#3_10 乃木坂46のブランド継続性を、選抜の加入期と卒業から考える回②データ分析
2021年10月25日、乃木坂からまた一人さみしい卒業があった。
ブランドというのは隆盛もあれば衰勢もある。
乃木坂はこれで終わりではないが、圧倒的な乃木坂のメンバー卒業に、坂道のオタクではない者としても残念でならない。
しかし、ここで多くの人がなぜか感じてしまったのではないだろうか?
「乃木坂、終わったな…」と。
これはコンテンツブランドにおけるブランドの人依存が大きくかかわってくるのではないかと考えられる。
特にアイドルに関してよく見られる「人依存」に対して、第2弾ではデータをもとに乃木坂をさらに分析してみたいと思う次第である。
※第1弾は下記から
Googleトレンドで乃木坂の話題を分ける
GoogleトレンドとはGoogleの検索数をもとに、期間中最も盛り上がっていた時期を100とした際の数値を出すものである。
今回はデビュー前(2011/9/1-)からの『乃木坂』でのトレンドを分析する。
上記グラフは2011年9月からの『乃木坂』でのGoogleトレンドである。
青はトレンド、赤点はシングルの発売を表しています。
また坂道オタではないアイドルオタクである食前舌語が大きな転換期と卒業を合わせると下記の歴史があると思われる。
2012年2月(31) メジャーデビュー『ぐるぐるカーテン』
2013年1月(25) 個人活動解禁(白石麻衣)
2014年10月(61) 松村沙友里文春砲(不倫騒動)
2015年1月(56) 個人活動本格化(モデル・ドラマ等)
2015年12月(59) 紅白初出場
2017年2月(95) 橋本奈々未卒業公演
2017年3月(78) 初累積ミリオン『インフルエンサー』
2017年7月(100) 初のシングル3期センター発表『逃げ水』
2018年4月(90) 生駒里奈卒業公演
『シンクロニシティ』発売
2019年2月(81) 西野七瀬卒業
2020年10月(47) 白石麻衣卒業公演
これをもとに下記のように期間を(意図的に)分ける。
期間Ⅰ:初期成長期(デビュー~個人活動解禁前)
秋元グループのほとんどが、基本箱での活動を経て、人気になったらソロ活動という流れがある。この初期の4曲目(マネキン)までのタームを初期成長期と定義する。
期間Ⅱ:後期成長期(個人活動解禁~紅白初出場まで)
大衆に「乃木坂46」というコンテンツが膾炙され始める。特に13年から白石麻衣、15年ごろから西野七瀬・生田絵梨花の検索数が増えており、個人の活動開始の広がりとリンクしていることも確認できる。
期間Ⅲ:成熟期(紅白出場~シンクロニシティ発売)
すでにアイドル業界のトップクラスとして君臨し続けていた時代である。この時期の代表曲である『インフルエンサー』『逃げ水』『シンクロニシティ』は大量のGRPを投下しているTVCMのタイアップとして起用され、圧倒的なリーチを獲得することに成功した。
期間Ⅳ:卒業期(主要メンバーの卒業)
過去センター経験のある生駒里奈、西野七瀬、橋本奈々未の卒業もあり、徐々に乃木坂の主要メンバーの卒業が目立った期間であった。
期間Ⅴ:低迷期(卒業のひと段落、コロナ期間)
やはりコロナ期間での生ライブができなくなったことなども多く、乃木坂としての対応も多く求められた。また、白石麻衣・堀未央奈・大園桃子の卒業により、生田卒業後でのセンター経験者は齋藤飛鳥以外が3-4期になった。
やはり、20th『シンクロニシティ』をターンイングポイントとして分析すべきであると考える。。
乃木坂の各シングルの選抜
さて、ここからは「シングルの選抜になることで各メンバーが話題になる」ことを前提として、各シングルの選抜を確認する。
こちらのデータは選抜経験者の各シングルの参加を記載している。
(◎がセンター・〇が福神・▲が選抜、交換留学生の松井玲奈は1期とする)
これを加入期ごとで集計すると下記のようになる。
数字を見るに、1期の選抜経験者は非常に多い(また初期の辞退・卒業もある)ため選抜経験は多いが、その一方で2期の選抜経験の割合が低いことが見受けられる。
しかし、これを成熟期の最後に当たる20thの『シンクロニシティ』までに制限すると、下記のように変化する。
ご覧の通り、3期生の選抜経験は正規メンバーから1年以上たっているにもかかわらず選抜経験が低く、また逆にその後の選抜経験が増えているということがわかる。
以上から、先ほどターニングポイントとした20th『シンクロニシティ』までについては、2期だけでなく3期以降の選抜数も少なく、そのため「メンバーは選抜になれば話題になる」ことを前提とすれば、1期に話題が集中していたということが言える。
乃木坂の話題と選抜の加入期
ここからは、トレンドと加入期を並べて分析する。
下記は先ほどのGoogleトレンドのデータに加筆して、各シングルでの加入期を積み上げ棒グラフで記載している。
(紫が1期、オレンジが2期、緑が3期、青が4期である。めちゃくちゃ小さいので画像をクリックしていただければ大きくなるはず…)
このデータを見ると、ピンク線の入った20thのシンクロニシティ(2018年4月)を境に、1期の含有率が下がっていることがわかる。
これはおそらく1期メンバーの卒業が相次いだことが理由として挙げられるが、逆にここまでは1期メンバーがほとんどを占めており、2-3期が4人程度しかいなかったことがわかる。
これは下記の予想が考えられる。
まず個人活動解禁により、特に経験の長い1期生の活躍が見られた。
シングルの選抜にはAKBのような半強制的な選抜指定がないため、結果として(一部『逃げ水』などを除いて)1期が中心となる選抜をする、またせざるを得なかった。
つまり、1期生が個人活動で活躍するたびに1期を中心とした選抜がファンから求められ、またその結果1期に話題が集中してしまうというループが起こってしまう。
この結果、2期を中心として後輩が1期ほど育成できず、結果として世代交代が起こらず、ずっと”○○推しの乃木坂ファン”として個人のブランドを接点にコンテンツブランドのファンが増えていってしまい、またその個人の卒業がコンテンツとの決別になってしまった。
そして、個人の卒業が相次ぐ中でやっと空いた席に2期、3期、4期が次々と座っていくが、その時にはすでに乃木坂全盛期とは言えず、以前のように一般人の新規のファンが付くほどの話題になれないのである。
その結果、”乃木坂”というコンテンツのブランドが衰弱化していき、中心メンバーの卒業とともに求心力を失っていくのではないだろうか?
乃木坂の問題点と今後の提言
様々な問題点があるが、まずは後輩育成の問題である。
現状4期を中心に多くの期待の新人が多いものの、すでに4期が加入してもうそろそろ3年になるのであるが、残念ながらその知名度が一般人には伝わっていない。
特に『I see...』のように4期に注目が集められる時期があっただけに、この時期にもっと曲や乃木坂全体ではなく、4期メンバーのメディア(特にCMなどのTV)露出を増やすなどの施策をとるべきだと考える。
最新作の『君に叱られた』でのファン回帰も見られており、より「乃木坂らしさ」である王道ソングの追求とファンコミュニケーションの徹底、そしてメディア露出の増加だけではなく個人での話題創出含めた、ファンの離脱防止をまず第一に行うべきである。(この辺はAKB×ひろゆきのときの議論と似ている…)
また、もう一つは前者とも共通しているが日向坂との差別化である。
坂道オタには違いがあるのであろうが、外部からすると現在の乃木坂と日向坂はあまり違いを感じられない。
これは曲・バラエティなど様々な顧客接点で感じられるとともに、勢いで日向坂の下位互換になりかねないのが現状である。
やはり日向坂がバラエティに非常に強いところも考えるに、もっと質の高い音楽の提供と、親近感ではなく憧れの存在としてより差別化を図っていくことが重要だと考える。
さいごに:生田絵梨花卒業に添えて
正直言うと、乃木坂の非常事態である。
今残っている中で知名度がある人といえば
バラエティ系⇒秋元真夏・高山一実
モデル系⇒齋藤飛鳥
があげられるが、バラエティは日向坂の猛攻で非常に厳しい立場に存在している。
この状況にて求められていることは「圧倒的な憧れの存在」だと考えられる。
乃木坂の再興には、圧倒的な投資により白石麻衣のような存在を創り出すことが必要である。
閑話休題
ここまで乃木坂ではないオタクが天下の乃木坂に対し様々な視点から考察したが、もし「この視点が足りない」「もっと重要な出来事がある」「誤字脱字があるぞ」はぜひご指摘してほしい。
そしてもう一つ、今の地下アイドルの復興には、改めて乃木坂のような圧倒的なコンテンツでアイドル非関心層を巻き込んでいくことが必要である。
これは単に乃木坂の問題ではなく、アイドル業界全体の問題として乃木坂を応援していきたい。