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ISS(国際宇宙ステーション)、諸行無常の響きあり
ウクライナ戦争の余波で、国際宇宙ステーション(ISS)の運用停止が早まるかも知れない。
もともと2031年までの運用予定であったが、ロシアを含む合意はまだ2024年までしか得られていない。
かつて明るい未来の象徴だったISS
国際宇宙ステーション(ISS)は現在日本を含む15か国(JAXAを含む5つの宇宙機関)によって運営されているが、1998年の打ち上げ当初は、アメリカとロシアの和解の一つのシンボルのような存在でもあった。現在も、ロシアによって運営されるロシア・セグメントと、欧米諸国を中心に運営されるアメリカ・セグメントに分かれている。
2001年から2005年まで放映されたアメリカのSFシリーズ、スタートレック・エンタープライズのオープニングの映像の中で、ISSがどんどん発展していく様子が描かれていたのが印象的であった。
まさにISSは国際協調の証であり、平和的な宇宙開発のシンボルでもあった。21世紀初頭、宇宙開発は明るい未来像に満ち溢れていた。
そして2022年、現実は理想社会のようには進まず、ロシアは再びアメリカと対立し、協調的な宇宙開発からも手を引こうとしている。
ISSという観点から世界の流れを振り返ってみる
21世紀初頭といえば、アメリカが唯一の世界の超大国として君臨し、「テロとの戦い」を標榜していた時代である。ロシアはG8として西側諸国の一つに数えられ、中国の台頭はまだ先だ。
世界の大国は手を取り合って宇宙開発を平和的に行っていく、そんな楽観的な未来が想像されていたと思う。まさに”宇宙に国境はない”のだ。宇宙開発には夢が満ち溢れていた。
しかし時代は移り変わる。
2007年~2008年、サブプライムローン問題に端を発したアメリカ経済の凋落は、リーマンショックを持って世界経済の大きな節目を迎えた。アメリカは世界唯一の超大国から滑り落ち、オバマ大統領は「アメリカはもはや世界の警察ではない」と断言した。
中国は目覚ましく経済発展し、2010年には日本を抜いて世界第二位の経済大国に躍り出た。
「お金がかかりすぎる」とのことで、アメリカのスペースシャトルは2011年をもって退役し、ISSとの人の行き来はロシアのソユーズにゆだねられることとなった。
そして2014年、ロシアはクリミアに進行してG8から追放され、その後孤立化の道を歩む。力をつけた中国は単独で宇宙開発を推進し、今や宇宙空間をも支配しようとしている。
ISSはジリ貧となり、今後、宇宙開発の場は国家主導ではなく、民間主導にうつりかわっていくだろう。そんな流れの中、今後ロシアはさらに経済的に困窮しうることが見込まれている。
まさに、宇宙開発にも諸行無常の響きあり、ということである。
ISSは真の「きぼう」となるか?
日本の雀の涙のような宇宙開発予算では、ISSの主導権を取って運用を引き継ぐことは難しい・・・のは分かっているが、2009年からISSに参画し、実験棟「きぼう」を持つ日本としては、何とか運用継続のための努力をして欲しい。
世界のニュースを分析するうえではリアリストであろうと心掛けているが、宇宙開発ではせめて夢を見たい 笑
民間でなければできないこともあるだろうけれど、民間企業は基本的に営利目的の活動しかしないため、民間企業主導に代わっていくことで宇宙空間は利益獲得競争の場となっていくことが見込まれる。「国境」ができるかどうかは分からないが、「企業の私有財産」は宇宙空間に作られるだろう。
そう、国際協調でなければ到達できない未来もあるのだ。いにしえの時代より、「和を以て尊しとなす」を国是とする日本こそ、宇宙開発を主導するに相応しいと思うのであるが・・・スタートレックが描くような理想的な未来社会が訪れるように、できれば宇宙開発を引き継いでいってもらいたいものである。
”「ロシア抜き」ISS模索 高度維持で米企業活用もーNASA”
もともと、ロシア・セグメントで問題が相次いでいたという背景もある。
(画像は写真ACから引用しています)