これから半導体における日本の反撃が始まる・・・のか!?【モノ作り大国の超・復活へ!】
「半導体不足」が一般紙の記事を賑わすようになってもう数か月、普通であれば一生口にすることすらない「半導体」をいう言葉を話題にした人も多いのではないだろうか。
かつて日本の半導体は世界を席巻したが、いまや日本企業にその面影はなく、圧倒的シェアを誇るTSMCを有する「台湾」を世界各国が取り合っている状況である。
半導体はインフラ?
バイデン大統領は「半導体はこれからの世界のインフラである」と明言し、アメリカ本国での開発にも気合を入れさせている。
半導体=インフラ!?
半導体はその本質は「1」と「0」で演算をするだけのものであるが、今や身の回りのありとあらゆるもののなかに入り込んでいる。スマホ、パソコン、家電、自動車・・・
そう、現代社会はもはや半導体なしには成り立たない。現代社会の基盤となるインフラそのものであるというバイデン大統領の認識は正しい。
今や、世界が半導体を取り合い、自国開発を競っている。
凋落した日本の半導体産業
かつて、日本の半導体産業は世界を席巻していた。しかし、今や見る影もない無残な状況である。半導体需要がますます盛んになる流れの中で、非常に残念な状況となっている。
私の理解するところの日本の半導体産業の苦境を整理してみる。
・半導体は時代とともに小型・精密化しており、スマホやパソコンに使われる現在の最先端はその大きさが5ナノメートルとか3ナノメートルである。
・しかしながら、日本の半導体業界では40ナノメートル程度までしか作れない。
・半導体産業の消滅を危惧する日本は、現在の世界最大手・最先端の台湾TSMCを、三顧の礼で迎えて熊本に工場を作ってもらう。
・しかし、熊本工場で作るのは最先端の半導体ではなく、22~28ナノメートル程度のものである。(舐められてる!?)
NHKの解説記事もだいたいこんな感じ。
ただ、熊本への投資効果そのものは大きいようだ。
ということで、かつて世界の頂点に立った日本の半導体産業は、TSMCから型落ちの技術を教えてもらってリハビリをしないといけないような状態・・・こんなんでスマホやパソコンの高性能半導体業界で戦えるはずもなく、需要拡大の波に乗れない日本にはやがて「日本の半導体産業、終了のお知らせ」が来るのか・・・と思っていた。
この動画を見るまでは!
日本の半導体は復活する、その胎動ははじまっていた・・・!?
その動画というのはこれである。
ご存知の方も多いであろう「ものづくり太郎」さんの動画である。
これは本当に素晴らしい動画だと思うので、一人でも多くの日本国民に見ていただきたい。できれば理系よりも文系に見て欲しいし、中学生・高校生は全員見た方がいい。政治家や財界のリーダーは絶対に見るべきだ。
圧倒的劣勢の中から、日本独自の技術でニッチ分野を全てかっさらい、圧倒的シェアを確保するための方法論を分かりやすく説明している。辛酸をなめた日本の半導体業態の歴史も非常に分かりやすく、面白おかしく(?)解説しているので、「半導体」という言葉にアレルギー反応を示さず見てもらいたい。
狙える市場規模はTSMCの5兆円を上回る10兆円規模、巨大な経済益を日本が狙える恰好のチャンスがやってきているとのことである。ものづくり太郎さんの動画は、日本のものづくりに対する熱い想いも伝わってくる。こういう愛と熱量に溢れた動画は素晴らしい。
この動画を見れば、TSMCから技術供与を受ける「型落ちの」22~28ナノメートルの汎用性の高い半導体をあえて狙うというのも悪くない選択に思えた(自動車等のモーター制御で利用するにはこれくらいのサイズの方がむしろ良いようだ)。
苦闘の末につかみ取れそうな勝ち筋については動画を見ていただくとして、この動画で初めて知った「ミニマルファブ」というものについて少しまとめてみたい。
ミニマルファブ
日本の半導体産業復活のキーワードは「ミニマルファブ(Minimal fab)」である。関連業界ではけっこう昔から知られていたようだが、ブログ主は初めて耳にした言葉であるので、簡単にまとめてみた。
ミニマルファブとは、産業技術総合研究所が中核となって、大学や企業なども参画する「産・学・官」のプロジェクトである。
ミニマルファブを一言で言うと、「誰でもどこでもお手軽に半導体が作れる装置」ということ。
・・・ちょっと一息つこう。
改めて、「ミニマルファブとは、誰でもどこでもお手軽に半導体が作れる装置」のこと。
「??」という私自身の感想も含め、後で述べる。
もう少しコンセプトをまとめてみると、こんな感じ。
・半導体工場を作るにはクリーンルームを含む大規模な投資が必要である。
・従来の半導体工場では、パソコン用やスマホ用等の高性能半導体が大量生産されている。
・一方で、大量生産が必要のない特注の半導体も存在する(JAXAの宇宙開発用など)
・特注のものを従来の工場で作るのは極めて非効率かつコストも高い(専用ラインが必要になるため)
・そこで、特別なラインを作らず、一個一個の半導体をすぐに作れる装置を開発中である(=ミニマルファブ構想)。
・この装置の凄いところは、装置自体がクリーンルームのような役割を果たすため、クリーンルームを作ったり、特別なラインを作ったりする必要がない(わざわざ半導体工場を作る必要がない)。
・誰でも、お手軽に、1個から半導体が作成可能(従来の大量生産型ではなく、少量多品種に対応)
つまり、IoTの時代に向けて半導体も多様化していくらしいので、少量多品種の特化型半導体が必要とされる、これからの時代に合ったお手軽半導体製造装置がミニマルファブということ。
ブログ主の頭脳ではここまでしか理解できなかった・・・(^^;
いったん落ち着こう。。。
さて、どうしても半導体といえば計算機やスマホが思い浮かぶので、本当に多種多様な半導体が必要な時代が来るのか、来たとしてその市場をすべてかっさらうことができるのか、まとめていてもいまいちピンと来ないままだった。
特に、日本の場合「産・学・官」と威勢のいいことを言ってうまくいったケースの方が少ないのではないかと思うので、一抹の不安はぬぐい切れない。
ただ、中学生や高校生が3Dプリンタのノリで、自由研究レベルで半導体を作ったりすることができるようになるのだろうという未来は想像ができるし、中小企業が試作品を作ったり、各種実験を行うには優れた装置となるのだろうと思う。
下記記事のインタビューが、私がミニマルファブについて抱いた印象に最も近かった。
”確かに、半導体を作るということは、まさにプロフェッショナルの世界であった。お金がない人にはこれまで作れなかった。そして、技術のない人には手も足も出なかった。しかして、このミニマルファブを時間割のレンタルで使えば、超低コストで全くの素人のアイデアでも自分だけの半導体が作れる。これはもしかしたら、とんでもないことだ。量産設備投資の激突する世界では、残念ながら日本は後退に次ぐ後退を強いられていった。
「ミニマルファブを使って画期的なアイデアを半導体にしていく。小・中学生や文系のサラリーマンでも半導体を作り込む。それを応用した製品で世界と勝負できる。何という夢のある話だ。ニッポン半導体の復活は、ミニマルファブから始まるとさえ言ってよいだろう」” (上記記事より引用)
つまりミニマルファブ自体のイノベーションというよりは、ミニマルファブの普及によって、国民にとって半導体製造が身近になることで、新しいイノベーションを起こしやすくする環境が整う、というところだろうか。
ミニマルファブを活かすためには、国民の「理系力」アップが必須!
確かに、ミニマルファブの誕生により、新しいイノベーションは起こりやすくなるかも知れない。しかし、それを成すためには国民の理系力のアップが必須である。
「あなたもクリック一つで半導体が作れますよ!」
という時代が来るというわけなのだが、はっきり言って私もそうは言われても何をすればいいのかさっぱり分からない。素人がミニマルファブを作って一体なにができるのか、理解するにも素養が必要だろう。電力も来てない砂漠の真ん中にスパコンがあっても何もできないのと同様である。
「半導体で何ができるか?」という理解が必須である。
国民の理系力が本当の意味で上がったときに、ミニマルファブはモノづくり大国日本復活の礎となることは間違いないだろう。
従って、関係者各位には今後の技術開発の努力を期待するとともに、ぜひとも国民の理系力アップのために啓発活動にも力をいれてほしいと思う。むしろ、義務教育や大学入試の実技試験にその基礎知識を入れてもいいぐらいのことかもしれない。半導体ビジネスを起こすためのコンサルティング事業も今後、成長の余地がきっとあるだろう。
「人類補完計画」ならぬ、「理系国民補完計画」こそ、日本の明るい未来を築くのかもしれない。
まとめ
本日は日本の半導体業界が置かれている苦境、そしてそこからの大逆転の可能性についてまとめた。
中高生とか文系のビジネスマンが「今晩ちょっとミニマルファブで設計してみっか」みたいな状況になれば、日本は世界最強の技術覇権国家となるだろう。
なお、半導体製造装置関連においては、依然として日本企業のシェアが圧倒的であることは最後に記載しておく。
(画像は写真ACから引用しています)