2:男女関係において、"無自覚"は罪であること
「俺が沼?沼って何?」
他にお客さんの居ない韓国料理屋で、沼の自覚を持った方がいい、と彼に言うと、こう聞かれた。
私も、改めて考えてみると定義が難しいと思い、調べて画面を見せた。
「そういうのじゃなくて、沼ってどういうのだと思う?」
彼は私の考えを求める。
それは嬉しい事だった。
「この人は私にとって特別な存在なんじゃないかな、って思う事があるじゃない?そうなると沼っていくかな。私は、(笑)」
今考えると、答えになっていなかったかもしれない。
でも彼はこう言った。
「俺は結構、特別だと思ってるけどね、あなたのこと。」
私もだ。
この人は本当に沼だ。
今日は1週間ほど前から遊ぶ約束をしていた。
12時に会って、はじめに魚べいに行った。
彼は偏食で、ハマチとえんがわを3皿ずつという、変な頼み方をしていた。他にもいろいろ食べた。
私はマグロといくらの軍艦と、えび天のカリフォルニアロールを食べた。
画が可愛くて写真を撮ったら、彼は子供みたいと笑った。
次に商業施設の中にあるROUND1のボーリングに行った。
合計8ゲームもした。彼とは力の差がありすぎて、40点差を貰って賭けでゲームをした。
賭けの内容はドリンク代、クレーンゲーム代、次も私と遊べる権利、と続いていった。
熱戦だった。
ボーリングが終わったのは16時半頃だ、はしゃぎすぎて2人とも疲れた。
その後、クレーンゲームの回で負けた彼がカービィの小さいぬいぐるみを取ってくれた。
服屋と、雑貨屋を見に行った。
18時半頃、車に戻ろうとしたら、雨が降っていた。私の車だったので、迎えに来るからここで待っててと言った。
私が車の場所を遠目で探していると、彼が私のカバンをもぎ取り、コートの中に入れて、私の腕を掴んで走った。
約100m、走った。
車に入り、息の上がった2人は笑った。
カービィは助手席のサンバイザーに引っ掛けた。好きなわけではなかったが、揺れるカービィがすごく可愛かった。
あまりお腹が空いていなくて、車の中でインスタのストーリーのアーカイブを永遠と見ながら、どこに食べに行くか話した。
ラストオーダーの20分前に、近くの 古民家系 韓国料理屋さんに入った。
傘をさしてくれたから、近づいて歩いた。
お互い好きなビビンバを選んで、キムチチヂミを頼んだ。
美味しかった。量が多くて、食べ過ぎた。
彼に思いを抱いて居る子が他にも居て、ビビンバを食べている時その子の話をしていた。
最初の会話はこの時だ。
彼には沼の自覚も、その子に対する情もなかった。
それは罪だと思った。
その子と遊ぶ時にも、ペアリングをつけて行くべきだ。聞かれないから、という理由だけで、彼女が居ることを言っていない。
彼女の存在を知らないその子は悪くない、それはあなたが悪いよ…とだけ言った。
その子の存在を使って、私の気持ちを代弁してもらっているのは、私が悪いかもしれないけれど。
20時の閉店時間ギリギリに帰って、車の中で1時間以上喋った。
距離がとても近かった。
車の外は雨が降っていて車内が寒かったから、彼がコートを私の膝に掛けてくれた。
前髪似合うね、と言って頭を撫でてくれて、食べすぎて眠いと言ったらシートを少し倒してくれた。
私には情があるようだった。そう言われた訳じゃ無いが、それは分かる。
ふと、彼の右手の薬指を見る。
''なんで今日、ペアリング付けてこなかったの?''
前に会った時は付けていた。
たまたま忘れただけ、と言われるのが怖くて、聞けなかった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?