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#4_2 AKB48のマーケティング分析記事が面白いから紹介したい

2021/7/3に「本気で遊ぼう、音楽で」を掲げるEVENINGさんからこのような記事が出た。

※もしリンクが切れてた場合は最後に記事内容のコピペがあります。

アーティストの分析もかなり面白い記事が多い媒体であるが、今回AKBを「競争市場」「コンセプトの明確化」「物語性」「管理問題」から分析している。
今回はこの記事をもとに記事を書いていきたい。

競争市場

【要約】
AKBは常にメンバー間の競争がある。この競争がメンバーの意識を高め、物語性を作ってきた。またその白熱が課金を促進させる。
一方で競争の不透明性(ファンと運営の情報の非対称性)がある。特にシングル表題曲の選抜は競争構造を作ったからこその反感を抱かれる結果になった。

これは記事にも書かれていた「握手会」「総選挙」など、わかりやすい形でメンバーの人気を可視化した。
この可視化は「金を積めば人気に見せれる」というかなり単純な構造だっただけに、よりお金を払うモチベーションを高める結果になったといえる。

ただ正直な話をすると、この競争は金儲けに役立ったことはもちろん認めるものの、それ以上にメンバーの意識向上の面で大きく役立ったといえる。
目に見える形で人気、結果がでてくるため、「もっと歌やダンスが上手くなりたい」「もっとSNSで発信したい」「もっと握手会で楽しませたい」など、必ずいい方向に進むのである。
資本主義と共産主義との議論にも違いが、最低保証はもちろんしつつ、競争心を持たせることで個人能力の向上が見られることは明白である。

一方でデメリットも多数存在していた。
まず記事にも記載されていた「不透明性」であるが、運営の「この子を次伸ばしていきたい」という戦略と、ファンの「自分の推しは全くなのに、あの子は贔屓(運営推し)されている」というものは表裏一体となってしまう。
長期的な戦略と、その弊害の対応の按配はいつも気をつけるべきものであろう。
また、「コンテキスト」と表現されるが、やはり総選挙は10代の女の子の人気をお茶の間まで全て筒抜けにさせることでのアイドル側の心理的な負担も大きかった。
東洋経済オンラインの記事でも記載されているが、魅力として出している残虐性が、アイドル個人の犠牲を伴っていることも忘れてはならない。
残虐性の美を追求したために、やはりメンバーへのメンタル的なフォローも含め大人がきちんと管理する必要がある。

コンセプトの明確化

【要約】
当時会えないことが前提の中で、「会いにいけるアイドル」というコンセプトのみで他との差別化が可能であった。

何度も言うが、アイドルはカウンターカルチャーであり、いままでになかったものこそが文化をさらに大きくするとなる。

経営戦略の一つに「ブルーオーシャン戦略」があるが、これは競争の激しい既存市場(=レッドオーシャン)ではなく、競争が存在しない独自の市場である「アイドルとの交流に価値を出す」ことで新たな市場を出した。
しかし、ブルーオーシャン戦略において一番重要な「模倣されにくい差異」ではなかったため、最初のころは共闘戦略として認知度の拡大に役立ったライバルも、いつからか市場の顧客を分け合う結果となった。

物語性

【要約】
少年ジャンプの3要素のように、AKBも「越境・危機・成長・勝利」のもと物語ビジネスが、それも日常的に各メンバーで起こっている。
しかし、少年ジャンプと異なり、運営はある程度までしか操作できず、最終的には自然発生的に見守るしかできないが、そこにビジネスモデルを組み立ててしまった。

ここは非常に諸刃の刃であるが、この物語ビジネスが偶然的に起こっていることがいいのか悪いのか、という議論もある。
例えば少年ジャンプであれば大体が最初に強いキャラ付け、協力しつつライバルに敗北、その後協力をさらに変えつつ必殺技も覚えて強力なライバルをどんどん倒して勝っていく、が多々起こっている。
一方でアイドルは現実である。現実だからこそこの不確実性に面白さを見出すのであって、少年ジャンプのような人為的なストーリーを良しとするかというとそれは否である。

たしかに指原莉乃がいなければ前田・大島がいなくなった瞬間にブームが終わりを迎えていただけに、「○○ならば」が議論になってしまうが、逆にこの「○○ならば」のパラレルワールドに思いをはせることも一興である。

管理問題

【要約】
恋愛スキャンダル、個人のSNS炎上などが起こっており、これは100人以上いる母体数の多さに起因する。

やはりAKB48ブランドを傷つけた最大のものが「スキャンダル」であったが、それはそれ自体ではなく、その後の対応にある。

①峯岸みなみ丸坊主謝罪騒動
当時、LDH系の男性アイドルとの恋愛報道に対し、峯岸みなみが自ら頭を丸め謝罪したもの。
恋愛禁止の是非だけでなく、自傷的な行動に国内外からの批判があった。

②NGT48山口真帆暴行事件とその対応
一般男性がメンバー自宅に押し掛け暴行を加えたもの。
暴行事件そのものではなく、暴行事件を運営が対応しないこと、また他メンバーの協力などが半ば内部告発的に発覚しただけでなく、山口本人の謝罪など含めて大きな批判が相次いだ。

スキャンダルに伴うメンバーの解雇などでのファン減少があるが、やはり一番は運営(青少年を管理する大人)への批判が大きい。
ファンマーケティングはつながりと信頼であるといえる中で、アイドルとファンのつながり・信頼だけでなく、運営とファンの信頼関係の崩壊という、スキャンダルそのものではなく、その対応での失敗を感じる結果となった。

もう一つ存在するマーケティングの課題

もう一つマーケティング的な課題を見つけるとすると、それは「人材育成」だと考えられる。

この人材育成は「優秀な人材を育てられたか」ではなく、「その優秀な人材の対立をわかりやすく提供できていたか」のほうであったと思う。
過去の総選挙では1-4回で「前田敦子vs大島優子」5回目以降で「指原莉乃vs渡辺麻友」の対立構造が非常にわかりやすい対立軸であったが、残念ながらそれ以降が続かなかった。
AKBの象徴であり、圧倒的な他との差異である「競争」の概念は、AとBの対立軸からなりたるものの、その対立軸がわかりやすく提供できなくなってきたときからAKBへの関心もなくなり、人気が下がってきたタイミングであろう。

そのためメンバー育成の中でもAKBとしての枠・ブランドを維持し続けるためには、個人の印象に終始するのではなく、グループに紐づけた形での対立軸としての育成である。
松井珠理奈・宮脇咲良など単発的にフューチャーされることは多かったが、運営として長期的に育成・露出頻度の向上をもたらすことはできなかった。
例えば「指原の意思を受けづぐ」「打倒指原戦線」などこの対立軸を盛り上げるための育成・立ち位置付けをさらに作っていくことで、総選挙を軸としたAKBブランドの長期的な維持が可能であったと考えられる。

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そんなAKBも、西村博之との番組をもった。
記事を書いてあるので下記から読んでいただけると幸いです。(記事3つあります…)

本文コピペ(2021年10月7日転記)

なぜAKB48は成功し、乃木坂46に抜かれたのか? マーケティングの視点から見るAKB48の光と影とは..
過去から現在に至るまで、音楽業界では様々な形でマーケティングが行われてきた。

もちろん、全てが成功した訳ではなく、失敗したマーケティングも存在するだろう。本記事では、その中でも成功と失敗の両方を経験している「AKB48」について述べていく。

AKB48と聞くと、成功した印象の方が強いかもしれない。しかし、現在では乃木坂46に人気を凌駕されている。(秋元康氏が両チームともプロデュースしている関係で成功と呼べるかもしれないが、「AKB48にとっては」失敗しているという観点で記述している。)この人気の入れ替わりは、偶然ではなく、マーケティングの失敗によるものでもあるだろう。したがって、AKB48に成功面・失敗面、両方の側面からアプローチしていきたい。
マーケティングの成功例

(1)競争市場の導入
AKB48と聞いて最初に浮かぶワードはなんだろうか。握手会、総選挙、神7…様々な単語が想起されるのではないかと思う。そして、今あげた三単語に共通しているのが「競争」という概念である。AKB48は常に変革を求め、メンバー同士で争わせることを是としてきた。

競争はメンバー自身の意識を高める効果を果たし、(3)で後述する物語の構築にも一役買ってきた。競争となると、知らず知らずの内に白熱し、予定以上にお金を使ってしまう…そんなことも起こり得るのである。

(2)コンセプトの明確化
「会いに行けるアイドル」。今となっては当たり前のように思えるAKB48を表すこの言葉だが、AKB48が結成された当時ではあり得ないことであった。アイドルとはテレビの中の存在で、易々と会いに行ける存在ではなかったからである。AKB48はこのコンセプトを大々的に発表することで自身の存在意義を明確に世間に示してきた。つまり、コンセプトだけで差別化に成功したのである。この当時は珍しかった会いに行けるアイドルであるが、今ではむしろ会いに行けるのがアイドルである。(そのため、気軽に会いにいけないことが付加価値となることさえある。)

AKB48はキャッチーでわかりやすいこのコンセプトを示すことで、マーケティングにおける差別化に成功したのである。

(3)物語ビジネスの構築
「物語ビジネス」という単語を聞いたことはあるだろうか。これは、ジャンプ等の少年漫画でよく語られるマーケティング手法である。主にジャンプでは、作品内に「友情・努力・勝利」の三要素が含まれていることが多い。それと同じように、AKB48では、「越境、危機、成長、勝利」という山川悟氏の『事例でわかる物語マーケティング』に則ったイベントが数々開催されてきた。

例えば...
越境: AKB48のオーディションに合格する
危機:「組閣」制度により、慣れ親しんだチームが解散する
成長: 新たなチームの中で評価される
勝利: チーム内で序列をあげ、総選挙で上位にランクインし、選抜メンバーに選ばれる
※ 「組閣」制度とは、AKB48内に結成されたチームのメンバーがシャッフルされ、新たなチームが発表されるイベントのことである。まさに内閣の組閣を想像していただければ良いのではないだろうか。

上記の様なことが日常的に起こり得るのである。これによって、必然的に各メンバーに物語が発生し、自然発生的に物語ビジネスが構築され得るのである。
マーケティングの失敗例

(1)競争市場の不透明さ
競争市場を構築する上で大事になるのが、透明性である。実際の市場でも、情報の非対称性が存在すると正しく取引ができないように、いちアイドルが構築した市場といえど、完全競争になるべく近づけることは欠かせない。しかし、AKB48で行われた競争が完全に透明であったかというとそうではない。運営とファンとでは情報量に差があるのだから、ある程度の情報は開示されて然るべきであるが、ファンの間で納得されていない競争結果が幾つか存在する。特に、シングル表題曲の選抜メンバーの選び方は数字に依拠するものでない以上、透明性が欠けてしまうのであるが、競争市場を構築したことによってそれが反感を買うことになってしまった。

(2)巨大組織故の管理不足
AKB48は、100人以上のメンバーを要する巨大グループである。また、坂道グループとは異なり、全メンバーが同じ事務所に所属している訳ではないため、統制が取りにくいのである。したがって、恋愛等のスキャンダルや、メンバー個人がネット上で炎上にさらされることが多い。これは、巨大組織の抱える問題であるが、アイドルという職業である以上、批判を免れることはできない。したがって、これはマーケティングにおける失敗と言えるだろう。

(3)物語ビジネスの落とし穴
物語ビジネスは、物語が自然発生することによって行われてきた、と成功例(3)で記述した。しかし、自然発生するからこその落とし穴が存在する。前述した週刊少年ジャンプであれば、物語を動かすのはその作品の作者であるため、物語の行方を自分で決定することができる。しかし、AKB48は自然発生する物語に自身のビジネスを委ねてきた。そうなると、思わぬ方向の物語が始まることがあるのだ。運営側がある程度までしか物語の舵を切ることができないというのは、物語ビジネスの魅力であり、欠点ともなり得る。(2)と共通する部分でもあるが、ビジネスの全決定を人が調整することが難しい形式のビジネスモデルを構築してしまったことは、マーケティングの失敗と言えるだろう。
以上、AKB48をマーケティングの視点から分析してきた。

現在から振り返ることで失敗・成功両面の原因・理由を考察することができるが、未来がどうなるかわからない段階で物事を決定するのは非常に大変なことであろう。しかし、なるべく失敗しないような、また、失敗してもリカバリーが効くようなマーケティングを行うために過去の成功例・失敗例は分析すべきなのだ。読者の皆さんにとって、これが現在を考えるきっかけとなれば、筆者にとって僥倖である。

EVENING編集部( Evening Music Records )

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