円安は真の悪か?
円安は真の悪か?
世の中では、「円安=悪」という風潮一辺倒となっている。個人的には、これは「マスコミのミスリード」だと思っている。
・円安により、輸出を主力とする大企業は軒並み大きな利益を得ている。
・円高も決して良いものではなかった。1ドル=75円の「超円高(今の貨幣価値の倍以上!)」の民主党政権時代の方が今より景況感が悪く、年越し派遣村などが話題となっていた。円高環境下で、日本企業は「高い労働力の日本」を捨てて、「安い中国や東南アジア」に投資を進めていた。
・円安により、「安い労働市場」となった日本には、半導体やAIをはじめとするハイテク企業の投資が進んでいる。日本企業の国内回帰も進んでいる。
・トランプ大統領候補も、現在のドル高水準は、米国の労働者にとってメリットがなく、これ以上の円安ドル高は容認しない、という意向を示している。
このように、円安にもメリットがあり、円高時代が必ずしも良かったわけではなく、現在の円安水準は米国にとっても厳しくなりつつある、という「ファクト」を一向に報道しないマスコミに、大きな問題がある。
そもそも、アメリカはプラザ合意以降、「日本に円安を容認しない」方針を貫いてきた。ある意味では、円安誘導は日本の悲願でもあったという側面もある。
確かに、「急激な」「行き過ぎた」円安には問題があるだろう。けれども、「現在の物価高による国民の生活苦」は、円安要因よりも、ウクライナ戦争による原油や小麦の高騰、コロナ時代の過剰流動性の高まり、の二つの大きな要因の影響も大きい。それを無視した「円安=悪」という、マスコミの短絡的な報道には、辟易する思いである。
1ドル150円を突破しました!ニューヨークではラーメン3000円です!といった「数字のみを追いかける報道」は、「今日のコロナ感染者は6000人でした」という報道を永遠と繰り返していた時代をどこか彷彿とさせる。
そんななか、自分なりに「円安=悪」と納得できる理由付けを探していたところ、下記のような解説記事を見つけたので、ここにピン止めしておく。
金融市場が実体経済よりも力を持つ環境下では、円安を無視するべきではない、という記事
私も素人の政治経済ウォッチャーなので、経済学の深遠な理論には理解が至らない部分があるものの、「私が理解する限り」の上記記事の要旨は以下の通りである(勘違いがあるかも知れませんので、実際の記事は、ぜひご自身で目を通してみてください)。
①物価指数に代表される実体経済と、資産投資によって構成される金融経済の二つがある。
②日銀(及び外国の中央銀行)は、実体経済の活性化を狙って、大規模金融緩和によるお金の供給を続けてきたが、実体経済への影響よりも、金融経済への影響の方が遥かに早くみられ、そしてそれは時にオーバーシュートする(行き過ぎる)。
③円安ドル高は、日米金利差の影響で説明されることが多い(日本の金利が安く、米国の金利が高いので、みんな日本でお金を借りて米国に投資するから)が、現在の円安水準は、日米金利差で説明できるレベルを超えて円安が進んでいる。
④その要因は、大規模金融緩和による金融経済の影響が大きいということ。日銀(及び外国の中央銀行)は、金融緩和による実体経済への影響しか考えていないので、金融経済への影響の方が遥かに大きいことを理解して、為替介入するべきだ。
・・・みなさまはどのようにお感じだろうか?
それでも、緩やかな円安は日本を救う可能性がある
「急激な円安は良くない」という点に関しては、筆者も同意するところであるが、それでも「緩やかな円安は長期的に日本を救う」と考えるのは、筆者が円安の悪魔に銀行口座を売っているからであるww
という、チェンソーマンに登場しなさそうな悪魔の冗談はさておき、「日本が相対的に貧しい国」になるのはむしろ日本を救うと考える理由は以下の通りである。
①輸出企業に恩恵。
②為替介入のドル売りによる莫大な利益。
③製造業の国内回帰・TSMCやマイクロン等外国先端企業の国内投資が進む。
この3点については、「円安最高!と叫びなさい:by円安の悪魔」において論じたところだが、本日はより長期的な4点目のメリットを指摘してみたい。
④日本の移民政策が鈍化する。
そう、「日本が相対的に貧しい国」になることで、日本に移民しようという「旨味」が減るのである。
自民党は保守政党を装いながら、経団連の言いなりとなって技能実習生という名の「移民」を促進している。移民の増加は、「安い労働力の確保」という短期的な恩恵があるものの、長期的には欧州や米国においてみられているように治安の悪化、国民の分断を生む。
日本国に貢献してくれる有能な人材の移民は大いに歓迎するべきであるが、将来的に治安悪化や国民の分断を招きかねない「奴隷的移民促進」は、いろいろな意味で良くないと思う。
しかし、円安による日本の貧困化により、この問題が軽減化される可能性があると思うのである。
日本経済にかつての勢いがないのは明らかであり、いつまでも過去の栄光にすがることは有益ではない。今は、「日本は貧しいです」というふりをして、着々と力を蓄えるフェーズだと思っている。安い日本に投資を呼び込み、製造業の国内回帰を進め、輸入依存度を減らした足腰の強いサプライチェーンを構築していく。そうすれば、力を蓄えたのちに、いずれ日はまた昇る。
そしてそもそも、米国が無制限な円安を許すわけがないので、いつか必ずこの円安は是正される。円安円安騒がずに、その恩恵を得る方法を考えた方が建設的ではないだろうか。
一方で、円安に苦しむ人々への救済は必要
一方で、円安で苦しむ人々がいることも確かである。例えば、ステーキ店や、パスタやオリーブオイルを多用するようなレストラン。外国からの輸入品をビジネスの主体としている業種は、苦しいだろう。
ここには、国は手厚く手当をするべきだ。これを機に、輸入品ではなく、国産品で賄うような業態にシフトさせていくことに補助金を組めば、国内産業の育成にもつながることになる。
困っている人々を救済しつつ、ピンチをチャンスに変えるような施策を、国には打って欲しいと思う。
・・・と、マスコミの短絡的な報道に憤りを感じ、徒然なるままに書き綴ってみたが、まあ、素人の戯言ということで、ご容赦を。
(画像は写真ACから引用しています)
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