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隣の芝生は青い?CXOの悩みは尽きないスタートアップのリアル
「SPEED UP!START-UP!」をコンセプトに、スタートアップのCXO層やアドバイザーが経営の失敗やノウハウ、メソッドの共有をしあうCXOコミュニティ「Startup CXO Meeting 柏の葉」。
各社NDA締結のもとに完全非公開で開催する「CXO Meeting」では、参加者の実体験や現在進行形でぶつかっている課題などが赤裸々に語られます。
今回の特別アドバイザーは、AIスタートアップの株式会社トリプルアイズ CFO 加藤慶さんです。
加藤さんは、様々なスタートアップに監査法人やCVCの立場として関わり、その後、数社のスタートアップを経て、2022年、トリプルアイズをCFOとしてグロース市場へ上場に導きました。ちょうどその頃はスタートアップバブルが崩壊し、上場取り消しが相次いだことは、多くの人の記憶に刻まれているのではないでしょうか。同社も影響を受け、2022年2月に上場を取り消し、その後5月に上場を果たしています。
また、今回は現在進行中として、様々な事情により組織の整理を進めている匿名のスタートアップも参加。
事業継続に必要な、お金、人、チームについて、生々しくも深いディスカッションが展開されました。
経営を左右する株主の顔、見えてますか?
スタートアップといえば、赤字にどう向き合うかは誰もが通る道です。特にまだ事業が立ち上がらないアーリー期の企業においてはそれが当たり前。だからこそ事業を継続させるために必要なお金を資金調達しているわけですが、当然その結果として、株主は増えていきます。
そこで注意しなければいけないのは、誰を仲間に迎えるか。これまでのCXOMeetingでも話されてきたテーマです。とはいえ、資金調達をするたびに株主が増えていくわけで、気が付けば顔の見えない株主が出てくることも。お金を出してくれる人=スタートアップにとっていい人、ではないのは自明かもしれませんが、余裕のない時にはつい目の前のお金が欲しくなってしまうもの。まだ資本政策を考えきれていないシード期からエンジェル投資家を入れすぎてしまったスタートアップもいますよね。
事業の大事な意思決定をする時に、そういった見えない株主対策をどうしていくかは、経営の手腕が問われることとなります。実際、経営状況が芳しくない中で株主や金融機関と交渉することもあるわけで、むしろその方が多いかもしれません。そういった時はどう進めるのが良いか、などについても話がされ、「悪い数字はできるだけ早く、まとめて出す」といったアドバイスもあがりました。確かに、小さなダメージを小出しに事後報告されると、例え何か対策をしていたとしても、側からみれば本当に大丈夫?と不安に思ってしまいます。一方、大きなダメージが予測されうる段階で対応策と合わせて報告・共有される方が、まずは任せてみようと思えますよね。また、報告する側も、される側も、その都度の報告に時間を割くこともなく、話すべきことの論点もクリアになります。
また、例え株主の顔が見えていたとしても、特定の大きな株主がいる場合は、そこから梯子を外されるリスクも当然あります。NDA必須のもと話されているので記事で公開はできませんが、それにより苦労したという生々しい話も展開されました。
そしてIPOをすれば当然顔の見えない株主が増えるので、IR(インベスターリレーションズ)が必要となってくるのです。
スタートアップの成長戦略におけるM&Aとは
事業成長に向けて、はたまた収益体制改善に向けて、赤字でありながらもM&Aをする(されるのではない)ために資金調達をしたい、そんな無茶な要望を聞き入れてくれるスタートアップに理解のある金融機関はどこか。そういった具体的な話も共有されました。
一見、事業上のつながりが見えない飛地のM&Aであったとしても、その企業がつながっている営業先を仕入れるためのルート買であったり、自社テクノロジーを投入することで改革に繋げられる事業かもしれない、といった視点で見ることで、思いもよらなかったM&Aによる事業の成長加速が実現するかもしれません。
また、反対に、スタートアップが大企業にM&Aされた場合、親会社から送られてくる人材の良し悪しが、事業に大きく影響するので気をつけよう、といったことも話されました。大企業とスタートアップでは基本的にはカルチャーが違うことが前提であり、親会社に染まっていくのではなく、スタートアップとしてのよさ(スピードや判断力など)を活かせる環境を維持しつつ、親会社のアセットをどう活かせるかが重要になります。
採用して気がついた、リファラル採用の落とし穴
さらに話題はチームのことへ広がり、テーマはリファラル採用に。
強いチームを作るには、一緒に働く人の経験、知識、スキルだけでなく、人柄やカルチャーマッチも大事です。特に、少ない人数で加速的な成長を目指すスタートアップでは、チームの重要性は誰もが知っているところ。そこで、バックグラウンドなどを知っている人のリファラル採用を重視するスタートアップも多いですよね。でも、過去のイメージでリファラル採用したものの、何かしらの価値観の違いで組織をかき乱すだけで働かない人材が生まれてしまったといった失敗談が共有されました。
つまり、過去に一緒に働いたことがあったとしても、3年のブランクがあると人は変わっているということ。確かに3年くらい経つと、働き方やキャリアに臨むことの価値観も変わることは多いはず。例えば、30代でバリバリと働いていたが、40代に入り役職は欲しいがもう少し落ち着いた仕事の仕方をしたいと思う人もいるかもしれません。一方で、20代でまだ若手新人だったが数年たち、よりビジネススキルが磨かれているなんてことも。
リファラル採用する場合は、一緒に働いてからどのくらいのブランクがあるのか、そして今その人の仕事へのモチベーションはどうなのか、といったことなどを改めて確認していくことが重要そうです。
スタートアップ経営、新たにわかった法則とは?
今回見えてきたことは、下記のようなポイントでした。
経営の悪い数字はできるだけ早く、まとめて出そう(小出しにしない)
M&Aをする場合、既存事業の延長ではない飛地にも考えを広げてみよう
リファラル採用、一緒に働いた時期からのブランクに要注意。今の仕事へのモチベーションを見極めよう
個々の企業がぶつかる、経営のハードシングス。隣の芝生は青く見えがちですが、実際はどの企業も、本当に厳しい壁にぶつかりながら、かろうじて生き延びているのかもしれない。そういったスタートアップの厳しい世界を、ビシビシと肌身に感じる会となりました。
でも、何故かみんな笑いながら話している。どんな状況であっても前を向き続けているCXOたち。お互いがお互いのメンターであり、双方に鼓舞され、学び合い、励まし合い、競い合う、それがCXO Meetingの良さであることを感じています。
ぜひ、このコミュニティ興味のある方は、こちら(cxomtg@storydesign-h.com)までご連絡ください!次回もお楽しみに!
(運営・執筆 Story Design house)