秋の夜長のお供に。オススメ小説3選
『書く習慣』発売1周年を記念して、著者のいしかわゆき(ゆぴ)さんによって生み出された「秋の書くテーマ」。
今回は3つ目のテーマ「秋の夜長にぴったりのおすすめ本は?」について、ぽつぽつ書いてみます。
3繋がりで、3冊ご紹介🤟
また、noteでは「#読書の秋2022」というコンテストを現在開催しているようで、こちらにも寄せる形で書いていきます!
美しき一日の終わり/有吉玉青
老齢に差し掛かった異母姉弟、美妙と秋雨。
大切な記憶が詰まった家で久しぶりに会い、これまで過ごしてきた日々を丁寧に回顧していく物語です。
この小説を読んで私がまず思ったこと、それは「日本人でよかった」。
どういうことかと言いますと、とにかく言葉選びが美しいんです。
「美妙」と「秋雨」、この2人の名前もさることながら、物語のあちこちに言葉の静謐さが感じられて。
各章のタイトルがたまらなく良い。
耳なじみのない言葉たちだけれど、過ぎていくだけの風景を確実に掬い取っている感じは伝わってくる。
どうしようもなく、心を打たれてしまう。
美妙と秋雨は、家族ではあるけれど互いに恋愛感情を抱いてしまいます。
倫理的にはタブーだと分かってはいながらも、惹かれ合ってしまうふたり。
ただ、そんなふたりをセンセーショナルに描いているわけでもなく、気持ちを静かに押し殺していくそれぞれの感情の機微を、あくまで丁寧に、美しい言葉で映しています。
人の気持ちは複雑すぎて、一言で語ることなんてできない。
ふたりの感情を、ありふれた言葉でカテゴライズすることなく丹念に描いているからこそ、「めちゃくちゃ質の高い恋愛小説」だと私は思っています。
装丁も美しい。
どことなく寂しげな感じも秋にぴったりだなあと思って、今回チョイスしてみました。
つめたいよるに/江國香織
こちら、わりと最近読んだ本です!
(さっきの『美しき一日の終わり』は読書記録アプリを遡ってみたら、読了日5年前でした…時の流れ早すぎて怖いィィ)
ただ『つめたいよるに』を購入したのは確か去年の夏頃。しばらく積読していました。
唐突にそう思った去年の夏。
短編小説であることは分かっていたから、どの作品に収録されているのか早急にググり、『つめたいよるに』に入っていることが判明。即購入。
初めて『デューク』を読んだのは、確か小学校高学年くらいのとき。
国語の教科書に載っていたので、もしかしたら同じタイミングで読んだことのある同年代の方も多いのではないかと思っています。
幼心ながら、心が震えたのを今でも覚えています。
大人になってからも、「『デューク』、良かったよなぁ〜〜また読みたいなぁ〜〜」とは事あるごとに思っていたのですが、日々のあれこれにかまけて、つい記憶のポケットの中にしまい込んでしまっていました。
再三なる衝動「デューク読みたい!」に駆られてやっと行動を起こした去年。
しかしそれからしばらく寝かせてしまい、ようやく1年の時を経て、先月ページをめくりました。お待たせしてごめんなさい。(誰への謝罪だろう)
久々に読んだ『デューク』も、やっぱり素晴らしかった。
デュークとは、主人公の愛犬の名前です。溺愛していたデュークが、ある日亡くなってしまうんですね。
喪失の物語ではあるんですけど、同時にあたたかくて、きゅんともさせられて。
あの短い物語の中に、哀しみも愛しさも同じだけ詰め込んでいるのが圧巻。
『つめたいよるに』に収録されている他の短編作品もとても良きでした。
どれもお話としてはかなり短めなので、夜寝る前にサクッと読むにはとても適していると思います。毎晩1話ずつ読み進められちゃう手軽さ。
デューク以外だと、個人的には『晴れた空の下で』がお気に入り。
暗いところで待ち合わせ/乙一
オススメ本として以前から見かけたことのある作品ではあったのですが、図書館の書架で手に取ってみてはそっと棚に戻し、ということを実は何度か繰り返していました。
↑のAmazonリンクを一目見るだけでも分かるかと思いますが、装丁がちょっと不気味。
なんならタイトルもちょっと怖い。
だからしばらく「読まず嫌い(読まず避け)」してた作品でした。
でもやっぱり気になって、怖いもの見たさみたいな気持ちで読み始めたら、ページをめくる手がまあ止まらない…!
殺人容疑をかけられた男が、目の見えない女性の家に忍び込んで潜伏する話…ってここだけ聞くとまだ怖いんですけど、徐々に分かってきます。これは怖い話でもなんでもない。
ゆっくりと距離を縮めていくふたりの様子に、心がほろりと温かくなって。
偶然のようで、偶然じゃない出会い。出会うべくして出会ったふたり。
これまで自分の殻に閉じこもって生きてきた人たちの世界がゆっくりと開けていく予感に、言葉にならない感動を覚えました。
ミチルとアキヒロの未来には、きっと色彩が溢れてる。私は、そう信じています。
これまで読んだ本の中で、第一印象と中身のギャップがダントツで大きかった作品と言っていいでしょう。
感想文的なものって昔からあんまり得意じゃないのですが、曲がりなりにもライターを名乗っている以上、ニガテだニガテだとも言ってられない。
うんうん唸りつつ、なんとか書いてみました。
学生時代と比べると、読書ペースがとてつもなくのんびりになってしまっている今日この頃。
素敵な言葉たちにもっともっと出会うためにも、読書習慣は腐らせたくない…!
自戒をこめて。
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