養子縁組編 90回目 九拾弐
前回と重複しますが、
養子縁組そのものの可否の判断は、
養親の本国法を基準としています。
養子の本国法は、「セーフガード条件」「保護要件」
として適用されます。
そもそも保護条件を子の本国法にしているのは、
保護要件は、養子となるべき者の同意、実父母や、
児童を護している機関の承諾
又は同意など社会経験や判断能力に乏しい
未成年の保護を目的としたり、関係者の
利害の調整を目的とするものです。
(渉外戸籍実務研究会 渉外戸籍実務の処理 57項)
では、日本の民法における保護要件とは?
・配偶者のある者が縁組をするには、
その配偶者の同意を得なければならない。(民法796条)
・子となる者が十五歳未満であるときは、
その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2 法定代理人が前項の承諾をするには、
養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、
その同意を得なければならない。
養子となる者の父母で親権を停止されている
ものがあるときも、同様とする。(民法797条)
・未成年者を養子とするには、
家庭裁判所の許可を得なければならない。(民法798条)
・特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく
困難又は不適当であることその他特別の事情が
ある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、
これを成立させるものとする。(民法817条)
などがあります。
また、各国の法制の中で「保護要件」という言葉が使われていなくとも、
そもそも保護要件としての機能
(判断能力に乏しい未成年の保護や関係者の利害関係の調整)
などを図る目的として規定されている
ものであれば、保護要件として検討する必要があります。
実勢に各国の保護要件が問題となった事例をしょうかいしますと、
次の通りです。
①日本人妻がアフガニスタン人夫の子(成人)を養子とする場合、
アフガニスタン国における養子縁組に
関する法令に、養子の保護要件に関する規定は存在しません
(平成23・8・8民一1879号回答)
②カンボジア人を養子とするためには、
カンボジア国際養子縁組法による保護要件として、
裁判所の許可及び養子となる者の父母の承諾が必要となります
(平成24・2・3民一313号回答)
③タンザニアにおける養子縁組法制による保護要件として、
社会福祉長官の承認、裁判所の許可及び養子
となる者の父母の承諾が必要となります
(平成24・2・3民一313号回答)
④ウクライナにおける養子縁組法制による保護要件として、
ウクライナの政府機関の許可が必要です
(平成25・1・17民一29号回答)
(渉外戸籍実務研究会 渉外戸籍実務の処理 58項)
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