資源・エネルギー2(石炭)
石炭は化石燃料の1つで、植物が腐敗分解する前に地熱や地圧などを受けて変質したものです。主に火力発電や製鉄などの用途で使われます。石油が普及する前までは、もっとも重要な資源であり「黒いダイヤモンド」とも言われていました。環境への配慮から使用削減している国ある一方で世界需要はまだまだ増えているのが現状です。石炭の埋蔵量、生産量、消費量そして取引の様子をみてみましょう。
石炭の埋蔵量
石炭の埋蔵量のデータはこちらからもらいました。
世界の石炭分布
石炭の分布を地域別に見てみると、アジア、ヨーロッパ、北アメリカに埋蔵量が多く、アフリカと南アメリカは少ないことがわかりますが、石油に比べると地域的な偏りはそれほど大きくありません。
南アメリカ、南アフリカは、ともに埋蔵量が少ないですね。
南アメリカはもともと石炭の埋蔵量が少ない地域です。ブラジルは農鉱工業の盛んなすごい国ですが、無いものが2つあります。それは、小麦と石炭です。共通テスト対策としてこのポイントは押さえておきましょう。
一方でアフリカは、まだ未開発のため発見されていない石炭がたくさんあると言われています。そのため今後、埋蔵量が増えてくる余地はあります。
国ごとの分布は?
国ごとの埋蔵量は以下のとおりです。
石炭は、古期造山帯に多く分布しています。アメリカでは古期造山帯のアパラチア山脈にアメリカ最大の炭田があります。
古期造山帯は浸食を受けているので、石炭のある層が露出していれば採掘コストの安い露天掘りで採掘が可能となります。坑内掘りをしていた日本がコストで負けるのは容易に想像できます。
しかし古期造山帯に必ず石炭があるわけではありません。ロシアのウラル山脈は古期造山帯の親分みたいなものですが、ここでは石炭は採れません。
石炭の生産量
石炭の生産量のデータはこちらからもらいました。
生産量の世界合計を見ると1980年代に急増しています。
石炭の生産量を、国の所得別にみると・・・
生産量の推移を国ごとに所得の高低で分けてみると以下のようになります。
高所得国の石炭の生産量は横ばいから微減、一方で1960~1980年代から中所得国での生産が上がっています。かつては西ヨーロッパ諸国やアメリカ、日本などの工業国で、エネルギー源として多くの石炭が採掘されていました。しかし西ヨーロッパと日本では、価格の安い輸入石油に置き換えられ、石炭の生産が急速に減少します。この石炭から石油への転換をエネルギー革命と言います。
石炭生産の多い国は?
国ごとに見てみると、現在は世界生産量のほとんどが中国です。
生産と消費の関係を次の章でみてみます。
石炭の消費量
消費量のデータはこちらからもらいました。
年ごとの石炭消費量の推移
石炭は石油に比べると取引量が少なく、地産地消の傾向が強い鉱物であるため、年ごとの消費量の推移も、生産量の推移と同じカーブをたどっています。
国別に見てみると・・・
やはり中国が2000年代から一気に上がっていますね。
2021年の国別の石炭消費量は以下のとおりです。
現在の石炭消費のほとんどが中国であることがわかります。国内生産のほとんどを国内消費しているということです。中国では主に製鉄業に石炭が使われています。
中国は、経済発展に伴い、2000年代から石炭消費が急増しています。現在では世界の石炭消費量のほとんどが中国です。
石炭は石油に置き換わって来てはいますが、依然として一定量の消費量を保っています。これは1980年代の第二次石油ショックの影響もあります。発電のために用いられる石炭消費は石油や原子力などに転換されてきましたが、そのころに第二次石油ショック以降石油の代替として石炭火力発電所の新設や増設が行われたためです。この石炭火力発電所が今も一定数稼働しています。
石炭の輸出入
最後に石油の取引の状況を簡単に見ておきましょう。
まずは輸出から。データはこちらからです。
インドネシア、オーストラリア、ロシア、南アフリカと続きます。
続いて輸入です。データはこちらから。
中国、インドは生産量でもトップの国ですが、それでも自国消費量を賄いきれず、さらに輸入しています。日本は世界3位の石炭輸入国です。
SASプログラム
今回作成したSASプログラムです。
SGPLOTでlineattrs=(thickness=数字)とすることでグラフの線の太さを太くすると見やすくなりますね。
まとめ
石炭は石油に比べると地域ごとの偏りが大きくないですが、生産コストの面から生産国が偏っており、また内需されることが多いのが特徴です。
また、環境問題のところでも触れようと思いますが、化石燃料の使用は大気汚染を引き起こします。化石燃料の使用によって発生する二酸化炭素は地球温暖化を引き起こし、また石炭に含まれている硫黄から発生する硫黄酸化物は酸性雨の原因にもなります。なお日本は石炭使用量が多いですが、脱硫技術が特に進んでおり、硫黄酸化物の排出量はかなり抑えられています。