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『HEARTS』One Minute Literature 第四号

 こんばんは。ウサギノヴィッチです。
 今回もあなたの貴重な一分をいただきます。

 今回は掌編の小説を書いてみました。よかったら読んでみてください。
 それではどうぞ。

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 最後の白い鳥はなにを餌に生き延びているのだろうか。他の鳥より小さく見える。鳥たちは新月の青い海を確かめるように泳ぐように飛んでいる。そんな、白い鳥はあたしと一緒で他人か見れば、そう見えるのかもしれない。
 ──はぐれもの。
 小さく呟いた。なにがあったわけではない、いや、なにがあったからあたしこの町かから去るのだ。なんてメンタルが弱いのだろうか。バスターミナルはバス停と一緒になっていて、高速バスが来なければスターバックスで待っていればよい。どこかに行く人や来る人、だれかを待つ人がちらほらいた。みんなこれからやってくる始発の深夜バスを待っているのだろう。早朝にもうかかわらず、町は動き始めているのである。
 あたしは捨てたいものがある。この町に置いていきたいものがある。あたしは服飾関係の仕事がしたかった。でも、こんな町にはできない。でも、好きな人がいた。天秤にかけたときに自分の夢の方が大事だった。その人とどうしても絶対に一緒に居たいという気分にはなれなかった。
 ──あんないい男滅多にいないんだから、結婚すればいいのに。
 女友達がもったいないと言った。でも、あたしには、彼との間で、ちょっとした齟齬があった。彼との趣味も違って無理やり合わせていた。あたしの方が彼に合わせていた感があった。彼もミュージシャンになりたい夢があった。でも、一向にこの町から出ようはしなかった。彼に上昇志向があるのかないのかわからなかった。それがもどかしかった。地元のライブハウスでは有名になりつつあったが、インディーズの事務所に入ることもなく自主製作したCDを売っていた。それも多売薄利の状態で、とりあえず地元で有名になりたいというのが目標だったらしい。
 最初、あたしはそれを応援していたが、段々彼のやっていることに矛盾を感じるようになってきた。そんなことするなら、街に出てライブハウスでいっぱい出ればいいのではないだろうか。町で細々と活動なんてしていないで、街で大胆に活動した方がいいに決まっている。
 あたしは彼に一回彼に質問したことがある。
 ──だって、地方から発信されるミュージシャンってなんかカッコイイじゃん。ご当地アイドルじゃないけど、そういうミュージシャンがいてもいいんじゃないかなと俺は思うんだよね。
 屁理屈のようにも聞こえた。自分とこの人との関係はもう長くはないと思った。
 この話をした後、そのときは怒りが収まらなかった。彼の言っていることが子供のいいわけように感じた。その日、本当は彼の家に泊まるはずだったけれども、帰ってきてしまった。今考えると自分の沸点が低かったのかもしれない。自分のことと彼のことを重ねて考えていたのかもしれない。
 今、もう彼のことを許そうと思うえば、許せるのに。もう彼の姿はない。
 高速バスがやってきて、あたしの目の前で止まった。あたしは荷物を持って乗車する準備を始めた。キャリーケースを荷台に預けて、座席に座ったときに窓から景色はどこか嘘のようなフィルターがかかった景色だった。もう、ここにあたしの居場所はないんだと思った。それで気分が一新されて、あたしは窓のカーテンを閉めた。
 バスがクラクションが鳴り、バスが動きだした。

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いかがでしたでしょうか。感想などありましたら、コメントやTwitterなどでツイートとしていただけると嬉しいです。

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