うちのシャンプーどこいった?
ある日、風呂上がりの娘が私に聞いてきた
「お母さん、私のシャンプー使っとる?」
(お母さん、私のシャンプー使ってる?)
「いんや、使っちょらんよ。なして?」
(いや、使ってないよ。どうして?)
と、私はそう答えた。確かに使ってないからだ。
娘は、けげんそうな顔をして答える。
「私のシャンプーとコンディショナーが無くなーのが早いんだわ。この間詰め替えたにかん、もう、少ないに。」
(私のシャンプーとコンディショナーが無くなるのが早いのよ、この間詰め替えたのに、もう、少ないの)
おかしいねぇ。と、2人で顔を見合った。
娘は、私に似てくせっ毛なのだ。小学校に上がる頃はクリクリのくせ毛で、小学生の頃からシャンプーにはこだわってきた。
高校生になった今頃、やっと、シャンプーだけで髪の毛がいい感じに収まるようになってきた。私とは、髪質が違うのでシャンプーは、別の物を使っていた。
2人でちょいと考える。
うちにいる後の2人は、坊主だ。旦那はスキンヘッドだし…と、思ったところで息子がパンイチで風呂から上がってきた。
はて、息子の髪の毛がテラテラしている。
もしかして…
「ちょっと、あんたさん、姉ちゃんのシャンプー使っちょらん?」
(ちょっと、あなた、姉ちゃんのシャンプー使ってない?)
「ん?あーあれ姉ちゃんの?めっちゃいいよね、しっとりするし、触った感じもすごくいいし、匂いもいいよ。」
ちょっと待て、お前さんの髪の毛は、何ミリだ?
3ミリだ!丸坊主の頭には、ボディーシャンプーでよくないか?シャンプーならまだしも、コンディショナーまで必要か?
しかも私のよりも高いヤツ!
私と娘は、目が点になった。
しかも息子は、いいでしょ?風に腰に手を当て身体をくねらせてポーズまで取ってくる。
「えっ?いけんだった?」
(えっ?ダメだった?)
と、息子は可愛げに問いかけてくる。
「ダメ!ありえんし!信じれんわ!」
娘は、鬼の様な形相で頭から湯気が出そうな勢いで怒りながら部屋を出た。
「姉ちゃん、ごめーん。」
そう言いながら、慌てて娘の後を追いかけていく息子。
娘の部屋からは雪崩のように次々と怒号が聞こえてくる。中身は安易に想像できるのだが、中々怒りは収まらない様だ。そして、息子の謝罪の言葉が噴水の様に出てきていた。
娘の怒りが身に染みたのか、それ以降息子が娘のシャンプーを使うことは無くなった。
私のシャンプーも使ってみたが、気に入らなかったらしい。
その後は、私が買ってきたリンスインシャンプーを仕方なく使っているようだ。風呂上がりのパンイチで頭を撫でながら、なんだかなぁって顔で居間を横断している。
まぁ、高校球児の3ミリの坊主頭だから、今はそれでいいんじゃない?
息子さん。