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3:振り返れば私がいること、あなたは知ってるよね。

遠距離の、彼女が帰ってくるそうだ。
彼がいつも1番に思っている彼女、一目惚れしたという彼女。
価値観が違う事実を察しながらも、5年目に突入した彼女、ぶつかりはするものの、妥協も必要だから、と言いながら付き合う彼女。


「帰ってきてる時はLINE返せないから。」

ずっと言われていた。だからわかってた。


「分かってる。せっかくの時間なんだから、邪魔しないから2人で楽しんで。」

私は都合のいい女を演じて、そう言い続けていた。


つまり電話できるのは昨日が最後の日だった、彼女が帰ってくる前の日。
毎日のようにLINEしてたのが出来なくなるんだなぁって思っていた。

明日からLINEできなくなるね。寂しいなぁ。
でも彼女、こっちで家庭教師のバイト、
リモートでやってる時間あるから

その時間はLINEできるかも。

そんなこと聞いてないのに。私はやっと彼から物理的に離れられるチャンスだったのに。

「LINE出来ないのはたしかに寂しいけど、久しぶりに会えるんだし、私のことは気にしないで。?」

控えめに断ったけど、彼は私のLINEにメモのような書き込みを残した。
【23 18:30-21:50】
【24 20:30-21:50】
おそらくバイトの時間だ。
私はこの時間を狙ってLINEをしてしまうんだろう。


この日私はひとつ、彼に打ち明けた。
ずっとひとりで悩みたくなかったこと、悪いのは私じゃなくてあなただと。

「フェアじゃない。幾ら心を許せる特別な存在でも、あなたには私じゃなくても、彼女がいるから。

なんとか、なんとか抑えてる。あなたに恋愛感情を持たないように。気持ちを持ってしまったら関係が壊れることが分かるから。」

笑いながら、真剣に言ったから涙が出そうだった。
電話越しの声で涙に気づかれてしまったら、私は隠れるところが無くなる。
顔も見ていないのに、すぐそばにいる声の感覚が辛かった。



LINEが返ってこないことは分かっているのに、何度も確認してしまう。
もう彼女がいるんだから、私とのLINEが開けるはずないのに。
やましいことをしてる訳じゃないけど、彼女が見たらきっと発狂する。私でもする。

彼女が帰ったあとすぐ、会う約束ができた。
彼は私が傍から居なくならないと分かっている。
私がそっぽを向けないと知っている。

彼がこちらを優先することは無い。それだけが事実で、悲劇だが現実だ。

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