岸田首相が米紙TIMEの表紙になった件
最近は「世界の100人」に選ばれてみたり、大統領候補の米国州知事がわざわざ会いに来たりするなど、日本国内での評価の低さと反してやたら海外で高評価されている岸田氏・・・こんどは米紙TIMEの表紙になってしまった。
なんじゃ、こりゃ?
同じく「世界の100人」に選ばれた安倍元首相ですら、TIME誌の表紙になったことがないということを考えれば、岸田氏は既に安倍氏越えしたとも言える。
日本国内での評価ももうちょっと改めた方がいいのかも知れないと思いつつも、このタイムの「真の軍事大国となることを望んでいる」という指摘についてはオイオイオイ・・・という感じなので、ちょっと紐解いてみようと思う。
これは米国の「容認」か、「警戒」か
タカ派とみなされた安倍元首相でさえ手を突っ込めなかった防衛費倍増を成し遂げ、専守防衛から一歩踏み込んだ「反撃能力」の獲得まで実現した、”ハト派のはず”の岸田氏、それゆえに、海外からはかなり意外に見えているのだろうか。
このタイム誌の「日本は真の軍事大国になることを望んでいる」という指摘には、複数の意味合いがあると思う。
まずは、「①アメリカは日本が軍事力を強化することを容認している」という意味である。
かつて日本の再軍備を恐れ、軍事のみならず経済的にもプラザ合意・半導体協定などで日本を叩き潰してきたアメリカが、「日本さん、強くなってもいいですよ」と言うのは大きな時代の変化を意味している。
もう一つの意味は、「②日本が平和主義を捨て去ったのではないかということに対する警戒」である。
アメリカにとって、中国やロシアがより優先度の高い脅威となっている現在の世界情勢であるが、それでも日本の潜在力を恐れる人々は多いだろうと思われる。
しかもつい最近まで、日本が「第二次大戦後の世界秩序」に挑戦することを、アメリカは凄く恐れていた。今回のこの記事は、アメリカ人の一部にも日本脅威の思いを呼び起こさせるかも知れない。
さらに、現在アメリカと対立を深めつつある中国・ロシアは、「第二次世界大戦の戦勝国」であるため、この「第二次世界大戦後の世界秩序」を維持したいという思惑を持っている。この利害の対立する日本ーアメリカー中国・ロシアの微妙な三角関係を頭に入れておくと、世界のニュースをより興味深く見れるのではないかと思う。
そして、日本にとって最も警戒するべきは、「③日本さん、強くなって勝手に中国と戦ってね」とアメリカから梯子を外される場合である。だから、米国の「日本ヨイショ記事」に喜んでいる場合ではないよ・・・岸田さん!
日本の取るべき道
以上を踏まえたうえで、日本が取るべき道は、「アメリカさんが言うから、しょうがないなぁ、僕たちも強くなりますよ。イヤイヤ、でも僕たち根っからの平和ボケ人種ですから、ちょっと強くなっても何もできません。アメリカさんがやっぱり頼りです。よっ、大将!」という路線だと思う。
せっかく容認してくれているので、ちゃっかり強くなりつつ、あくまでアメリカのポチとしての立場にあえて甘んじ続けるということである。(というか、ぶっちゃけ日本国に「軍事大国になる」などという根性は全くないのが真実であるけど・・・)
突出すると米国にも警戒されかねないし、梯子を外される恐れがある。焦らず、ステルス性に力を蓄えていくことが重要だ。
そういう意味では、広島G7は岸田首相にとっても、日本にとっても今後の運命の分岐点になるかもしれない。
「日本は軍事大国になりまっせ」などというメッセージを発すると、将来的に日本は危機に陥るかもしれない。
せっかく広島でやるので、日本は平和国家としての立場を改めて鮮明にした方がより戦略的な立ち振る舞いではないかと思うのだが、どうだろうか。
そういう意味でも、G7広島サミットに注目している。
(追記)本記事アップ後に、「軍事大国」見出しが差し替わったようである。
・・・というわけで、「軍事大国云々」の見出しのTIME記事はもう見れなくなるかも知れない、ということで本記事は貴重なものとなったw
(画像は写真ACから引用しています)
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