ウクライナ戦争がもたらす未来:組み変わる世界秩序のなかで日本はどうするのか?
筆者は単なる素人の政治経済ウオッチャーであるけれども、ウクライナ情勢については、報道が増える随分まえから注目してきた。
それなりに世界のニュースにアンテナを張り、分析してきたつもりであるけれど、まさかロシアが全面戦争に踏み込むとは予想できなかった。
大義なきロシアの侵攻
ドネツク・ルガンスク州(ウクライナ東部地域)への限定的侵攻ならばありえるだろうと予想し、株式市場にも目を配ってはいたが、ロシアがここまでやるとは・・・
はっきり言って、まともとは思えない。
NATOに対して「ロシアを舐めるなよ!」というノリにしか見えず、大義がない。こんな戦争に巻き込まれるとしたら、ウクライナの人民も、もしかしたらロシアの人民も不幸だ。
ウクライナへのロシアの全面侵攻が”ありえない”理由は、「大義がない」ということ以外にも複数ある。
まず第一に、仮にウクライナを武力制圧したとして、その後をどうするつもりなのだろうか?ロシアが直接支配するのか、あるいは傀儡政権を立てるのか。いずれにせよ、今回の件でウクライナ人はロシアに明確に憎しみを持つこととなった。その禍根を持ちながら、支配を続けていくことは容易ではない。アメリカで言うところのベトナム、ソ連でいうところのアフガンの二の舞になるのではなかろうか。
第二に、ウクライナの抵抗が予想以上であった場合、ロシア軍の士気は持つのか?ウクライナ国内でかなりの苦戦を強いられた場合、プーチン大統領の求心力は低下するだろう。下手をすると、国内で開戦の責任を問われることとなるかも知れない。
第三に、ロシアの経済力は持つのか?戦争が長引いた場合もそうであるし、仮にウクライナを武力制圧したあとも治安維持に戦力を要するであろうから、かなりの戦費を消費する。外貨準備高を積み立てているという報道もあるが、
とはいえ、GDPでいえば韓国とどっこいどっこいの経済力の国が、いつまで戦費を消費し続けれるのか。
第四に、西側諸国の経済制裁による更なる経済の低迷に耐えられるのか?資源大国・農業大国であることから、「最低限、国民は食っていける」のが現状ではあるが、西側諸国との貿易なくして経済成長は望めず、今後も長期にわたり国民に貧しい生活を強いることになる。戦費の拡大を相まって、ロシアの経済的体力は持つのだろうか。さらに、記事作成の時点でSWIFTからの排除も決断されたようだ。
ということで、大義なく、得るものも少なく、失うものが多いようにみえるこの無謀な戦いを、ロシアが決断するとは思えなかった。私自身も平和ボケしているのかも知れない。
「武力による現状変更の試みはタブー」
第二次世界大戦後、少なくとも先進国間では暗黙の不文律となってきたこの秩序を、国連の常任理事国たるロシアが破壊したのだ。第二次世界大戦後の世界秩序は、今後崩壊に向かうだろう。ロシアの行動を見て、「俺らもワンチャンあるんじゃね!?」と思う独裁国家も出て来るだろう。
世界は、そんな時代へと突入していく。
激動の時代、日本はどうするべきか、世界の潮流を見失わないように独自視点でまとめてみる。
これまでの大まかな世界の流れ
「ウクライナ紛争前夜」までの世界は、米中新冷戦を基軸として、「民主主義諸国」VS「権威(独裁)主義諸国」のチーム分けが進んでいる最中であった。
「民主主義陣営」のリーダーはアメリカ、「権威(独裁)主義陣営」のリーダーは中国。日本は「民主主義陣営」のはずだがどこか無自覚で、中国に接近しようとしたりうる危なっかしさをはらんでいたww
2021年6月には「新大西洋憲章」なるものも宣言され、もしかしたら数年後には従来の国連は解体されて、新国連が誕生するのではないかと妄想したりしていた。
そんな流れのなかで、「権威(独裁)主義陣営のリーダーは俺だ!」といわんばかりの今回のロシアの暴発である。
国連安保理の中国・インドの棄権をどう見るか
国連安全保障理事会では、ロシアの非難及び武力行使の即時停止などが話し合われたが、中国・インドが棄権するという結果となった。
上で述べた、米中冷戦を基軸とした「民主主義陣営」VS「権威(けんい)主義陣営」のチーム分けが進む世界において、これはどのように解釈するべきだろうか。
まず、中国の棄権については、個人的には意外であった。おなじ「権威主義陣営」として共同戦線を張るかと思いきや、さすがに今回の暴挙を支持するのは気が引けたのか・・・いわゆる”レッドチーム”の2トップも、一蓮托生というわけではなさそうだ。
つづいて、インドの棄権には、私も含め失望した人も多いだろう。日米豪印のQUADの構成国ではあるが、完全に日米寄りというわけではないのがインドの独特のところである。ロシアとも伝統的に友好関係を結び、多くの国と等距離外交を展開するインドならではの方針であるとは思うが、大義なきものには大義がないと言える国であって欲しかった。
トランプ-安倍時代に比べると、日米ともにQUADの熱が冷めつつあるようにみえるが、その流れを加速させることになるかもしれない。ただ、QUADは21世紀の日本が繁栄を続けるための有望な枠組みの一つであると思う。アメリカのインド離れが多少は進むかも知れないが、ここは日本がしっかりとグリップを効かせて、QUADを牽引していって欲しい。まさに、日本がリーダーシップを発揮できる舞台である。このあたり、岸田政権は大いに頼りない。
そしてさらに未来を妄想する
今回のことで、例えロシアが戦争に勝ったとしても、長期的な没落は加速するだろう。国連の機能不全も明白となり、もしかしたら国連常任理事国からの追放も議論に上がるかも知れない。
第二次世界大戦後に作られた世界秩序がいよいよ組み替えられるときだ。
日本はどのように立ち回る?立ち回り方によって、戦勝国側に入れるか入れないかが変わってくる。期せずして、「戦後レジームからの脱却」がかかっている。
新大西洋憲章を発表したアメリカとイギリスは、腐っても19世紀以降世界覇権を握ってきた国だ。日米英でしっかりとタッグを組んで、ロシアや中国と対峙する覚悟を持ってこそ、日本の明るい未来が開けるのだろうと、私は思っている。
日米豪印の枠組みの重要さも言うまでもない。
今回のことで、日本が直接的な役割を果たす機会は少ないかも知れない。そかし、これら「横の連携」の要(かなめ)となれる可能性は大いにあると思う。
ともかく、戦火がこれ以上広まらないことを祈っている。
(画像は写真ACから引用しています)