今年読んだ本のまとめ(Pさん)

 だいたいが「目がテン!」にまとめたので詳述しない。また、「崩れかけのラジオ」でも取り上げたもので、ほとんど今年触れた本は終わりになると思う。けれども、読んだ本と読みかけた本のまとめをしておこうと思う。

いとうせいこう「南島小説二題: いとうせいこうレトロスペクティブ」(目)
ヴァージニア ウルフ「病むことについて 」(目)
吉田 健一「英語と英国と英国人」(目)
ヴァージニア ウルフ「エッセイ集 女性にとっての職業」(目)
オルテガ・イ ガセット「大衆の反逆」
ナオミ・クライン「楽園をめぐる闘い: 災害資本主義者に立ち向かうプエルトリコ」
フェリックス ガタリ「三つのエコロジー」
金子 薫「双子は驢馬に跨がって」(ラ)
保坂 和志「ハレルヤ」
ウィリアム・モリス「民衆の芸術 」(目)
川上 未映子「ヘヴン」(目)
サミュエル・ベケット「また終わるために」
遠野遥「破局」(ラ)
フェリックス ガタリ,アントニオ ネグリ「自由の新たな空間」
グカ・ハン「砂漠が街に入りこんだ日」(ラ)
ジャンバッティスタ ヴィーコ「学問の方法 」(目)
中沢 新一「熊を夢見る」(目)
アラン・ロブ=グリエ「消しゴム」(ラ)
砂川 文次「臆病な都市」
岡本 源太「ジョルダーノ・ブルーノの哲学―生の多様性へ」(目)
コルネーリウス・タキトゥス「ゲルマーニア」
キケロー「友情について 」

 以上、22冊。(ラ)=崩れかけのラジオの読書会、(目)=目がテン!。
 どちらにも取り上げていないのは、思想系だったりして説明しづらいものだったり、あるいはあんまり興が乗らなかったりしたもの。
 保坂和志と、ベケットは、僕の小説の書き方の根幹にかかわる。それゆえ、評するということがしづらい。
「ハレルヤ」には、作者の意図によって、「生きる歓び」という中編が、再掲されている。結構前に単行本が出て、それから確か中公文庫で文庫化もされていたはず。あんまりこういうこともないけれども、表題作がやはり、猫の死を描いていることから、必然だと思ったのだろう。猫の死を前にして、残り少ない時間をむしろ大事にする気持ちになって楽しくなったといった内容だった気がする。
 ベケットの「また終わるために」は、やはり、ベケットの小説を読んだという以外に、表現しようがない。あの同語反復のような空間、何が起きているかということが起きていない空間。語れば語るほど思想用語みたいになってきて、嫌になる。
 今年、二つのフェリックス・ガタリの本と、二つのトニ・ネグリの本を読んだ。一つは、フェリックス・ガタリとトニ・ネグリによって書かれた。資本主義に対抗するための、分散的な策略、という話を共通してしている。その際に、芸術というものが、良い道具になるらしい。そんなことくらいしかわからなかった。

 オルテガという人の、「大衆の反逆」は、あんまり感心する作りではなかった。大衆、と言っているのに、何だか選民思想、白人主義みたいなものが端々から滲んでいるように感じた。そう感じられたのは、ヴァージニア・ウルフの「斜塔」を読んだからだったかもしれない。
 ナオミ・クラインの「楽園をめぐる闘い」は、今年一番の読書だったかもしれない。砂川文次とキケロは、あんまり良くなかった。砂川文次のは、途中まで出来上がった新人作家の作品を、コロナ禍があったから急いで仕上げさせたという感じに見えた。
 ヴィーコ以降は、少しペースを上げて読めたので、今年も後半に差し掛かってからようやくエンジンが乗り始めたという感じがある。
 来年こそは、というかいつからでも構わないが、自分の中心にある読書をしなければならない。

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