親子編 42回目 四拾四
日本人同士なら国籍の問題も、本国法も問題もありません。
嫡出子に関しても、日本法ですから、それほどの複雑さ
ではないのですが、
やはり、外国籍の方と日本人のペアとなると、様相が変わります。
国際結婚、渉外手続きを考える場合、
一連の流れというより、一個ずつ分解して、問題を解決した後の
最後の最後に一連の流れに組み立てて戻す。といったほうが
処理のイメージとしてはわかりやすいかもしれません。
結論を先に書いてしまうと、
未婚の場合で、外国籍Bさん(本国法が事実主義)が、
日本人Aさんとの間に子供Cが日本で生まれて、
出産後Bさんが、Cを自分の「嫡出子」
にするには、出産後、Aさんと婚姻し、婚姻届を出したのちに、
出生届を日本の役所に提出しなければなりません。
「認知届」出す「嫡出でない子」の親子関係を成立させる考え方には
二通りありました。
事実主義と認知主義です。
認知主義は、日本でも採用されていますのでイメージは
しやすいかと思います。
父親が「認知」することで親子関係が生じるという場面が
ありますし、よくドラマや映画、漫画などでも「認知して!!」
という修羅場はよく描かれる部分でもあります。
ところが、「事実主義」、しかも、父子関係における事実主義と
いうのはなかなかイメージがつきにくいと思います。
基本的には、母子関係と同じです。
母子は、「出産」という「事実」をもって、親子として成立する。
これは、非常にわかりやすいと思います。
子供をお母さんが出産するわけですから、当然、母親の子供だろう。
と思うからです。
体の中から出てくるわけですから、
揺るがしようのない事実であることに
はなんの疑問もないからです。
しかし、父子関係における「事実主義」と言われても、
なかなかイメージがつかめないかもしれません。
以前にも書きましたが、血縁上の父子関係があれば、特段の手続きを
必要とすることなく父子関係が成立していると認める考え方ですので
本国法が事実主義の国では「認知」というものが存在しません。
その場合、外国籍Bさん(本国法が事実主義)と
日本人Aさん(本国法は認知主義)が
未婚状態で子供Cを出産した場合、
日本人Aさんの子供Cは、日本人ではあり
「嫡出でない子」ではありますが、
法律上の父親は存在することになります。
事実主義による場合は、既に出生という事実によって
法律上の父子関係が成立していることから、
子が準正嫡出子たる身分を取得するのは、
父母が婚姻した場合(いわゆる婚姻準正)のみとなります。
(澤木敬朗・南敏文「新しい国際私法」131項)