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トランプ氏は利下げ容認だった:為替レートはどう動くか?【初心者向け:円ドルどちらがお得?】
トランプ氏は、基本的には米国製造業に有利なドル安(円高)を好むと思うが、時々によって発言がばらつき、強いドルを望むような発言をするときもある。
従って、トランプ氏がどのような為替政策を取るのか、ということについて、かなり不透明で予測が難しいところがあった。
ところが、ダホス会議でFRBの利下げを要請する場面があった。これにより、今後の為替レートの動きへの多少の見通しがたつと思われるので、記事をシェアしておく。
為替レートを動かす日米金利差
まずは、基本事項の復習をしておきたいと思う。
「金利」:いわゆる利子。貯金をするとどれだけ利子がつくか、ローンを借りるとどれだけ利子がつくか、ということに影響する。
「金利↑」:各国中央銀行は、インフレを抑制するために、金利を上げる政策をとる。インフレと好景気はイコールではないが、好景気局面では金利が上がりやすい。
「金利↓」:各国中央銀行は、インフレを促進するために、金利を下げる政策をとる。したがって、長らくデフレ環境にあった日本は、長期的にゼロ金利状態が続いていた。景気刺激的な影響がある。
「日米金利差」:日本は長らくゼロ金利(直近の政策金利0.5%)、アメリカはインフレ環境下にあったため高金利(政策金利4.25%程度)。あなたはどちらの国に、貯金しますか? 当然、円貯金よりドル貯金の方が利率が良いため、この日米金利差(0.5% VS 4.25%)では、ドル貯金が好まれる。これにより、円が売られ、ドルが買われ、円安ドル高が進行する。
これが、為替レートへの日米金利差の影響である。
マネーゲーム的には、日本でお金を借りて(ローンの利率安い)、アメリカで貯金をする(貯金の利率良い)ということをすれば、一粒で二度美味しいということになる。
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トランプ氏の利下げ促進政策は何をもたらすか?
そこで今回のトランプ氏の発言である。
トランプ氏は、FRBの利下げを促すような発言をした。型どおりに考えれば、アメリカの政策金利は下がり(例えば3.5%とか)、日本は利上げ局面に入っているので、日米金利差が縮小する方向への力が加わる。
円を売って、ドルで貯金することのうま味が減るので、円安・ドル高方向への圧力は弱まり、結果として円高・ドル安方向へ向かいやすくなる。
すなわち、米国製造業にとって有利な円高・ドル高を志向しているという、トランプ氏の好みに合致する発言になるということが読み解ける。
やはり、トランプは円高・ドル安信者なのか? だとするならば、1ドル160円くらいまでなった為替レートは、今後円高方向へ向かうと予想される。
・・・というのが、最も単純に考えた場合のシナリオである。
他方で、トランプ氏は関税をディールの材料に使うことを好む。米国が関税を引き上げれば、米国内の物価は上昇しやすくなる。すなわち、関税up→インフレ促進となりやすい。
インフレが進行すれば、庶民の暮らしがしんどくなりやすいので、中央銀行は政策金利を下げにくくなり、逆に金利を上げないといけなくなる局面も想定される。
すなわち、「利下げをしろ」というのと、「関税をかける」というのは、相反するものということになる。だから、一部でトランプはバカだ、というような論調も出てくるのだろう。
関税合戦が過熱すれば、結果として米国は金利を上げざるを得なくなり、日米金利差は拡大して、円安へ進む、という別のシナリオもあるのである。
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矛盾する政策を解消する魔法の方法
ところが、トランプ政権は、一見矛盾するこれらの問題、例えるならば解のない連立方程式を解くことができる魔法の方法を有しているのである。
それが、「(石油を)掘って、掘って、掘りまくれ!」である。
アメリカ国内にある潤沢な石油・天然ガスを、掘って、掘って、掘りまくることで、電力生産にかかるエネルギー価格が爆下がりし、これは社会のあらゆるコストを下げる方向に働く。すなわち、魔法のインフレ抑制策である。
けれども、この魔法は、環境論者の人々にとっては、禁じられた手である。CO2を削減しましょう、という世界の潮流に、真っ向から反対するからだ。
だからこそ、トランプ政権は、大統領就任当日にパリ協定からの脱退を表明したのである。禁じ手の魔法を使うためといえる。
従って、円安方向へぶれるリスクも依然としてあるが、トランプ氏のやりたいことの全体像としては、やはり円高・ドル安志向なのだと思われる。
日本のとるべき道
このような情勢下で、日本が取るべきはどういう道だろう?
トランプ氏は、今のところ日本を標的にはしていないが、今後日米貿易赤字解消のために、日本にも関税戦争をしかけてくる可能性がある。安倍晋三氏がいれば、違った流れになっただろうが、石破氏は仲良くやれないどころか攻撃されるリスクさえあると思っている。
それを回避するためには、答えは簡単である。
「アメリカの石油・天然ガスを買えばいい」。
それで、アメリカから見た対日貿易赤字は改善する方向に向かうし、日本もエネルギー価格(ガソリン価格)が下がって大喜び、さらにエネルギー価格の世界全体での押し下げは、めぐりめぐってロシアも苦しくするだろう。
間違っても、「環境脳」でトランプ氏を批判するようなことをすべきではない。流れにのれば、日本も好景気循環に入るチャンスにもなる。
まとめ
トランプ氏のダホス会議での発言から、日米の為替レートはどのように動くのかを、基本的な事項を確認しながら予想した。
基本的には、トランプ氏は円高・ドル安を好むように思える。今後、円高方向への力がかかりやすくなるが、一方で円安促進政策も含まれており、依然として断言は難しい。
私個人の投資行動としては、「短期~中期的に円高方向、中期~長期的には再び円安方向」とみているが、さてどうなることやら・・・。
日本は、アメリカの原油・天然ガスを買うことで、アメリカの好景気の恩恵を受けることができるだろう。
併せて、2025年の経済予測の記事も見ていただくと、参考になることがあると思う。