見出し画像

フィリピン関連 おすすめ本その2 - 「人はなぜ「権利」を学ぶのか - フィリピンの人権教育」

先日の投稿で本を扱ったのでその勢いで・・・

去年も大して本は読まなかったけど一番印象的だったのは
「人はなぜ「権利」を学ぶのか - フィリピンの人権教育」
著者は人権問題の研究者で部落問題や在日韓国・朝鮮人を巡る日本の問題についての著書もある阿久澤麻理子さん。
最初は図書館で借りたけど、安かったのでメルカリで買った(笑)。

この本のどこにそんなに惹かれるのだろう?と考えてみた。それは、本題であるフィリピンの人権教育の報告内容が良かったというのは言うに及ばず、彼女のフィリピンを描く際のスタンスというか、筆致。

真っ白な状態でポーンとフィリピンに行っても、それなりに感じることはあると思うし、その体験は有意義ものになり得ると思う。けれども全方向に守備範囲を広げてしまうと、どうしてもフィリピンに対する既存の言説に頼らざるを得ない部分がある。発展途上国、南国、おおらか、自然、そして貧困、犯罪...これらフィリピンの周囲で使われる言葉とそれが言説となった背景(思惑)に一定程度引きずられると思う。そして、頭のいい人ならなおさら「その言説に合うフィリピン」を素早く探し出し、フィリピンに対するイメージを自分の中で固めてしまう。あるいは発信者となりその言説を広めていく。

けれども阿久澤先生の場合は目的がはっきりしていたのと、既に研究分野に精通していたからそういう言説に寄りかかる必要がなかったのでは。だからこの本で描かれるフィリピン・フィリピン人は生き生きしているんだと思う。

こういうフェアなスタンスというのは人権問題に真面目に取り組む人ならではかもしれない。
でもフェアであるって結構大変なこともある。往々にして、社会的なコンセンサスとなっていたり権威筋が発する言説に反しなければならない場合もある。僕もエラそーに言いながら知らないうちに流されている部分があると思う。

これからもたくさんの若い人がフィリピンを訪れて関心を持ち、関わりあうと思う。
「貧困」。彼らの貧困を考えるとき、彼らにばかり焦点を当てるのではなく、なぜ私たちが豊かなのかということを含めて深く考えるのも大切な事だと思う。
彼らに貧困をもたらしたものと私たちに豊かさをもたらしたものは全く関係のない別のものでもないはず...

既存の言説を鵜呑みにせず、人種主義的な結論に陥る危険を常に意識しながら。
そうすれば緊急避難的な援助にしろ、対症療法に終わらない質の高い相互理解をもってできるように思う。

めちゃくちゃ手前味噌になるけど、僕の場合はフィリピンの音楽に出会う前、既に長い間ソウルミュージックの「オタク」だった。だから、自分が聴いているのがフィリピン人のパフォーマンスだとわかった時(最初ラジオから聞こえてくるのは欧米のシンガーと思っていた(笑・汗))、フィリピンの音楽について言われている多くの「言説」に流されることなく自分の耳、自分が培ってきた判断基準でフィリピンの音楽を聴くことができたことはラッキーだったと思う。

そう考えると阿久澤先生はじめとする心ある研究者の方々はある意味で自分の専門分野の「オタク」なのだろう?(いや、ぜんぜんいい意味で(汗)。


最新の楽曲を中心におすすめのフィリピンポップスを集めたSpotifyのプレイリスト ContemporaryOPM #1を作ってます。
随時追加中…


いいなと思ったら応援しよう!