半沢直樹にあって日本政府にないもの
半沢直樹にあって、日本政府にないもの、というまるで謎かけのようなタイトルでちょっとしたエッセイを書いてみようと思った。
2020年8月の時点では旬だが、流行りものなので一年もすれば古臭く感じるようになるテーマだろう。しかし、ドラマの放送は終了しても、色褪せぬ普遍的な含蓄があるのではないかと思い、記してみる。
半沢直樹にはあって、日本政府にはないもの二つ
「半沢直樹にはあって、日本政府にはないものとときます。その心は?」
みなさんはどのような答えを思い浮かべられるだろうか?
ここでは、全く異なる次元から、二つの切り口で考えてみたいと思う。一つはこのブログならではの視点ではないかと思うが、もう一つは大方の予想の通りではないかと思うw
その①:はじめから終わりまで最大戦速!
テレビドラマ「半沢直樹」は、一話一話が濃密で、伏線や小ネタもふんだんにあって息つく暇もないテンポの速い展開となっている。
冗長なカットや、テーマソングをBGMにダラダラとしたシーンをたれ流したりはせず、次から次へと話が展開していくという点で、凡百のドラマとは一線を画する。
正直なところ、4話構成の物語を6話ぐらいにしてゆっくり描いてもよいのでは?と視聴者側に思わせるほどの高テンポである。きわめて濃密、それゆえに展開が速い。
人気ドラマ故に、予算をふんだんに使えるということはあるのだろうが、それ以上に制作側の「熱量」を感じ取ることができて、メタ的にはそれによってドラマが格上げされている感じである。次から次へと、あふれ出るアイデアをこれでもか、これでもかとぶつけてくる感覚だ。
半沢直樹は、はじめから最後まで手を抜くことなく最大戦速で駆け抜けているのである。
さて、一方の日本政府。コロナ対策やコロナ渦への経済対策を巡っては、このブログでも散々失望を記してきたが、打つ手打つ手が「遅く」、「小出し」なのである。
政府は”先手先手で対応を・・・”とか言っているが、その時点で既に現状が認識できていない。まったく先手が打てていないし、ようやく打ったかと思ったらしょぼい内容の対策ばかりだ。
初期の水際対策や経済対策では「現状で展開できる最大の戦力を迅速に!」と訴えてきたが、まったくそれができていない。まさに、半沢直樹の怒涛の展開とは真逆なのである。
その②:やられたらやり返す
さて、こちらは多くの方が予想できたかも知れないと思うが、半沢直樹のモットーに、
「やられたら、やり返す。倍返しだ!」
という有名フレーズがある。これって、国家としても実は重要なことなのではないかと、ドラマを見ながら考えていたw
あなたがある会社(会社A)のビジネスマンで、案件を他社と競合して取り合っていると仮定する。競合他社(会社B)には半沢直樹がいて、「やられたら、やり返す。倍返しだ!」と普段から言っているとする。あなたはどう思うだろうか?
実際にいたらヤバイ奴・・・と思いつつも、普段から「やられたら、やり返す。倍返しだ!」と言っている奴がいたとすると、どうしても会社Bに対しては少し気が引けてしまうのではないだろうか?
つまり、ライバル会社に半沢直樹がいる、ということ自体、他社に対する牽制になっているのである。
一方、別の会社(会社C)には、別のポリシーを持つ”ソフト半沢直樹”がいるとする。ソフト半沢のポリシーは、
「やられても、やりかえしません。専守防衛です!」
あるいは、
「やられても、やりかえしません。遺憾です!」
である。ソフト半沢のいる会社Cに、あなたは何か遠慮するだろうか?
ソフト半沢のポリシーは誠に立派で、尊敬に値するものなのかも知れない。けれども、案件を奪い合わなければならない厳しいビジネスの世界、あなた自身も生き残りをかけているのに、「ソフト半沢さん、いい人がから、この案件をどうぞ・・・」とはなかなかならないだろう。
つまり、ソフト半沢は何の牽制にもなっていないどころか、場合によっては舐められる要因にすらなるのだ。「専守防衛!」だと、こちらが何をしてもやり返してこないわけだから、あなたが性悪な敏腕ビジネスマンだったとすると、会社Cに対しては妨害工作をしたりするかも知れない。
これが、半沢直樹のいる会社Bと、ソフト半沢のいる会社Cの違いである。
つまり、「やられたら、やり返す。倍返しだ!」という信条は、倍返しをする前から一定の”抑止力”として働いているのである。
一方、「やられても、やり返しません。専守防衛です!」は、何の抑止力にもなっていないどころか、相手によっては「じゃあ、ちょっとちょっかい出したろかw」とすらなりかねない。内向きに専守防衛を強く言うことは、かえって争いを誘発しかねないこともあるという矛盾に、このドラマは思い至らせてくれるのである。
いざとなったら倍返しだぜ!と外に向かって強くいうことで、かえって平和が保たれるということもあるのかも知れない。ソフト半沢が輝く、いい人だらけの世界だったら本当にいいのだけれど・・・
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