作った戦車のお話で、ミニスケール戦車を3種続けてお届けしたい。
以下2008年2月2日のmixi記事より転載加筆を行ったもの
古典的な戦車のイメージというのがある。
ああ、戦車ねえ、馬4頭立てで右に石弓を持ったのがいて遠くから制圧射撃を行って、左には戈を持った奴がすれ違いざまに相手の首をかっさらって、で後ろでは指揮官がふんぞり返ってる奴ね、そうそう春秋戦国のころよく使ったなあ、いやあ懐かしい。
などというほど私は古い人間ではない。
まあ、旧いマンガをみると出てくる戦車という奴はたいていがおわんを伏せたような砲塔を持っていてやけに背が高く、砲身の先端はT字型になっているものだ。
まあ、そういうものがかつては戦車のイメージだった。
61式戦車といえば、ちょうどその世代のものでゴジラやガメラなどではよく踏み潰されていたから意外とおなじみのものかもしれない。
なんというか不恰好で、戦後15年ぶりに日本が開発したものであるそうだが、一見アメリカのM47のパチモンのようでいて、よく見ると旧軍以来の足回りだったりするあたりが興味深い。
なんせ戦時中三式中戦車を作ってた技術陣がそのままこいつを作ったというのだからなるほどと思う。
1961年に正式採用された61式は90年代にはすべて退役してしまったので動いているのを見たことはないが、車両自体は結構あちこちで見かけたものだ。
陸自の駐屯地にはたいてい退役した車両が展示してあるもので、私が銃剣道でよくお世話になった鯖江322地区施設隊(現302施設隊)にも、もと今津の第10戦車大隊で使用していた車両が雨ざらしになっていた。
私が最初に戦車に触れたのもこの車両がおそらく初めてだろうと思うが、実物を目にすると、それまで持っていた弱々しく不恰好なイメージなどスッ飛んでしまい、堂々としたOD色の鉄の塊はなんともいえない存在感があった。
正面の装甲板もがっちりとしていて岩のように硬く重く、手でたたいたくらいでは何の音もしない。
戦車の質感とは冷たくて硬くて手で触るとペタペタという音がするものだ
そういうものを作ろうと思った。
今回作ったものはトランぺッターの1/72スケールの61式戦車で、これはなかなかすごいキットだった。
基本的に部品構成がタミヤの1/35をそのまま縮小コピーしたようなものなので、1/35のプラモをその半分のサイズで作るようなことになる。
なのでプラ素材の強度を無視して薄くなっているような個所やモールドなのかバリなのか区別のつかない部分も多く、部品整形でかなり大変なキットだが、そのせいで出来上がりは1/72とは思えない精密感が楽しめる。
そのように、元が1/35だけあってかなり細部までこだわってるキットにもかかわらず、残念なことに車載50口径機関銃の握把(グリップ)がない。
おかしいなと思って説明書を見ると、部品図はおろか完成図ですら機銃に握把がなく、単に押鉄だけがマヌケに飛び出している始末だ。
これではサマにならないし敵機が来たとき処置なしだ。
プラ棒と0.3ミリプラ版ででっち上げたが、よく考えたら50口径機銃の握把のブラケットはV字ではなくゆるいカーブのU字状であることに気がついた。
時すでに遅し、ないよりマシと思い、次回74式を作るときは気をつけよう
おなじトランペッターのキットなのでどうせ握把は省略されているに違いない。
ってなことを考えながらよくよく考えてみると、61式の車載機銃はリモコン式なので元から握把がないのだった。
うわっちゃ、オレはいったい何をやってるのだろう。
時はおりしも春節を迎える季節で、広東省特有の一切冬の備えがない環境ならではの寒さに震えながら足掛け3日でようやく組み終わったので、塗装に移ることにする。
まず下地はフラットブラックで塗りつぶしておいて、クレオスの自衛隊戦車色セットに入っている単色ODでグラデーションをかける。
自衛隊車両の外観イメージというと、つめたくてフラットな印象があり、大東亜戦争末期の3式中戦車ならいざ知らず平時の自衛隊ならば物品の管理や保全が徹底しているはずなので、そうはくたびれた感じにはならないはずだ
そういうわけで、大事に丁寧に運用してきたが塗装は退色しているというイメージで、車体上面の明度を上げて仕上げる。
下地の上にビンだしのODをざっと吹き、さらに日のあたる部分に2段階に分けてグラデーションをかけた。
次はウオッシングだが、スミ入れにせウォッシングにせよ塗料のふき取りというのがどうも苦手だった。
というのもティッシュでこするとどんなに力を抜いてもワークの表面にパルプくずがついてしまうからだが、今回ティッシュではなく平筆でやってみたところ実に調子がいい。
それも、ふき取った塗料をホウキのように掃きだすことができるので、逆にウォッシングの塗料を任意の場所にかためることもできる。
うむ、これはよい方法だ。
ウェザリングに自信がないのでほとんど汚しは行っていないが、陸自の車両については案外この方がリアルかもしれない(というのはヘタクソの言い訳)。
もっとも、香港駐留英軍にせよ中国軍にせよ、稼動中の軍用車両でクタクタにヨレた車両というのは見たことがなく、平時の軍隊ならばどこの国であれきっちり洗車とメンテナンスをするものだ。
まあ、そのうちそれっぽい汚しができるようワザを身に着けたいものだ。
そういうわけでミニスケールの陸自戦車第一弾はこうなった。
次は74式だ。
2色とはいえ迷彩を施すので、いろいろとはじめての試みがでてくるのだが、さてどうなるものか。
2023年3月5日加筆
このキットは日本ではピットロードが販売しているが、まったく同じものを中国では製造元のトランぺッターが販売していて、値段は55元だったと思うが、2008年当時の55元はだいたい700円くらいじゃなかったろうか。
とにかくものすごく精密というか、大きなキットを無理矢理1/72にスケールダウンしたものなのでいろんなところに無理がでていたので、なかなか手がかかり、おかげで基本工作の腕がかなり試されたように思う。
なおこのキットはデカールの貼り付け箇所の説明が全然なくて往生したのだけれども、多分日本でピットロードが販売している製品だと別紙カラーガイドのようなものがついているのだろう。
当時仕事のついででよく通っていた広州のプラモ屋には同じトランぺッターがリリースした61式、74式、90式というように陸自の戦車が3種揃っていて、春節休みに一気に作ろうとしたもので、その第一弾がこの昔懐かしい61式戦車、つぎのお話では74式戦車を予定しているのでおたのしみに。