うずくまる
あこがれに手を伸ばすことをためらう私のこと
嫌いではないけれど
後になってひもじくうずくまった夜を数えられない
みなが肩を組んでのれんをくぐる頃
乾杯も盛会も別れ際の明日への約束を交わし合う頃にも
ひとり静かにうずくまったままでいる
床を進む小さな虫を見つけて
目で追っている
ずれた眼鏡を正しくしても
視力の届かないところへ行った君をもう今は捉えられなくなっても
うごめく不明瞭な輪郭とその実体に
感謝以外の言葉と感情が見当たらない
そのように実感した時のことを忘れていない
ひもじくうずくまる夜の最期
いつもそれ以外の言葉など生じ得なかった
「かすみ」と響かせて綺麗なそれでは
足りないよと誰かが言っても
満ちていくのを感じた
もしも触れられたら
こんな感じだろうか
うずくまるから見せてもらえる
うずくまるから転がっていける