見出し画像

ドラマ『モアザンワーズ/More Than Words』感想

Amazon primeにて、
ドラマ『モアザンワーズ/More Than Words』鑑賞。

【あらすじ】
「あの青春の日々は、ときに優しく、ときに切なく、いつもはかなく輝いているーーー」
同じ高校に通う、親友だった美枝子(藤野涼子)と槙雄(青木柚)。一緒に始めたバイト先で大学生・永慈(中川大輔)と出会い、3人はつるむようになる。ある日、永慈が槙雄のことが好きだと言い出し、2人は結ばれることに。しかし周囲が交際に反対。槙雄と永慈を引き裂こうとするなか、美枝子は2人のために彼らの子どもを産むことを決意。3人の特別な関係は徐々に変化していく。そんな時、槙雄は幼なじみの朝人(兼近大樹)と偶然再会し…
4人それぞれの友情がやがて愛情へと変わる日々を切なく、繊細に紡いでいく。
ーーー

いやぁ素晴らしかった…何から何まで。
主演の青木柚くんきっかけで見始めたのだけど、これはもう、一生忘れられない作品となるでしょう…
まずは制作に携わってくださった全てのひとに、「ありがとう」。


ーーー以下、ネタバレを含みますーーー

同性愛、代理母出産といった要素が盛り込まれていたけれど、根底にあるのはすべて「ひとがひとを思う気持ち」、ただそれだけなんだと感じた。

美枝子は、異性が苦手で、幼い頃父親に“捨てられた”ことが引っかかっていて、自分を愛せないでいた。
槙雄ことマッキーは、甘え上手な典型的「陽キャ」だけど、心の中では「大人になりたい」と願っていて。
そんなふたりが一緒に始めたバイト先で出会う永慈は、ゲイという特性ゆえの生きづらさを抱えていた。

3人は意気投合し、やがてマッキーと永慈が結ばれるようになり…3人のお互いを思い合う気持ちは、友情や愛情を超えた、かけがえのないものになっていった。

第6話。永慈・マッキー・美枝子。


第5話以降、ふたりの交際に反対する永慈の父・洋介(佐々木蔵之介)の思いを知ったマッキーは、その気持ちが少しずつ揺らいでゆく。
第6話序盤、洋介から「別れてくれ」と言われた場面…それぞれの思いを知れば知るほど、誰も悪くない・ただ誰かが誰かを思ってるだけなのに、なんでこうなってしまうんだろう…と、切ない気持ちになった。

そこから、美枝子の「2人の子どもを産む。そしたら2人が別れずに済む」と言い出したのをきっかけに、段々と3人の関係性に変化が出てしまい…遂に第7話で、永慈と言い合いになったマッキーが、2人の前から姿を消してしまう。
(マッキーが1人で動物園に行くようになったのは、“ひと”との関わりに疲れ切っていたから…なのかも)

もし永慈が、父の会社を継ぐ決断を1人でしなければ
もし美枝子が、マッキーを気遣うがゆえの嘘をつかなければ
そもそも洋介の思いが、マッキーの言うように永慈に伝わっていたなら
その思いを、マッキーが知らないままだったなら…いや、せめて2人に伝えていたなら

マッキーは出て行く事なく、3人のまま一緒にいられた…かもしれない。
第7話後半の展開は、観てて久々に、胸が締め付けられるほど苦しくなった。
(これ以降のマッキーは、煙草を吸うことで、やり場のない寂しさ・言いようのない喪失感を埋め合わせていたように思うし、2人から「逃げた」自責の念による、ある種の自傷的行為にも見えた。死んだような目と相まって、印象的なシーン)

第10話。朝人と槙雄。


物語後半、荒んだ生活を送る槙雄とアパートで再会する、小学校の同級生・朝人は、ひょんなことから、槙雄と関係を持つことになる。
いっぽう永慈との子を出産した美枝子は、永慈とともに“夫婦”関係を大切にしつつ、槙雄との再会を、ずっと待ち続けていた。
朝人が美枝子の専門学校時代の同級生だったことから、3人の再会の兆しが見えるも、「会うのが怖い」と拒絶する槙雄の背中を押したのは、自身も家族との過去にとらわれていた、朝人だった。

そして遂に、マッキーは美枝子・永慈と、
5,6年ぶりに会うことになる。

言葉に表せない位にたくさんの思いが溢れながらも、あの頃の3人には、もう戻れない…
「もう戻らない日々を抱えながら、それでも生きていくしかない」
原作者の絵津鼓さんの言葉通り、当初の理想としていた幸せの形とは違うけれど、それぞれを思いながら生きていく…そんな事を想起させるラストに、胸がいっぱいになった。

ラスト、娘を連れた美枝子がマッキーとともに、鴨川沿いを歩くシーン。
季節も時間帯も違って初見じゃ気づかなかったけど、第1話で2人が出会った場所と、全く同じなのだ…!
第1話では同じ方向に向かっていた2人が、ラストでは別々の方向へ歩いていく。
別れ際、「またな」ではなく「じゃあな」と言って…

ひとは、それぞれのペースで変わってゆく。
終わらないものなんてない。
誰かと生きていくというのは、そんな真理を受け入れる事なんじゃないか…と思った。

美枝子かわいくなったなぁ…とか
マッキーはこの後どこ行くんやろ・でもきっと大丈夫や…とか
マッキーの服を抱いて泣いていた永慈が、また笑えますように…とか
朝人はきっと良いマッサージ師になるんやろな…とか
すっかり3+1人に感情移入しちゃって、現実世界に戻るのが難しそうだけど笑、現実でも少しだけ、ひとと自分に優しくなれる…といいなぁ。

永慈の妹役・山崎紘菜さんのインスタから。


モアザンワーズ、よかったです。ありがとう。


[追記]
noteに感想書いたのをきっかけに、他の方の感想を読んでみたのだけど、どれも共感できたし、新たな(特にマッキーの人物像や心情の)考察もされてあって、とてもためになりました。ありがとうございます🙇‍♂️

マッキーの家庭環境が全く描かれなかったのは自分も気になったけど、マッキーの「うちは放任主義」というのを、暗に描こうとしたのかもしれない。
結果、永慈(父が交際に反対)や美枝子(母とうまくいってない)の家との対比を想像できた。

快活で甘え上手で、人のために動けるマッキー。
きっと家族からの愛情を受けながら育てられ、放任というよりは、信頼されてきたんだろうなぁ…と思う。

…やばい。既に“ロス”だ笑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?