婚姻編 1回目 ⑤
あまり専門的なことを書いても理解しずらい
かと思いますので、身近な部分から書いて
いきたいと思います。
多くの場合、
外国籍の方が訪日する目的というのは、
観光や、留学、仕事などだと思います。
それだけであれば、ここで説明している
「渉外戸籍」というものを意識する場面や必要
ということはほとんどありません。
留学や、仕事などの場面で重要になってくるのは
賃貸契約や、携帯通信契約や水道、電気など生活に
直結する必要な契約。また、労働契約や健康保険、
労働保険などの社会保障関係。
それらの契約などが主で「身分行為」にいたるものは
稀だと思われます
しかし、人間が生きていく中では、様々な出会いや出来事が
おきて、日本で結婚をする場合もあるかもしれません。
その相手は、日本人かもしれませんし、他国もしくは、
同国の人かもしれません。
では、実際、留学や仕事などで訪日、在留している外国籍の
方が「結婚」をする場合にどういった手続きをしなければ
いけないでしょうか。
(非常に多様な場合が想定されていますが、その中でも一番
シンプルな形で書いていきたいと思います)
LGBTが世界的に認知される中で、日本では法的に「同性同士」
の結婚はまだ認められていませんので、ここで書く「婚姻」とは
男女間のものとして考えていきます。
また、出入国管理法などの法律は、ここではとりあえず
考慮しないで書いていきます。
関係法令まで考慮に入れ、さらに様々なパターンを含むと
非常に煩雑で難解になってしまいますので、あえて考慮しませんが、
合法的に、問題なく日本にいる外国籍の方という前提にしていきます。
例えば、日本のある県のある市で
日本人Aさんが、外国籍Bさんと出会い、お互いの自由意志のもと
結婚をしようと考えました。
この場合の手続きは、どういったことから始めればいいでしょうか?
まず、結婚をする場合、法的に「結婚が可能か」どうかを考えなくては
なりません。
お互いの意思が合致をしていても法的に結婚を認められない場合が
あります。
その時に注意しなければいけないのが、Aさん、Bさんで、それぞれ
考える基準となる法律が違うということです。
身分行為における法律の基準は、「本人の国籍国の本国法」が大前提に
なります。
当事者がそれぞれの本国法律的に結婚が可能かどうかの条件を
考える必要があります。
そこでまずは、
①Aさん、Bさん、それぞれの本国法で、婚姻が可能かどうか?
を考えます。
Aさんは、日本人ですから、日本の民法に基づいて結婚が可能かどうか?
を考えなくてはいけません。
日本の民法上、婚姻する際に考えなければいけない条件は、
・婚姻意思
・婚姻年齢(平成4年から改正されています)
・重婚
・再婚禁止期間
・近親婚
が、あります。
日本人Aさんが、これらの条件をクリアしていれば、
「日本におけるAさん」
の法律的な結婚条件は可能と判断できることになります。
この確認方法はBさんの場合でも同じです。
Bさんの本国法において結婚が可能かどうかを確認する必要があります。
これは、国の数、民族の数だけ法律が存在しますので、
個別に検証していくしか
ありませんので、ここで具体的個別な内容の記述は避けたいと思います。
各国の法律は、日本同様、改正されたり、新しい法律ができたりと
常にリアルタイムに変化していますから、結婚の際に最新の法律情報を
調べなければいけません。
ですから、Bさんにも、本国法において結婚が可能かどうかを本国において
調べる必要が出てきます。
調査した結果、Aさん、Bさんのそれぞれの本国法でAさん、Bさんは
結婚が可能となったらすぐに結婚が可能。
とはならずに、ここで、もう一つ調べなければいけないことがあります。
これが渉外問題の手間がかかるところで、
日本人同士ならば、日本の法律一つでいいのですが、
外国の法律も絡んでいるのでその法律との調律をしなければなりません。
そこで、もう一つの調べることとは・・・・・
それは、Aさんの本国法では結婚がOKでも、
Bさんの本国法ではAさんでは結婚が
できない。結婚が成立しない場合、条件があるということです。
これは「双方的要件」と呼ばれるもので、
Aさんの本国法上の条件でも、Bさんの本国法上満たさなければいけない
条件であり、逆に、Bさんの本国法上の条件でも、
Aさんの本国法上の条件を満たさなければいけない条件のことです
例えば
・重婚の禁止
などがあります。
Bさんに、実は本国に奥さんが3人いる場合などがこれに当たります。
しかし、Bさんの本国法では奥さんを4人までは合法的に結婚できる。
となっていた場合、
Bさんの本国法上では、Aさんとの結婚はOkということになります。
Bさんの国では奥さんを4人結婚できるとしても、
日本では重婚は禁止されています。
ですので、このままでは、AさんはBさんと結婚ができないことになります。
こういった双方的要件を当事者双方が満たした場合に、
日本の役所で「婚姻届」
を提出して正式に結婚が成立します。