聴いた曲を紹介する日記(2023年6月15日)第96回:映画「機動警察パトレイバー 2 the Movie」より「Wyvern」/川井憲次
映画「機動警察パトレイバー 2 the Movie」より「Wyvern」/川井憲次
1993年に公開されたアニメーション映画「機動警察パトレイバー 2 the Movie」は、自分が劇伴作曲家「川井憲次」をおそらく初めて認識した作品(自分が初めて見たのは、アニメやサブカルに熱心なオタクでコレクターだった親戚のおじさんの家でビデオを見せてもらった時なので、映画館では見ていない世代だけど、映画はもう30年前!)。
押井守監督による作品そのものも素晴らしかったけど、劇伴の「重さ」の凄みが、作品の重要な要素であったのは間違いない。
その中から今回取り上げる一曲「Wyvern」は、作品序盤、横浜ベイブリッジが爆破される事件が起き、その爆破は自衛隊機の爆撃によるものである……という報道が出たことで「自衛隊の中にテロリストの息のかかった人間がいるかも……」と、誰もが疑心暗鬼になった直後に、防空レーダーが三沢基地から首都東京に向けて連絡も報告もなく飛行する爆装した自衛隊の戦闘攻撃機(コールサイン「ワイバーン」)を捕捉、東京上空に到達するのは約20分後、百里基地と小松基地から要撃機が上がるが……という緊迫したシーンで流れる曲。
作品未視聴の人にはぜひ見てほしいので具体的なネタバレになるようなことは書かないけど、 このあと、画面上の描写は基本的にレーダー上の情報と各現場の台詞のやり取りのみで、このシーンが終わるまで「アニメーション」としての派手なアクションシーンはほぼ無いのに、緊迫感がえげつない。
リアリティを感じさせる演出の凄みに劇伴の凄みが加わって、このシーンは何度観ても息を止めて見入ってしまう。
初めて見た時は全てを理解するのは難しかったけど、大人になってから改めて見て、この緊張感が、単なる「戦争におけるやるかやられるか」だけではなく、仮に日本が戦争状態に突入した時に「日本の自衛隊は敵を撃てるのか」という専守防衛の問題や、「アメリカや他国がどの程度、どういう形で介入してくるのか」という安全保障の問題、そして「そもそも日本人は戦争状態に入ったことを認識、自覚して対応できるのか」という本質を描くことで生み出されている点、それを1993年に描いている点が理解できてからは、ますますこの作品が好きになったし、凄すぎて怖くもなった。
本作のあと、実写もアニメも含めて、本作に影響を受けたと思われる作品は沢山あったという認識だけど、後発作品含めても最高のシーン、演出だと思う。