Pさんの目がテン! Vol.25 「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」を見た(Pさん)
映画の話題ばかりで恐縮だけれども、先日のテリー・ジョーンズの訃報がきっかけとなって思い出したモンティ・パイソンのメンバーであるテリー・ギリアムが長年企画しては頓挫していた当作が公開されているというので、見てみた。
テリー・ギリアムは、もともとはモンティ・パイソンのイラストレーターとしてしか知らなかった。前に話題に出した、「フライング・サーカス」のオープニングで全てを踏み潰す足が最も有名で、カットの途中で脈絡なく挟まれるシュールなアニメーション、特に「ホーリー・グレイル」では巻物に書かれているような書体と絵柄がマッチしていた。
監督作品では、ローズ・イン・タイドランドを見たことがある。一番有名なのは21モンキーズと未来世紀ブラジルだろうか。未来世紀ブラジルも見たことがあった。
ことあるごとに、新聞紙にまみれていつの間にか人が消えているシーンを思い出す。
笑いはもちろんあるのかもしれないが、それよりも幾らかのタブーに踏み込んだ時の気まずさや、不条理感が先に立つ。トーンとしてはそんな感じがする。当作は、ドン・キホーテの映画を撮っている新人監督が出てくるけれども、映画の撮影はほとんど進まないで頓挫し、本物のドン・キホーテじみた狂った老人が出てきて、現代の設定なのに荒野ばかりが広がって、馬に乗って移動している。
常に二重、三重の現実の中を彷徨するような感じに包まれているのだが、全体はドン・キホーテという、あの一つのテキストに貫かれて話が進む。
ああいう狂気の体系は、もう今だと通じないところもあるのかもしれないが、道具としての狂気である。父祖的に継がれる、受け渡される剣としての狂気とでもいえばいいんだろうか。
ドン・キホーテを騙して周りで笑っている連中は、原作でも出てくるのかもしれないけれども、いつの時代でも胸くその悪いものだと思い知らされた。
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