記録的な残暑の中に見つけた秋の景色 数学好きが学ぶ俳句の世界:さまざまな「切れ」の形
数学好きの筆者が俳句の世界に足を踏み込んで、はや十か月。日に日に成長を実感しています。
前々回、前回と筆者の句を紹介しながら、ちょっとした解説を試みてきました。
今回は記録的な残暑の中に見つけた秋の景色を詠み込んで、さらに「切れ」の形についても解説していきたいと思います。
俳句における切れとは、意味上の区切りを印象付けるために設けられる文法的な技法です。
十七音で風景を的確に伝えるためには、ぜひとも身につけておきたいのですが、日常で使う文章とは勝手が違うのでなかなか苦労するところです。
切れで典型的なのは「や」・「かな」・「けり」といった特別な働きをする切れ字を使うことですが、それ以外にも切れを作る方法は存在します。
今回はそのようなさまざまな切れの形を紹介したいと思います。読者の皆様が句作りの参考になれば幸いです。
まずは、前回掲載できなかった夏の句から。
この句は、晩夏の季語である向日葵がビルの影に隠れて一回り小さな花を咲かせている光景を詠みました。
「小さし」と形容詞の終止形で切れを作っています。
このように文法的につながらない活用形を入れることで、読者に余情を与えることができます。これが切れの効果。
別の例を見てみましょう。
今朝の秋とはいわゆる立秋のことで今年は八月八日でした。
まだまだ夏真っ盛りのような気がしますが、良く観察してみると秋の気配が見え隠れします。
その代表的なものが風であって、筆者もたまたま立秋の日に風を感じることが出来たので、それを句にしてみました。
この句も「風あり」のところで切れを入れているのです。
残暑の中でも、澄んだ秋の空はとても心地よい気持ちになります。「天高く馬肥ゆる秋」とはよく言ったものですね。
「背荷物を前に抱えて~」は公共交通機関のアナウンスで最近よく聞かれる文言です。リュックを前に抱えた時にふと窓の外を見たら、空が澄んでいた。そんな筆者の体験を句にしました。
接続助詞「て」が切れの役割を果たしています。
百舌鳥(鵙、もず)は秋になると鋭い声を発するようになります。
そんな鵙の声があちこちから聞こえてくる日和には、すれ違う人と挨拶するのも軽やかになる。この句は、そんな情景を詠んでみたものです。
ここでは、「軽やか」と名詞の体言止めで切れを表現しています。
このように、一概に切れといってもさまざまな方法があることが分かります。
切れが使えるようになると、俳句で表現できることがぐんと増えるのでぜひとも習得していって欲しいと思います。
最後に、秋の風情を詠んだ句をもう一句だけ紹介して終えたいと思います。
銀杏(いちょう)散るが晩秋の季語になっています。
大学の構内で、ゼミの学生が議論を交わしている姿を詠んでみたのですが、いかがでしょうか?
以上、筆者の句の紹介でした。ありがとうございました。
追記